第256回 平成30年5月27日
兼題 梅雨 菖蒲


  利孟  
 スコップを担ぎ見廻り菖蒲畑  
 母の日やアルバムに古る肩もみ券  
 鯉池の深き濁りや五月冨士  
 老鶯や抜き晒しする古塔婆  
 走り梅雨追ひ越し列車の遅延して  

  ミヨ  
☆島らつきよシーサーの守る赤き屋根  
・家々をつないだ水路ひつじ草  
・ポプラの秀梅雨満月を押し上げて  
 梅酒瓶醸しきたりて日付札  
 野地ここに集まる水音花菖蒲  

  比呂  
○浮き沈む鯉の顎(あぎと)ふ蓮の池  
○青嵐や塵労(じんろう)の髪乱しゆく  
・相輪に耀く宝珠春夕焼  
・長雨に痛みて白の花菖蒲  
・檜皮屋根鳴らし過ぎるや走り梅雨  

  美恵子  
○花菖蒲檜扇かざし白拍子  
・走り梅雨路面を灯し黄信号  
・花菖蒲笑みを競ひて撮る写真  
・夜間飛行の香水を愛で逝きし人  
 石蔵の壁這ふツタや走り梅雨  

  聖子  
○梅雨深む庁舎チャイムの音にじむ  
・梅雨の始発のバスに吾一人  
 大楠に蟻の行列梅雨晴間  
 梅雨曇傘を小脇にバス待ちて  
 梅雨の傘行列先のラーメン屋  

  昭雄  
・封切りの石鹸を出し菖蒲の湯  
・足蹴りて胸ではしやぐ子菖蒲の湯  
・風くれば光の波の花菖蒲  
・たちまちに隠る男体山男梅雨  
 梅雨雫零れ山河を逆しまに  

  信子  
・繕ひの糸結び切り走り梅雨  
・夕灯し八十八夜の雨の降る  
・水さやぐ朝の光に菖蒲園  
 星空を引き寄せ蛙鳴いよよかな  
 菜の花に謝せば菜の花浜色に日や  

  良人  
・丈高き花菖蒲田に風わたる  
・梅雨の川しばし中洲の覆はれて  
・花菖蒲背には八溝と筑波山  
 那珂川の流れを濁し送り梅雨  
 風凪ぎてあやめ水田に定まりぬ  

  木瓜  
・漫ろ雨魁をして梅雨の雷  
・夏痩せて鐵より重き頭かな  
 甘酒や床机ともにす異邦人  
 熱帯夜十五年ぶり交はす酒  
 皆OK!てのひらひろぐ花菖蒲  

  青樹
・忙しくなく餌探す雀梅雨晴れ間
・裾端折りして早乙女の赤襷
 在りし日の父の植ゑたる花菖蒲
 雲低く広がる朝梅雨近し
 菖蒲湯に孫と浸かるは此までか

  敬子
・卒寿まで夢の日々生き柿若葉
・巴波川の女船頭つばめ来る
 夏きざす牧場に早やも仔牛生る
 風の色紫にして湖夕べ
 夏来るやレースフリルのワンピース

  巴塵
・鉢巻に巻いて香の増す菖蒲かな
 梅雨深し伸び放題の庭の草
 菖蒲園柳の腰の二人づれ
 あさぼらけ櫟の山の二輪草
 雨具纏ふ女子高生の胸ゆたか