第224回 平成27年9月27日
兼題: とろろ汁 初紅葉


   利孟
 古釘に下がる擂粉木とろろ汁
 秋出水網で囲ひの金魚池
 とろろ汁宿場女郎の口の紅
 秋彼岸庫裡の袋に布施の米
 初紅葉半刻登り詰め札所

   比呂
☆百年の紺屋砧の握り艶
△親離れ子離れできてとろろ汁
・入道雲うすれ筋雲風澄める
・船で巡る八丁出島初紅葉
・蜉蝣や琵琶掻き鳴らす盛衰記

   昭夫
☆初紅葉九尾狐の駆ける嶺
△とろろ汁糊の効きたる割烹着
・とろろ飯朱塗りの椀に杉の箸
・山奥に眠る秘湯や初紅葉
 蟋蟀や児の去りし夜の滑り台

   ミヨ
☆煎じ薬飲み切りけさの爽やかに
・ひたぶるに積み足す土嚢とろろ汁
 文楽や黙す黒巾の秋思かな
 山内の地つづきにゐて初紅葉
 銀杏のほろ苦きかな往ぬ人よ

   信子
△今日のこと今日為し今日のとろろ飯
△夏果ての浮桟橋や湖の雲
・行き帰る病廊長し秋の蝉
 臥せてより寝につくまでの虫の声
 初紅葉旅の半ばの足湯カフェ

   聖子
△太ももの掻き傷ばつたを追ひかけて
・朝の日の光に映えて初紅葉
・登校の黄帽子が行く草紅葉
 雲流れ湖に映りし初紅葉
 初紅葉梢より雨二雫

   巴人
△初紅葉宮の栗石濡れそぼち
・垂乳男の老います父の自然薯
・湖に映る会津嶺初もみぢ
 紅葉ずるや会津の城の老い桜
 えごま畑大内宿のとろろそば

   敬子
・とろろ汁故郷の唄くぢずさみ
・ポケットの数珠を取り出し地蔵盆
・十六夜の手擦れ格子戸旅の宿
 五穀米うまいうまいと秋彼岸
 初紅葉豆乳入りの鍋囲む

   良人
・雨音に静まる宿坊とろろ汁
・高麗川の流れ青々曼珠沙華
 赤ひとつ生まれて土提の彼岸花
 富士を背に丸子の宿のとろろ汁
 紅一点鎮守の杜の初紅葉

   鴻
・様々の赤に輝き葉鶏頭
 山奥に入りて通草の実に見蕩れ
 山遊び遠近にあけびの実
 鈴虫の声に聞きほれ歩を止める
 鈴虫の美声に聞きほれ歩を止める

   健
・渓谷の底に溢れる初紅葉
 卵入れぶつかけ飯のとろろ汁
 何杯もおかはりをしてとろろ汁
 空気澄み見頃は朝の初紅葉
 色眩し明智平の初紅葉

   木瓜
 初陣の武者の眦初紅葉
 名月や萬の民に隔てなく
 早乙女の仄かな震へ初紅葉
 とろろ汁今日一日を顧みる
 肩ゆるめ妻の下ろせるとろろ汁