第201回 平成25年9月15日
兼題: 銀杏黄葉 懸煙草 



  利孟
 煙草屋の鈴虫の鳴くガラス箱
 黄金の葉降らせに降らせ大銀杏
 穂芒や淡き火影の石燈籠
 懸煙草空茶啜りて検査官
 花といふ白きヴェールの烏瓜

  良人
☆荒縄のたわみわづかに懸煙草
・香の籠る黄金のカーテン懸煙草
 懸煙草隠す前山峡の村
 高々と大銀杏黄葉街角に
 厳として大銀杏黄葉会津路に

  ミヨ
△今朝沼に生まれ色濃き秋茜
・男郎花薪積み上げて登り窯
・銀杏黄葉一揆を堰ける塀高し
・懸煙草ひたすら手伸し束の嵩
・笹竜胆延命水を汲みこぼし

  信子
△煙草干す農継ぐ家の母屋納屋
・雷雲に尻尾の生えて竜巻来
・蜩や処世の道の浮き沈み
・栗飯のほつこり一口ごと香り
 黄葉する銀杏並木や文教区

  昭雄
△懸煙草家郷土呂部の深庇
・銀杏黄葉はふり上げてはまた浴びて
・銀杏散る嬰つんつんと蹴る湯舟
・銀杏散る村の塞ぎし釣瓶井戸
 懸煙草棟木を組める槌の音

  敬子
△蔵前をふさぐ香りや懸煙草
・蔵壁を映す川面や柳散る
 古寺に銀杏黄葉の色尽す
 病む友へ葉月筑波の絵手紙を
 アンコールのタンゴを踊る敬老日

  比呂
・駆り出さる子等の巧みに干す煙草
・懸煙草昔羅宇屋といふ仕事
・悪筆の詫状届く鳥兜
・初秋の川しろじろと雲流す
 絶え間なく晶子の鳥の銀杏散る

  聖子
・黄葉して町の自慢の大銀杏
・干し小屋のラヂオの高音懸煙草
・懸煙草小暗き小屋に射す夕日
 縄の目をゆるめては吊り懸煙草
 背負ひ籠に山と積みたる新煙草

  一構
・銀杏の黄自費出版の案内状
 早朝の銀杏黄葉や生徒過ぐ
 公園の銀杏黄葉を蹴散らして
 銀杏の黄勝利投手のハイタッチ
 懸煙草棚田に老いた手の農夫かな

  健
・懸煙草小屋に香りの満ち満ちて
 黄葉のトンネル銀杏並木かな
 黄昏に染まる銀杏黄葉かな
 走馬灯遠くなりたる懸煙草
 空青く銀杏黄葉風に舞ふ

  輝子
・学舎の道なる銀杏黄葉かな
 幾枝も銀杏黄葉の遊びける
 銀杏黄葉名女優と重なりぬ
 不器用な身の振り方や懸煙草
 シュルシュルと風巻き黄色銀杏道

  巴
・老いた手の温もりに似て懸煙草
 二荒の公孫樹黄葉や巫女二人
 照り映える銀杏黄葉に後の月
 古ベンチいてふ黄葉のカード舞ふ
 孫駆ける銀杏黄葉蹴散らして

  木瓜
 まぶしさや銀杏黄葉の舞ひ踊り
 悩ましや銀杏黄葉の遠眺め
 秋涼し腕に痒さの薄残り
 懸煙草時の流れの止まりたる
 沁みわたる永久の香りや懸煙草