marie claire japon


『100人の〜』は、かなり前に読んだ記事がずっと記憶に残っていたようです。あっけなく見つかりました。「marie claire japon」中央公論社,1990.7

『100人の子供たちが列車を待っている』を見る者が捉えられるのは、自分がその教室に出席しえないことに対する狂おしいまでの嫉妬である。『ニュー・シネマ・パラダイス』に涙した者なら、この映画によって、その涙の醜さを改めて思い知らされるだろう。(p.389)
蓮實重彦「映画に目が眩んで」#49/太字部分:引用者

もともとこの号の特集が「映画の快楽」で、635本のガイド。「80年代の『洋画ベスト50』はこれだ!」なんていう対談を、淀川長治と蓮實重彦がやっています(あれー、淀川さんもそういう発言するんだーという発見あり)。「ジャンル別・映画ベスト50」の「サイレント映画」は、淀川さんが担当。最後の一文いいなあ。

ただしき道の50本となるやグリフィスから始まりクラレンス・ブラウンまでに少なくとも97本はただちにあげ得るでありましょう。ただしき映画史の道を踏み進むとなると、97本をさらに超すでありましょう。しかし、ここでは涙を呑んで55本に厳選しました。粋をきわめた"好きな55本"。小学二年生からひとりで活動写真に通いつめ、「パンにラムネはいかが」「一等さぁん、ごあんなぁい」の声を聞き、便所の臭い嗅ぎながらユーモレスクの伴奏で見た、あの懐かしきゴミの空気いっぱいの、しかも超満員の活動写真館。学校の授業をほうり出して、いささかの悔恨に責められつつも、やがてその活動の面白さに吸いこまれ、笑いころげ、涙した懐かしき思い出を、ここに思い出すままに勝手に書かせてもらった。これはベスト55本のメモに非ず、わがインスピレイション、その天来の声のメモとこそ申したし。(p.150)

その他の記事。初めて目を通したのかもしれない。当時は全然わからなかった記事の、結構な豪華さが楽しい。

小川洋子の『シュガータイム』(こんな手紙をもらったら、もうなす術はない)の連載。田村隆一の詩に挿画が山本容子。金井美恵子も『100人の子供たちが〜』についての映画評を書いている。武田百合子の『日日雑記』の連載。その娘、武田花の写真集の評(埴谷雄高)もある。クリステヴァの初の小説をうまいことフォローした記事があったかと思うと、箱根の「オー・ミラドー」のベタ褒め記事。


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