第164回 平成22年8月20日〆切
投稿句会


   利孟
 汗染みの法衣の背なの打つ木魚
 踊り唄オリンピツクにアニメまた
 言ひやうが残暑となりてなほ暑し
 文月や蔵に不開の大木箱
 稲架ごとのクラスの名札学習田

   比呂
☆文月や紙で蓋する残り酒
○玉の汗経一巻を声高に
△供花の水たちまち煮ゆる敗戦忌
△海鳴りを手枕で聞く夏座敷
 いとけなき科も身振りの子の踊

   芳子
○病葉や夢二の女風と泣く
○文月や心の襞を閉ぢしまま
△廃校に踊り太鼓の賑へり
△添ふ母の小さき背や合歓の花
 在りし日の友の笑顔や立葵

   信子
○種茄子と選られてよりの太りやう
△神の庭親子神輿の向き合ひて
△迂回路の臨時バス停夏祭
△文月の地底どこまで採石場
△誘はれて誘ひて継なぐ踊りの輪

   登美子
○故郷へつながる線路石灼ける
△夏休み箸の出てくる洋食屋
△起き抜けの暑さで曇る眼鏡かな
 立秋や今朝の風より肌に澄み
 句会終え女ばかりのかき氷

   良人
○その先の闇へと流し踊りゆく
 踊り果て虫の音戻る河川敷
 文月や父からの文さがしをり
 文月の男体山に淡き雲
 文月の北斗の空を仰ぎけり

   一構
△踊り果て校庭雨となりにけり
△文月や罅みつしりと井戸茶碗
△雲の峰バンジージャンプの八重歯の娘
△柔らかな草刈る朝の田の匂ふ
 雨の中りんりと立ちし蓮の花

   敬子
△ほどほどにありたき余生茗荷の子
△白扇子据え弁慶の飛び六方
 絵手紙のまとひてみたき白絣
 旅の夜の踊り櫓のたけなはに
 文月や異国の旅をすすめられ

   尾下
△文月や夫からのみのEメール
△盆踊り群れて繰り出しゆく若さ
 一欠片氷を入れて供花の水
 差し出しの名の無き暑中見舞かな
 校庭に弾けてソーラン踊りかな

   ともこ
△朝顔や今日は新聞休刊日
 博多帯ぽぽんと鳴らし踊りの輪
 見開きに水の流れや秋はじめ
 文月や風に触れたき棚の蔦
 明日へと繋ぐ蕾や今朝の秋

   ミヨ
△拝むごと磨く燭台夜の秋
 麻被ふ神とて祭る天狗かな
 きざはしや紅き土用芽ひとところ
 立て掛けしガス燈離れぬ葉月かな
 かかる夜の踊り果てたり杭の穴

   昭雄
△文月や子規の切手で来る投句
 打ち水のひと美しき会釈かな
 文月や父の名残る端溪硯
 国訛り飛び交ふ村の踊の輪
 踊り来しほてりを鎮む終ひ風呂