第120回 平成18年10月15日


   昭雄
★ 裸婦像の遠きまなざし秋の雲
  那須岳の噴煙北へ通草熟る
  通草蔓手繰らせ父の肩車
  威銃那須野ヶ原の片隅を

   敬子
★ 監獄に母と子の像こぼれ萩
  ゆると突く太極拳や爽やかに
  口開けし通草は魔女の笑ふとも
  お釜より立てる湯煙秋の雲

   比呂
△ 露けしや裏木戸に鎖す棒の鍵
  野分雲仰ぎ悍馬の嘶けり
  村といふ宛名今日まで通草熟る
  秋風に薙がれ芦原哭きにけり
  乞ひ借りて他家の子を抱く無月かな
   信子
△牧牛の散りて動かず秋の雲
  秋澄むや那須野が原の果てまでも
  うちの子と友が呼ぶ犬秋麗ら
  昏れなづむ鎮守の杜や熟通草

   幸子
△ コンバインの終日稲を呑み込みて
△ 秋雲を崩し霊水汲みにけり
  包む掌に甘さの湿る熟柿かな
  稲孫田や杭をゴールに追ふボール

   良人
△ 男体山に丸く影置く秋の雲
  山の端の黒雲くぐり月のぼる
  雲流る間にまに見えて紅葉谷
  木洩れ日に白き口あくあけびかな
   清子
△ 径分かれても赤のまま赤のまま
△ 老犬の老爺と行ける刈田道
  秋雲をいただき故宮大和殿

   聖子
  寝転んで遊ばす眼羊雲
  ガリバーの靴子の足に馬肥ゆる
  連れ立ちて離れて付いて秋の雲
  屋上の合唱練習秋澄めり

  
  御料地の林に潜み割れ通草
  野良猫に発ちて刈田の群雀
  取り入れは全て済みをり秋の風
  夕間暮れ稲藁を焼く煙立つ
   紀子
  一目では見切れぬ長さ秋の雲
  鼻歌はいつもと同じ秋夕焼け
  早よ刈れと破案山子のへのもへじ
  地図になき観音堂や通草熟る

   美代子
  五つ六つ風のふぐりの通草かな
  秋雲に浮く白銀の電波搭
  仮橋へ遠回りしてさくら蓼

   登美子
  見慣れたる山の上なる秋の雲
  蔓引きて揺らして探す通草の実
  地図になき道の途中の通草の実
   永子
  船頭の達者なガイド秋の雲
  もぎ取りしあけびリュックに山帰り
  路地裏の小さき日だまり野紺菊

   ともこ
  トンネルで超える県境芒原
  露の芝校庭にある三角点

   芳子
  秋めくやランチタイムの幟旗
  山神の祠に醸しましら酒
   利孟
  竿仕舞ふ間ほどの釣瓶落しかな
  きのこ狩おむすびころりといふ民話
  大口を開けて実失せし通草かな
  月を吐きビルの縁取りやはらかく
  秋雲や持てるだけ買ひ野菜市