第165回 平成22年9月5日
日光霧降吟行


   利孟
 動く口見てのやりとり観瀑台
 樹林へと落ち樹林より現れて滝
 牧柵の人と羊を分けて秋
 風の落し物なり青き木楢の実
 山清水音立てて受け金柄杓

   信子
☆石乱れ積める山門初紅葉
○赤とんぼ好み地蔵の赤帽子
△杉並木出でて晩夏の青い空
 霧の山右に左に峠越え
 岩を打つ波の力や法師蝉

   登美子
△取り出せる句帳に滝の湿りかな
△曲がりかどひとつ下りて霧の中
 秋暑し疲れし草の動かざる
 吟行会駅に集まる夏帽子
 木の茂り滝の勢ひを隠しをり

   美代
△牛群るる桶の舐め塩霧まみれ
△初紅葉巨岩を穿つ水柱
 秋天や牧の牛乳味深し
 混ぜ匂ふ牛舎の風の穂草かな
 千草咲く並び地蔵のどんづまり

   和子
○秋暑し風呼ぶ水をまいてをり
△滝音の曝して霧を生みにけり
 一句産むための静けさ霧の滝
 男体山に秋雲つくる大暈
 半分は霧に消されし橋の影

   昭雄
△古代より轟く滝を覗きけり
△木霊して霧降三滝落ちにけり
△雲流る金具の音の立つ牛舎
△牧の牛点々と伏す霧の丘
○牛の背の動きて霧の流れけり

   ともこ
△秋茜空まで伸びる牧の柵
△山女焼く丸太作りの直売所
△秋薊雲の影おく牧場かな
 秋高し牧の広場に飲む牛乳
 山奥の静寂やぶる滝の音

   良人
△深山の静けさを消し滝落つる
△高原の路傍の尾花色づきぬ
 夏牧場鉄塔めぐりさらに柵
 高原に野辺に群なす秋あかね
 碧空に色増す白柵夏の草

   聖子
△滝三つ落ち継ぎ山の音となる
△秋の雲空の広さを広げをり
△道しるべ辿れば古代よりの滝
 滝近し影落とし行く雲速し
 石清水引きてありけり山の寺