第１４４回　平成２０年１０月１９日
益子吟行

昭雄 △ 窯毎に薪を積み上げ柿の里 ★ 柿熟るや濱田庄司の丸眼鏡 △ 柿たわわ陶器の里に窯いくつ △ 山茶花や間口二軒の登り窯 　 棟梁の記す四文字（天長地久）秋高し 　　 　 登美子 △ 秋日濃しワイン戸棚の磨かれて 　 冬桜育てる枝のやせてをり 　 益子焼水差しに描く秋の草 △ どんぐりや汽笛聞こえる庄司館 ★ 秋日濃し拭けば艶増すワイン棚 　　 　 永子 △ 冬桜石蔵にあるえ偶え器 △ 出格子に影を落として柿紅葉 △ 秋風に押されて潜る長屋門 ◎ 石蔵の重き扉や冬桜 ◎ 手に重き益子の器走り蕎麦 　　 　 ともこ △ 柿釉の壷の傘立て秋の蟻 ◎ 梁に記さる「天長地久」秋高し △ 手作りの稲藁刷毛や秋深し ◎ 庄司作の小壷に揺るる蔓竜胆 △ スペインの壷に付く耳爽やかに

信子 △ うそ寒や象嵌陶器に小座布団 △ 走り根の四方八方濃竜胆 ◎ え間硬き陶の工房菊日和 △ 秋の灯の一つ庄司の壷と皿 　 仲秋や人間国宝陶器館 　　 　 憲巳 △ 息白し扉の重き土の室 △ 秋草や庄司の座せるろくろ台 △ 草紅葉歴史重ねし登り窯 △ 秋草や不揃いにある袖薬桶 △ 団栗の落ちたる庭の古水甕 　　 　 良人 　 茅葺の「ほや」の上飛ぶ秋の雲 　 その背に猫の足跡のぼりがま △ 名工を偲ぶ館や秋紅葉 △ 木洩れ日の届かぬあたりつるりんどう 　 秋風の抜け主無き登り窯 　　 　 鴻 　 秋深し陶工の作陶技に感銘す 　 晩秋の茅葺屋根の参考館 　 りんどうや来館者らを迎へ咲く △ 秋の陽を受けて聳える登り窯 　 冬桜来館者らを迎へ立つ

憲 　 気に掛る霜降りるかと床に就く 　 手を回し陶の形は手品かな 　 民芸の館を包む師の重さ 　 秋深し木の実少なし口さびし 　 晩秋の虫の鳴き声遠ざかる 　　 　 利孟 　 石蔵の丹塗りの扉冬桜 　 行き止まる陶の里径百舌の声 　 露けしや薪積み休む登り窯 　 金で継ぐ九谷の絵皿石蕗の花 　 秋薊埃の積もる廃れ窯