第267回 平成31年4月21日
兼題:春の雲 灌仏会

   利孟
 夏近し解きて丸める仕付け糸
 春の雲車を店に弁当屋
 幻燈と甘茶と駄菓子花祭り
 花の雨乾いた雨戸濡らしては
 付属病院裏に大学花吹雪

   比呂
☆初燕むかし建場の道の駅
△囀りやペンキ塗り立て貸しボート
△芽柳のさはさは風の重次かな
△田芹摘む流れに洗ふ爪の泥
・眠りつつ笑まふ赤子や春の雲

   信子
△満目の原の地平や春の雲
△月天心火影ほのかに甘茶寺
△明日へと落ちる山の日仏生会
・本堂に届く瀬音や花祭
・音残し機影の消ゆる春の雲

   ミヨ
△春の雲悠々銅山に離村の碑
△間歇泉吹き上ぐ天路鳥帰る
・仏生会格天井を書で埋めて
・鶴首の古銅の瓶や白牡丹
 階の奥明らむ墓地や雉ほろろ

   聖子
△待ち合はせの何時もの場所の春の雲
・ビル修理の足場交叉し春の雲
・老若の話絡まず春の雲
 雨上がり葉の水滴に春の雲
 見上げれば高層光る春の空

   良人
・吹く風の和らぐ土手や春の雲
・柔らかに光る筑波嶺春の雲
・野の花と造花を合はせ花御堂
・遠山の色より淡し春霞
 青空を程よく残し春の雲

   雅枝
・甘茶浴び御身艶やかお釈迦さま
・春の空暮れて夕べの鐘遠く
・春ショール古きシネマの名女優
・セピア色の稚児の写真や花祭り
 春風に誘はれ疼く旅ごころ

   昭雄
・青鷺を追ひてすすみて手漕ぎ舟
・牛の眼のもの言いたげに春の雲
・提灯の点り夜の更け灌仏会
 ひとり去りふたり去りして春の雲
 記憶から消えし人の名灌仏会

   木瓜
・ほほえみて天地貫く甘茶仏
・蹴とばして崩してやらう春の雲
・馬鈴薯植う大きくなれと声かけて
 畑鋤くやイチロー国民栄誉賞
 足長蜂なかなかやるな睨めつこ

   巴塵
・春の雲スーラの点描空埋め
・集ひ来て我も善男灌仏会
・花会式三方高く捧げ巫女
 真青なる空にぽつかり春の雲
 春の雲御詠歌流る古河の町

   俊一
・甘露降る中に金色誕生仏
・いろは坂登りて近し春の雲
・おさな子の真似て手合はせ灌仏会
 春の雲ゆるさと癒しに浸る吾
 風やさし心うきうき春の雲

   英郷
・乳呑児もまた目を凝らし灌仏会
・乳離れぬ児の持つ柄杓花祭り
・灌仏会生まれた仔牛震へ立つ
 節目かな春雲仰ぎひしひしと
 春雲や薄日の空に鳥を待つ

   敬子
・山笑ふ幼児も双手を上げ笑ふ
 久闊の友は絵仲間黄水仙
 梅の花赤の頭巾の六地蔵
 床の間に聖観音図春の雲
 米寿より卆寿の友へ花便り