第206回 平成26年3月23日
兼題 土筆 山笑ふ


  良人
☆奥鬼怒は七重に八重に山笑ふ
・鳥声の満つる里田や山笑ふ
・手に伝ふ畔の温みや土筆摘む
 身の丈の揃ひし群れの土筆摘む
 峡鳴らす風の吹き来て山笑ふ

  比呂
△春時雨朱塗柱の小町堂
△土筆野や杭と化したる志士の墓
・雑魚取りの舟の分け入る葦の角
 野鍛冶打つ最後の鍬や百千鳥
 山笑ふ延命地蔵の薄化粧

  昭雄
△山笑ふあくびをころしゐる山も
・野仏の膝につくしの一掴み
 一陣の風に土呂部の山笑ふ
 雪解水太平洋へ水笑窪
 鳶ときに羽うてる那須野山笑ふ

  信子
・三寒四温脅しの烏吊るされて
・野の光もろともつくし摘みにけり
・裾山を染める夕日や春田打
 学寮の子に子の生計山笑ふ
 励まさる言葉の魔法春の風

  巴塵
・大鳥居くぐれば山の笑ひけり
・佐保姫の筆の染めゆく野山かな
・土筆煮る湯気にくもりしガラス窓
 夜のほどろ山くすくすと月あはし
 寝ころびて目せんに並ぶ土筆かな

  ミヨ
・木蓮の蕾の羅紗の肌ざはり
・草野球踏みしただれし土筆坊
・落ちぬてふ願かけ石や山笑ふ
 経石の日月窓の芽出し風
 間伐の大鋸屑ちらす春疾風

  聖子
・迂回路に赤の信号山笑ふ
・福耳の磨崖の仏山笑ふ
 土筆んぼ雨にうたれてうす緑
 分譲地の揺れゐる旗や土筆んぼ
 川野辺の土手の土筆の背比べ

  一構
・山の日は西へと移り土筆伸ぶ
 土筆摘むピンクの靴の小学生
 土筆伸ぶ造り酒屋の中庭に
 土筆伸ぶ薄着の男女手を繋ぎ
 つくしんぼ風柴犬のうなじ打つ

  敬子
・陶工の翳せる壺や山笑ふ
 めづらしきレシピ見出す春の蕗
 春告鳥楽譜あるかよ節つけて
 雪兎きやらの樹上に瞳清ら
 竹林のひだまりあまた土筆生ふ

  健
・水音のあふるる山路山笑ふ
 筆をもて手紙に描き土筆の穂
 裾野にてせせらぎ奏で山笑ふ
 ドライブや声の弾みて山笑ふ
 ふるさとの道端に立つ土筆かな

  輝子
・露天湯の水面が踊り山笑ふ
 手招きて休みし手元つくしをり
 錦鯉若き飛沫ぞ山笑ふ
 晴天の匂ひの豊か山笑ふ
 湯煙の吹き出すあたりつくしかな

  木瓜
 老い人の登り弾みて山笑ふ
 並び立ち背丈競ひし若土筆
 チューッとな若さ吹き咲くチューリップ
 山笑ふ古里覆ひ隙間無く
 ビルの傍土を温め土筆立つ