湯の旅 十和田八幡平、夏油
(青荷温泉、温湯温泉、あきた白神、ふけの湯、後生掛温泉、網張温泉、夏油温泉、瀬美温泉)
「日本秘湯を守る会」というのがある。最初は50数軒の東北を中心にした辺鄙な山深い温泉宿が、昔のままの素朴な温泉情緒を提供することを協定した旅館連合であった。現在では、旅行会社も参加して全国的な組織になり、参加旅館数も200軒近くになっている。 道路事情の好転と、ここ数年の秘湯ブームで、観光バスが乗り付けて来る所も多いが、やはり名湯が多い。。 「青荷温泉」と「ふけの湯」は、昔から一度は泊ってみたい宿であった。「青荷温泉」は、最近ではランプの宿として喧伝されていて、予約も難しいと聞いていたが、あっさり月曜の夜の宿泊が取れて、日曜日の夜に東北道を出発した。「ふけの湯」も旅先から予約が取れた。「夏油温泉」は、何度か訪れたが、事情がどう変わろうと、夏油川沿いの五つ(中一つは女性専用)の露天風呂と二つの内湯が素晴らしい。帰路、夏油温泉から1kmの林道で、生のクマに出遭った。 黒石温泉郷の温湯(ぬるゆ)は、10年も以前に、早朝にふと立寄り、湯の熱さと人情の良さに感激した。共同風呂の外観が新しくなっただけで、町のレトロな風情はそのままだった。 |
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青荷温泉 (あおにおんせん) 青森県黒石市大字沖浦字青荷沢滝ノ上 | ||
単純炭酸泉、47℃。 立寄り¥500 黒石温泉郷の一つと数えられることもある。開湯は、昭和4年、歌人丹羽洋岳が小屋を立て移りすんだこととする。昭和57年に前面改装し、その後も改装を繰り返している。ランプの宿のシステムは変えたことがない。 | ||
国道102号線から雷山(636m)を巻いて5kmほど山中に入る。殆どがホソーされているが、この峠の下りは急坂のダートである。。 | 宿の前の看板に描かれたイラスト 外人客が3人ほど宿泊していたが、これだとよく分かるだろう。 |
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本館玄関。 本館の他に、幾つかの凝った建物の宿泊施設がある | 本館前の「健六の湯」は立ち寄り湯(15時まで)でもある。足湯もある。立寄り客の帰り車とよく出遭った。 | |
吊橋を渡ると、露天風呂と「滝見の湯」がある。別棟の宿泊施設が点在する。南八甲田を水源とする青荷川の流れがきれい。 | ランプ小屋にはランプが保管されている。夜9時にはフロント、喫茶室は閉鎖。翌朝8時過ぎに、ランプが回収される。 | |
夜の露天風呂では蛍が飛んでいた。時間制限はない。 | 「滝見の湯」からは龍ケ滝が見える。(外に露天風呂もある) 背の高いしっかりした建物。改修が続けられ、現在の基礎は平成5年竣工とあった。 | |
温湯温泉 (ぬるゆおんせん) 青森県黒石市黒石温泉郷 | ||
弱塩分含有泉、57℃。 入浴料¥200 | ||
400年の歴史をもつ湯治場。今回は湯にも入らず街を眺めるだけで、昔の思い出を追っかけに寄り道した。 共同浴場(鶴の名湯)は新しく外観を整えていたが、周囲の客舎(ホテルということ)の佇まいは同じだった。共同浴場を中心にして、客舎と呼ばれる宿屋がとりかこむ街の風情が良い。 10年余り前に、夜どうしに東北道を走り、早朝立寄った時の印象が忘れられなかった。朝食を食べたいが店屋がない。番台のおばあさんに紹介してもらい、客舎に挟まれた民宿で朝食を食べさせてもらった。台所の隣の部屋での美味い味噌汁だった。溢れ出す豊富な湯、熱い湯も印象深い。 宿泊には、旅館、民宿など数軒がある。朝の立寄り湯をもう一度味わいたい。 |
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明治から大正にかけての木舎が共同浴場を取囲む景色が良い。客舎には内湯がなく、湯治客は共同浴場を利用する。津軽系こけしの発祥地。 | ||
あきた白神温泉 | ||
弱アルカリ単純泉、源泉21℃。 立寄り¥500 | ||
弘前・西目屋・岩崎線で大雨で崩壊した路肩にはまりこんだ車の救出を手伝っていて、深浦で探す宿がとれずにこの地まで来た。翌日、二つ森登山でもするかと思い、「ぶなっこランド」まで行ったが、羽虫が一杯で気は挫かれた。この温泉はむしろ海岸遊びに適している。 | ||
ホテルの玄関前。夜のハタハタが美味しかった。 海岸レジャー用の観光ホテル。 |
鹿ノ浦展望所(夕日スポット)から。白神温泉はこの海岸沿い。ぶなっこランドから登山道入口まで林道を走り、二つ森(1086m)山に登ることができる。 | |
蒸の湯 (ふけのゆ) 秋田県鹿角市八幡平 | ||
単純炭酸泉、47℃。 立寄り¥500 | ||
標高1,100mにある宿は外見はロッジ風。「ふけの湯」とは蒸かしの湯ということ。地熱浴で湯治することが本来の姿なのであろう。温泉の歴史は古く、宝永年間(1,704〜11)の発見と伝えられる。昭和48年の地滑りで、湯治用宿舎が全滅し、昭和31年に建てられた旅館部だけが残った。 | ふけの湯神社には金勢大明神が祀られている。おみやげもの屋もあり、立寄り客も多い。本館にある内湯も露天風呂も、浴槽は総ヒバ造りで気持ちが良い。夕食には、全て近くで採った山ぶどう、ヒメタケ、ウドなどの山菜料理、と岩魚、地元の豚肉など蒸ノ湯式薬膳を味わった。 | |
宿の前は駐車場を挟んで一帯が温泉場。ワイルドな火山風景に驚く。右に湯溜りと男女の露天風呂がある。左の方に、地熱浴の小屋と混浴大露天風呂がある。八幡平アスピーテラインの「蒸の湯」バス停(展望所)からも噴煙が上がるのが見える。 | ||
いたるところから湯が湧き出ているが、この湯だまりに湯を溜めて、一帯にある浴槽に導いている。 | 男子の露天(野天)風呂。更衣所は浴槽の隅に棚があるだけ。 | |
混浴の大露天(野天)風呂。駐車場やアスピーテラインの展望所からも丸見えなので、ゴザで被ってあるのだろう。 | オンドル形式の蒸し風呂(地熱浴)。フロントでゴザを借りて、浴衣で寝転び湯治する。 | |
火山活動、湯煙の中を朝の散歩ができる。八幡平頂上までの遊歩道もある。アオモリトドマツの深い緑、ブナの淡い緑、紅葉時はことさら美しいという。 | 本館内の露天風呂 | |
後生掛温泉 (ごしょうがけおんせん) 秋田県鹿角市八幡平 | ||
酸性単純硫黄泉、98℃。 立寄り¥400 開湯300年の歴史がある。温泉が火山の中にある風景。 | ||
泊り客は本館左の玄関から入る。 | 立寄り湯は本館右手の坂を下り裏手の大浴場に周る。坂下には湯治部の棟が並ぶ。 | |
大浴場に立寄り湯をした。「神経痛の湯」と「火山風呂(泡立っている)」がメインで、泥湯と湯滝、蒸し風呂、そして小さな露天風呂がある。背丈の高い頑丈な大湯屋が男女に二等分されている。 | ||
宿泊客も立寄り客も入浴前後に散歩できる。 | 自然研究路から旅館の方を見る。 | |
泥火山 | ||
網張温泉 休暇村岩手網張温泉 (あみはりおんせん) 岩手県岩手郡雫石町網張温泉 | ||
単純硫黄泉(硫化水素)、73℃。 立寄り¥500。 和銅年間(710)から湧き出している。露天風呂「見晴らしの湯」がある。すぐ近くに混浴露天風呂「仙女の湯」があるが大雨で入浴できなかった。 昭和38年(1963)に国民休暇村に指定された。昔(2〜30年前)来た時には木造の古びた宿だったように記憶している。スキー場も今ほど立派でなかった。現在の建物は5年ほど前にリニューアルしたと言っていた。 | ||
休暇村岩手網張温泉 網張温泉にはこの宿舎だけ。 | 前面にスキー場と岩手山山麓が広がる。岩手山の登山口もある。 | |
夏油温泉 元湯夏油 (げとうおんせん) 岩手県北上市和賀町岩崎新田1−2−2 | ||
含芒硝酸石膏食塩泉ほか、それぞれの湯船により異なる。。50〜60℃。 立寄り¥400 和賀川の支流、夏油川沿いにある。江戸時代の温泉番付けで東の大関に挙げられた。川沿いの露天風呂が最も夏油らしいが、内湯の「小天狗の湯」と「白猿の湯」も良い。 | ||
「元湯夏油」の正面 栗駒国定公園にある。建武元年(1334)に平家落人の末裔のマタギの発見とか、856年に慈覚大師が発見したとか。夏油は、アイヌ語の「グット・オ」、崖のある所とか。 | 昭和館は湯治宿。この奥を左に行くと上流側の露天風呂へ。右に行くと、温泉神社を経て、石灰華、焼石岳への登山道へ。 | |
石段を下れば、一番下流側に「真湯」と橋を渡って「目の湯」 | 「目の湯」は女性時間帯が多い。 | |
写真右の川沿いに「疝気の湯」がある。最も野趣があふれる。奥の「大湯」は夏油を代表する湯だが、いつも熱くて、入るのが難儀だ。「大湯」前から昭和館の方へ登る途中に「滝の湯」(終日女性専用)がある。 | 浴槽(目の湯)からの夏油川風景 | |
民営国民宿舎の「夏油山荘」は、今年から団体用となった。 | 「夏油山荘」の奥へ、5分ほど進むと洞窟風呂と小さな滝がある。洞窟風呂は正式には使用されていないが、蒸気のもうもうとする内部に入ることはできる。、 | |
夏油温泉から望む焼石岳に続く峰々。栗駒側から二日がかりで夏油に降りる登山道がある。 | 帰路、クマに遭遇!左コーナーを曲がった途端に、右側の少しの広場に黒いムシロのような物が動いた。止まってみると、クマがこちらを振り向いてから右の谷に降りていった。カメラを取り出したが間に合わなかった。つぶらな瞳を5m以内で見た。 | |
帰路、夏油スキー場に寄って見た。スキー場オープンの頃に2〜3度来たことがある。雄大なスキー場だった。スキー場が出来てから道路が見違えるほど広く良くなった。冬場の夏油は、スキー場の世界で、温泉は閉鎖・休業する。夏季のスキー場はパークゴルフ場となっている。夏油高原温泉(¥800(休憩料を含む))、レストランがある。最近クマが出没しゲレンデを駆ける、とも聞いた。 | ||
入畑ダム湖 前方は鞍掛森山か駒ケ岳か。夏油温泉はは山の右裏辺り。 | 夏油大橋まで戻ってきた。スキー場が見える。 | |
瀬美温泉 (せみおんせん) 北上市和賀町岩崎新田1地割128−2 | ||
弱アルカリ泉、35℃。 立寄り¥500。夏油への上り口にある。 | ||
本館から立寄り湯をする。 | 新館が左にある。 | |
入畑ダムのすぐ下に瀬美温泉がある。昔、スキーの帰りに泊ったことがあるが、随分と綺麗になった。清潔な内風呂のほかに、男女別の専用露天風呂、大パノラマの混浴露天風呂、長寿の湯などある。メタケイ酸を豊富に含むアルカリ泉質は、「美人の湯」として喧伝されている。 | ||