第259回 平成30年8月12日
兼題 小鳥来る 天の川


  利孟  
 聞き慣れぬ鳴き声の湧き小鳥来る  
 花火会の窓に卓向けレストラン  
 Tシヤツのゆるむ襟元秋立てり  
 磯揚げの舟におく砂土用波  
 銀漢や赤灯台を揺るうねり  

  ミヨ  
☆鳥渡る霊山拝す女人堂  
○石切の鑿の谺し小鳥来る  
○秋近し染抜き紋の箪笥かけ  
・筒鳥鳴く杉の重たき陰の中  
 三斗小屋寝ること惜しむ天の川  

  比呂  
☆小鳥来る太き棟木を組み上げて  
・聞香会金の蕊立つ白蓮  
・背を撫でるばかりも介護軒風鈴  
・カンナ炎ゆ与謝野晶子の濃き眉根  
 転輪蔵(てんりんぞう)の扉の半開き天の川  

  良人  
○里曲へと尾根より湧きて小鳥来る  
○山宿の窓に谷音銀河澄む  
・那須岳の北へと流る天の川  
・廃校の桜の並木小鳥来る  
 天の川草津白根山の空に濃し  

  聖子  
○露天湯の裸電球夏の月  
・川風を受けて寝転び天の川  
・小鳥来る牛の仔跳ねる山の牧  
・妹と流す母の背天の川  
 昼休み中の電気点検小鳥来る  

  昭雄  
○鬼怒の山より流れ出で天の川  
・赤松の薪積む窯場小鳥来る  
 バロックの流るる窯場小鳥来る  
 天の川こんな夜更けにベルが鳴る  
 老犬に蚊取り線香焚いてやる  

  信子  
・踊り唄かつてこの地に練兵場  
・一汗の額心地良き夕べかな  
・歩を広ぐ夫の回復小鳥来る  
・断捨離に迷ふ愛着夜の秋  
 吾に子にここは故郷夏の星  

  巴人  
・小鳥来る小庭に虫を探しゐて  
・小夜嵐しぶきに濡れる天の川  
・藁屋根の目深き庇天の川  
・小鳥来て小首かしげる小枝かな  
 ねがひ事すくなくなりぬ天の川  

  美恵子  
・赤い実の残りし一つ小鳥来る  
・大き莢剥けば一粒小鳥来る  
・小鳥来る庭の野草を愛でし父  
 紅一点レンズで追ひし銀河かな  
   

  木瓜
・秋空に二筋飛行機雲引かれ
・白桃を剥く薄紅の爪をたて
 秋来れ真つ赤な酷暑払ひのけ
 三人で交はす杯小鳥来る
 静けさや宙に瞬く天の川

  敬子
・千日紅卒寿乙女のここにあり
 小鳥来る英語教室ひと休み
 欠席者少なき会議雲の峰
 リハビリの民謡音頭小鳥来る
 天の川卒寿の現世夢のごと

  青樹
・朔日の空を上下に天の川
 バイト終え銀河に母を想ひつつ
 小鳥鳴く声に一日の始まれり
 小鳥来るツグミの群れの早々と
 急ぐ帰路共に歩むや天の川

  雅枝
・「西郷どん」の逝き閉づページ小鳥来る
 電光をしのぐ雷鳴地より湧き
 ダックスフンドばあばとお留守居夏休み
 ふた星は今宵逢ふらし空仰ぐ
 夕立や泣いて止むさま嬰のごと

  英郷
 孫の目に映る光よ天の川
 うだる日の小鳥来る夕いとほしき
 天の川銀河鉄道スリーナイン
 孫もまた天の川てふ夢みむぞ
 汗だくに小鳥来るらむ空郡青