第257回 平成30年6月24日
兼題 水無月 葛餅


  ミヨ  
☆青嵐会津の兵の馳せしみち  
○ランドセルの算盤鳴らし梅雨上がる  
・初浴衣少女の軽き下駄の音  
 葛餅や丹の壁見惚れ旅半ば  
 水無月や足元軽き野草会  

  信子  
○波音の湧く六月の玻璃の壺  
○火の元と錠を確かめ別れ霜  
・葛餅の茶店に古都の鐘響き  
 開拓の碑は石一つ梅雨深し  
 役目まだまだありて喜寿雲の峰  

  聖子  
○梅雨晴れ間休むを知らぬ芝刈り機  
 昼の蚊やグルメ談義の更衣室  
 水無月や海への道に古き門  
 水無月や害虫駆除の回覧板  
 丸鉢に寄せ植ゑをして濃紫陽花  

  昭雄  
・水無月の筏曳きゆくポンポン船  
・水無月や露天湯硫黄の香のあふれ  
 ふるさとは遠きが良けれ葛の餅  
 掌に昔が踊る葛の餅  
 葛餅や橋のたもとにして老舗  

  栄伍  
・走り梅雨ベランダに揺るにはたづみ  
・老杉の微かに揺れて走り梅雨  
 どんよりと想ひ浮かべる葛の餅  
 道端の篠竹うねる梅雨の空  
 こそぼ降り一月早い水無月会  

  美恵子  
・葛餅や床机に影の野点傘  
・水無月やポンチョの子らの列乱れ  
 葛餅やステンドグラスの喫茶店  
 水無月や膏薬の量二割増し  
 草紫陽花虞美人草のごと床に居て  

  青樹  
・遠来の友白玉のよく冷えて  
 水無月や奥入瀬川は雨に荒れ  
 吉野より友の土産の葛の餅  
 水無月や早瀬に挑む船下り  
 水羊羹出てきて勝負預けられ  

  巴塵  
・水無月や皆安かれと綯ふ浅茅  
 葛桜ぷるると揺れて銀の皿  
 葛切や薄墨の色啜りけり  
 無残やな地獄の闇の墜栗花穴  
 葛餅や黄粉黒蜜ピタゴラス  

  良人  
・葛餅にからっ茶の出て峠茶屋  
 水無月や雲より低き八溝嶺  
 水無月や野川に澄める水の音  
 水無月や萌葱色染む里の山  
 水無月やそよと風吹く田んぼ道  

  敬子
 乗り換への駅名物の葛の餅
 文の添ひ色鮮やかな大苺
 水無月や夜の古典音楽会
 水無月の謡をさらふ朗々と
 川原風枇杷の小花の蔵屋敷

  木瓜
 地の固き新のTシャツ着て嬉し
 老いの果てすつきり人生夏夕べ
 短夜の眠りに刺さる夫の声
 葛餅の黄粉や蜜に溶け込まず
 乙女子の少し大きめ夏帽子