第278回 令和2年3月15日
兼題 朧 山笑ふ

利孟
 山笑ふ行きては戻るトラクター
 ハイタッチ受け受験子の薄き笑み
 朧かな行灯の火を掻き立てて
 丸窓のステンドグラス麗らかに
 千代結びして椀種の細魚かな

比呂
☆末黒野や音の遥けき貨車の列
☆極楽てふ寺の極彩山笑ふ
・回転ドアーに滑り込みたる春の雷
 朧夜や虚構の舞ひの白づくめ
 まほろばの藪の初音を聞かまほし

美恵子
☆旅の友はポシェット一つ山笑ふ
〇合格の発表待ては山笑ふ
・ジーンズとシャツでゆく町山笑ふ
・藍染めスカーフ巻いて山笑ふ
 レジ袋提げて見上げる朧月

信子
〇おぼろ月石と化したる亀の影
・山笑ふ八方からの登り口
・山笑ふ未来を背負ふランドセル
・銭湯の灯過ぎる家路朧の夜
・百の掌の空を押し上げ花辛夷

ミヨ
〇草おぼろ六角堂の仄明かり
・山笑ふ五寸の土偶踊りゐて
・山笑ふ家の祠の大黒天
・医者いらずの苦さ飲み込み春愁
 分葱ぬた下野風土たもとほり

良人
〇安らかな瀬音風音山笑ふ
・那須の山笑ひ始めの滝の音
・やはらかに野田を浮かべて朧月
・風もなく雲の流るる朧月
 郡山に遊ぶ人あり山笑ふ

昭雄
〇全身で乳吸ふ赤子山笑ふ
・幻の塔立つあたり闇朧
・山笑ふ揺れの止まらぬやじろべい
・山笑ふ一つ灯ともる露天の湯
 朧夜のブランコ足の下に村

聖子
〇残業をここまでとして鐘おぼろ
・アニメ模様のカラフルマスクして園児
・飛行機雲越えてゆく山笑ひけり
 街の灯のおぼろ展望駐車場


英郷
〇朧の夜無欲悟道を思ふらむ
・朧夜のヘッドライトは束となり
 朧なり新型コロナクラスター
 一株の山茱萸跳ねて山笑ふ
 タノームと一人呟く山笑ひ

敬子
・大樹ごと包む囀り雲流る
・言つたとか聞かぬと卆寿山笑ふ
 早口の小鳥の声や梅開く
 ぐにやぐにやの子猫は細き四肢伸ばす
 乾燥の極みの庭に春の雷

木瓜
・ゆつたりと雲間静かにに朧月
・黒文字の添へらる和菓子朧の夜
 山笑ふ残る命やいかほどに
 春きざす枕元には俳句帳
 首傾げ思考三昧山根草