第117回 平成18年7月23日
   清子
★ 青田波村を大きく揺らしけり
・ 幾万の若き墓碑銘朴の花
・ 対岸を消しハドソン川に夕立来る
  空港にひそやかなれど星祭り
  大雨の去るやたちまち百合匂ふ

   登美子
★ つま立ちてのどを反らして笹飾り
・ 農協のレジのバケツの百合の花
  家建ちて新しき闇月下美人
  泣き虫が神輿の尻尾についてゆく
  蓮咲くや少しはなれた蓮崩る

   美代子
★ 坑道のトロは涼しき闇連れて
・ 行々子見えぬ草潜朝日和
  駒鳥の梢れ越す声や尾根晴れて
  七夕雨ささめきこぼる雲の裏
  兵眠る合図の山の姫早百合
   聖子
◎ おさな児の絵をもて願ひ星祭る
◎ 長雨や百合の頭の地に届く
・ 山百合や香を重ね合ふ花の数
・ 笹笛の音の掠るる木下闇
・ 七夕や母の願ひの糸強し

   永子
◎ 山百合に篠突く雨の香を零す
◎ 枕辺に寄する潮騒キャンプの夜
・ 大漁旗風になびかせ祭船
・ 人声の絶えて夕菅咲き競ふ
  廃校に杣の子集ふ星祭

   敬子
◎ 石像の巻き毛蜻蛉のお気に入り
◎ 河鹿笛那須野ヶ原を割る疎水
・ 旅の宿歓迎酒てふ一夜酒
  栞人形ときめく彩の星祭り
  奥の細道の軸掛け百合活ける
   信子
◎ 夏の夜や靴音激つフラメンコ
・ 坪庭を濡らす糠雨額の花
・ クレヨンの文字の幼き星祭り
  寝そびれし真夜のしじまや百合匂ふ
  参磴の半ば半ばの夏木立

   昭雄
・ 身をしぼる夕蜩の闇に透く
・ 草刈機止めて眼鏡を拭ひけり
・ 七夕や少年歯切れよき返事
  うす紙を解きて白桃供へけり
  母の忌や仏間に母の好きな百合

   ともこ
・ 一輪の花のしなやか卓涼し
・ 乞巧奠紅絹の端切れの結はる笹
・ 端居せる裾より覗き白き脛
  碑の墨痕乾き青芭蕉
  十薬や声掛け入り来検針員
   良人
◎ 貸小袖座敷に風の通りけり
・ 山百合の匂ひとぎれぬ杉並木
  睡蓮の池に影浮く太鼓橋
  野萱草緋鯉の如き水面影
  風の間も不揃ひに揺る小鬼百合

   一構
・ 下校児の一列縦隊四葩咲く
・ 黒百合や海坂にある国後島
  鉢植の薔薇をほめられ立ち話
  紫陽花や登りきつたる奥の院
  百合の香や稽古終わりし剣道場

   幸子
・ 散りしける庭の閑けさ沙羅の花
・ 山間の二両の列車青芒
  花菖蒲友を訪ねる雨の道
  短冊の彩りも良き笹七夕
  変色のとき窺ひつ板蛙
  
・ 山小屋の庭を埋めて百合の花
  級友と磐梯登山梅雨晴間
  新緑や裏磐梯の熊の影
  家中に香り放ちて百合の花

   芳子
  水端に香りつのらす花菖蒲
  葉の覆ふ水面に花の未草
  鈎の手の暗き木道遠郭公
  サンルーフ越しの七夕ビルの街
  天染むるごとく香の満つ百合の苑

   利孟
  七夕の星を迷はせ流る雲
  梅雨夕焼け湾のなかばに消ゆる橋
  山百合の径塞く皇居遙拝所
  発車して開く駅弁夏休み
  百合香る山のホテルの木のロビー