第２９９回 令和３年１２月２５日 Ｚｏｏｍ
兼題： 返り花 煤払ひ
返り花花咲爺はポチ連れて
古老の手見ては真似ては注連を綯ふ
数へ日のＡＴＭの列の黙
漏刻の音ひそやかに小夜時雨
煤払ひ三猿は目口耳覆ひ
比呂
☆畳裏にイロハの符丁煤払ひ
☆底冷えの口の虚ろに古鎧
◎風花や採血針の腕探る
◎ビーナスと呼ばれる土偶返り花
・寒禽の争ひ鳴きて藪の中
聖子
☆待合室の椅子に×の字冬ざるる
◎乳母車で運ぶ大鉢菊花展
◎寒夕焼乗客の無き路線バス
・秋麗ら知事表敬のメダリスト
前籠の大根揺れて夕暮るる
◎聖樹の灯点して闇を深くせり
◎藁の香の俵山積み宝舟
・梨棚の吊縄ほつれ返り花
・煤払ひ鼻三尺の天狗面
・長屋門干大根の影しだる
美恵子
◎豊満な山肌染めて冬朝陽
・冬の夜の電飾に浮く一軒家
・特売の越乃寒梅戻り花
・コロナ禍の病室に置くミニ聖樹
数へ日の樽に仕込める松前漬け
雅枝
◎陽のぬくみ恋してひらく返り花
・日暮るるや匂ひ散らして焼き芋屋
・神仏の塵を払つて年迎へ
オオタニの話題沸騰忘年会
クリスマスケーキを君と二人して
◎帰り花古寺によき仏ゐて
・花の名の知れず路傍の帰り花
・思ひ出のあの径訪ね帰り花
煤掃きて明るくなりし四畳半
煤逃と言ひ高らかな下駄の音
英郷
◎灯を背にし煤湯に浸りけり
・落石の塞ぐ山道返り花
蒼天や紅一点の返り花
幼な児の小さき笹竹煤払ひ
煤掃き風入れ煤を払ひけり
信子
・手も足も伸びる心地の煤湯かな
・枝先につぶやく如く返り花
・煤掃ひ終へて一人の部屋広し
咲く容散る容ふと帰り花
煤逃げと一人で犬を連れ出して
・人も無き梨園白き帰り花
・子と妻に任せてひとり煤籠り
・床柱磨きて床の煤払ひ
道しるべめきて躑躅の帰り花
帰り花那須の山々遠く見て
木瓜
・スケーター右に左に風を切る
・鯛焼きの背鰭のバリを先ず食みて
佳句無きままに締切狂ひ咲き
湯豆腐の茹だる刹那を掬ひあげ
煤逃げの碁会所男の吹きだまり