第156回の2 平成21年12月20日


  利孟
 小夜時雨印押し終はる遺産分け
 雪煙の頂き宙にくづじ富士
 弁当を掻っ込む歩荷冬苺
 数へ日や青竹担ひ来る農夫
 ノッカーに噴ける青錆落ち葉降る

  ともこ
◎冬晴や虫の骸の金光り
・ホイップの角のとんがり冬苺
・みちのくの雪積む上り貨物車両
・数へ日や折込み卓に読み散らす
・朴落葉船底型に乾びけり

  信子
◎泣き面の空の鈍色冬いちご
・数へ日の町内一斉清掃日
・冬晴の陽をのせ新車届きけり
・方言の一人芝居や冬灯し
 冬銀河グラス触れ合ふ余韻かな

  ミヨ
◎数へ日や一日しづもる美術館
○刃物研ぎ座する窪みの冬日かな
・霜の夜や版画摺る音削る音
・覚え無き脛の紫斑や冬の雷
 楽譜伏せし子の涙よ冬苺

  比呂
○竹針で繕ふ網や小春凪
○屋根と扉の他無き住居冬苺
○故郷の山の雪被て富士めける
○寒月光音消して着く救急車
○数へ日や山小屋薪を鎧ひたる

  一構
○海鳴りに障子わななく竜飛崎
○終焉の雨情寓居や冬苺
○冬ぬくきことも話題に老人会
・その後の噂聞きたし冬苺
 朝日射す窓にうつそり冬の蠅

  良人
○かぞへ日の電飾の街逍遥す
・デコレーションケーキに色増す冬苺
・かぞへ日の入り日引き込む山の影
・かぞへ日の北へ数増す新幹線
 冬いちご仏壇灯す火の如く

  清子
○禍も福も過ぎし証の古暦
・数へ日やひねもす納屋に人動く
・藁塚の黙々として陽の沈む
・セーターの着辛さ前を後ろにし
 友寄りて記憶を掬ふ冬苺

  登美子
・蝋梅に思はぬ数の雀来る
・炭ついだ後の話のあれこれと
・立話数へ日しばし忘れゐて
・数へ日や仏壇にある薄ぼこり
・数へ日や鼻先へくるカレーの香

  芳子
・枯葉舞ひ時の流れの止まれり
・新居への引越荷物事始
・数へ日や点滅早き電飾灯
 日を受けて赤つややかに冬苺


  昭雄
・数へ日や捲き癖直す新暦
・数へ日や衣桁に残す仕付糸
・牧水の歩みし小径冬苺
 軍鶏歩む今朝金泥の霜柱
 石垣の石の不揃ひ冬苺

  鴻
・川原の小石押し上げ霜柱
・冬日向鳶ゆつたりと舞へる空
・藁ぶきの農家の軒の吊し柿
 山頂を目指す岩場の冬苺
 小遣ひを数へ日で待つこどもかな

  敬子
・読めさうで読めぬ漢字や漱石忌
・手びねりの壺溢れ挿す実千両
 日向ぼこ鶴の折紙サンルーム
 数え日のトナカイきらら医院屋根
 ログハウス濡れ縁下に冬苺

  憲
・数へ日や増える白髪を数へては
・紅一点土色の野に冬苺
 数へ日や夢いっぱいの子供たち
 数へ日や還暦過ぎしときめかず
 冬苺今はハウスに食べられり

  芳坊
・サンタさんおひげながいねどこ行くの