第103回 平成17年3月21日



   敬子
☆淡雪や園児輪となり手毬唄
 仔の生れし牛舎に飾り風車
 あたたかや火噴くピエロの赤ズボン
 花冷や湖上はるかにスワン舟
 観音の濡れる朱唇や風車

   昭雄
☆花冷えや頬赤くして志功の絵
 空き缶を転がす風や虫出づる
 ドア揺らす風に猛りて風車
 花冷の野に一条の太煙


   伊藤
☆ゴム風船吹く胸の内空にして
 笑ひ顔作り見送る花の冷え
 雛の間に一人眠るも楽しかり
 夕暮れの風のあやせる小鳥の巣


   比呂
 湖に返す波なし蘆の角
 清らかな音ごと与へ風車
 延年の舞の下駄音花の冷え
 熟寝児の声立つる笑み雛あられ
 鯉跳ねて光りし泡や水温む

   良人
 花冷えや湯宿の窓の増すくもり
 花冷えの甍に迫る男体嶺
 風を呼びながら高鳴り風車



   芳子
 高々と掲げて走る風車
 羊追ふ笛の響きや草青む
 場所取りの人の手枕花の陰



   美代子
 牡丹の芽徐に吐く日色かな
 胸反らし飲み干す水や春二番
 拳にて拭ふ涙や風車



   信子
 はくれんの蕾いまだし一年忌
 認め押し受け取る荷物桜冷え
 花種を蒔くや土の香日に返し



   清子
 雛壇の端の市松人形かな
 鉄棒の下の窪みや水温む
 風車喧嘩忘れて子の駈ける



   植竹
 薄氷に閉ぢ込められし木の葉かな
 風邪薬飲ませ絵本のつづき読む
 鼻紅く眠る嬰児花の冷え



   一構
 雉子鳩の止まる電線涅槃西風
 舶来のワインを開けて雛祭




   聖子
 花冷えや庭隅々に声を掛け
 花冷えや和菓子の箱の持ち重り




   鴻
 春うらら鬼怒の浅瀬に群るる雑魚





   利孟
 花冷えや関東ロームを削る川
 沖縄の砂鳴く浜や海雲舟
 煮るつもりなどはからきし土筆摘み