第167回 平成22年11月21日


  利孟
 お接待の飴玉ひとつ黄落す
 神送る風に肩寄せ道祖神
 素うどんに揚げ玉と葱小六月
 大口の黙鮟鱇の太鼓腹
 放たれし犬戻りては行く枯野

   昭雄
☆落葉松黄落す金鈴鳴りやまず
○野仏の膝に黄落とめどなし
△船笛の太く短く神渡し
△黄落や鉄棒の子の大車輪
△逆立ちの大道芸人神渡し

   敬子
☆休診の医師の作務衣の落葉掃き
△月光の差す中廊の車椅子
△黄落や手びねり地蔵手を合はせ
△点滴の悲喜交々や鰯雲
△神渡しかつて城主の捧ぐ御神酒

   一構
☆揺り椅子の主なく揺れて黄落す
△黄落や石の仏の赤頭巾
△神渡し一夜で散らす庭の木々
△舟に揺る扇の的や黄落す
 黄落や猿に与へる握り飯

  信子
○青北風財布に蔵す金の亀
△大根のぐんぐん育つ日和かな
△合唱の声透きとほる黄落期
△黄落の病棟雨のひもすがら
△黄葉積もる立ち入り禁止の柵の中

  比呂
○黄落や池に溺るる紙の舟
○額合はせ探る児の熱初しぐれ
△谺返らず山吹の返り花
△大国主命の負ふ大袋神渡
 寂び寂びと里風尖り山眠る

  郁子
○黄落の落葉松の金樺の白
○千の風渡りて万の銀杏散る
△神渡し空に木の葉を吹き上げて
△あらかたは夕日の色に蔦もみぢ
 風を踏みのぼる坂道散るもみじ

  和子
○黄落や音なき音の積りたる
△黄落や聞こえぬ振りの聞き上手
△黄落の口あどけなき埴輪かな
△神渡し童話のやうな月のぼり
 黄落の広がりに居て神々し

  聖子
○黄落や地産地消のレストラン
△神渡し木の葉カリカリ飛ばさるる
△末枯れやポスター重ね貼られゐて
△ワンコインの昼の弁当小六月
 組合の演説長し朝の冬

  芳子
○千里飛ぶわけにはゆかず龍の玉
△黄落や一人聞いてる留守電話
△産土の山に向ひて神渡し
 柚子味噌のとろりと光り仕上がりぬ
 透きとほるハープの音色草紅葉

  深雪
○桃割れの結び目痒き七五三
△山寺や黄落やまぬ明り窓
△一人ゆく旅の車窓の紅葉狩り
 蒼天に雲押し流す神渡し
 神渡しパソコン連れて西の旅

  美代
△神渡し焼石で炊く古代食
△冬日向鷹の影絵を指で組む
△さへづりや埴輪の胸のゆたかなる
△叙勲の碑色づく柚子をかたはらに
△焼け残る大樹さながら黄落期

  良人
△黄落す谷の渕瀬の水の面に
△那須山の煙を払ひ神渡し
△黄落の銀杏並木に風戯へ
 神渡し在り処を晒す山の宿
 黄落や銀杏並木に朝日影

  登美子
△天辺の鴉の孤独黄葉照り
△途中下車して前山の黄葉す
△柿日和誉めて始まる立ち話
 冬の蠅バケツの水を泳ぎ出る
 黄葉や黄色のあふるゴッホの絵

  健
△つまづくや人と黄落たまにある
△舞ひ上がる黄落笑ひ人は泣く
△黄落や大路を鳴らす高箒
 神渡女の命の髪乱る
 神渡風にも人も襟ただす

  恵子
△牡蠣を剥くひたすらに剥く口に入る
△柿の木に背より陽を受く鴉かな
 黄落やカフェテラスの人景色となり
 神渡し土産の黄砂こぼしつつ
 黄落や等間隔の煙立つ