第101回 平成17年1月16日

    ともこ
☆ 腹這ひの原の波打つ福笑ひ
☆ 湯気の立つ黒き川面初茜
  初日の出待ち城跡の武者溜まり
  ブザー鳴るたびに駆け寄り餅搗き機

     良人
☆ 猪鍋や猪の好みの山の幸
  雪の田に波紋をきざむ那須嵐
  白滝と見紛ふ雪の棚田かな
  厳かに鉾杉の秀に初日さす

     比呂
☆ 神楽男の鈴にしづもる大蛇かな
  判じものめく目鼻立ち福笑
  電球の揺れて影増す達磨市
  雪止みて風青々と星磨く

     信子
  庭端に萎えし捨て雪薺粥
  初日豊かなほ老松の蒼々と
  憚らぬ距離で母娘の初笑
  椅子寄せて定むる姿勢弾初
  天井の群青遙か大旦

     芳子
  屈まれば香の身に添へる野水仙
  届きたる筆跡著き師の賀状
  離りゆく目鼻の行方福笑
  身をあづく露天湯に朱の初日の出
  巻き癖の名残のそりの新暦

     清子
  一息の出刃鮟鱇の吊し切り
  愚図る子を抱きかかへての初詣
  二日はや産着まぶしく干されけり
  初日の出五感の覚める心地かな

     憲巳
  身八口に手を入れてより姫始め
  初笑ひ負けず嫌ひの姉が泣く
  福笑ひ妹の泣き姉笑ふ
  氏神のさんがを照らし初日の出
     美代子
  屋敷神の祠はみ出す歯朶飾り
  風洗ふケルンの先へ初日の出
  御神酒受く春着の襟を改めて
  水鳥のふくれし胸に初明かり

     聖子
  借り住まふビルの谷間の初日の出
  スケッチの筆音高く寒椿
  福笑眼で決まる出来上がり
  蝋梅の香に寄り道の神の杜

     昭雄
  たわたわと柚子浮く風呂に身を反らす
  暗闇を染め雲を染め初日の出
  福笑ピカソの目鼻踊りけり
  久方に賑はる座敷福笑

     登美子
  万両の朱汲みたての水桶に
  七草の湯気吹く夫の猫背かな
  福耳に紅差す米寿初鏡
     鴻
  組重を持ち合ひ宴盛り上がる
  星空にどんどの火の粉吸ひ込まる
  貝独楽のはじき合ひては散る火花


     植竹
  久方に揃ふ家族の干菜風呂
  初笑テレビは一日声流し

     敬子
  母のオルガン父の尺八去年今年
  初夢のさめてとりたき泣き黒子

     一構
  初日影受け長船の手入れかな

     利孟
  おもあひの箔のきらめく大福茶
  初日影兆して離す暗視鏡
  手斧初め斎竹に添へ丈の差し