静岡新聞 総合(全県版)(04.06.11)
「青春の”心の軌跡”小説に」ー「冑佛」との出合い交えー
内容一覧
江戸時代に幕府直轄の山林を管理する「御林守」を務めていた
榛原郡金谷町大代の「河村家」第十五代当主、
河村隆夫さん(53)が初めての自伝小説「蒼天のクオリア」を自費出版した。
大学時代に文学を志したこと、
金谷町の実家で「冑佛(かぶとぼとけ)」の研究を始めるにいたった経緯などをつづった。
河村さんは「自信をなくしている団塊の世代に読んでもらえれば」と話している。
河村さんは当初、「冑佛」の研究について
ドキュメンタリー風にまとめた書籍の出版を計画していた。
原稿を持ち込んだ東京の出版社編集長から
「冒頭の部分の青春時代の物語を中心に、小説のように書いてみたら」
と勧められたのをきっかけに執筆に取り組んだ。
主人公の河村さんの名前を「沢村隆史」とするなど
名前や設定の一部を変えた以外は原則として実話に基づく。
少年時代の思い出、北海道大在学中に地元の文芸雑誌で高い評価を受けたこと、
金谷町の名家「河村家」に戻り「冑佛」に出会ったことなどを淡々と書きつづった。
河村さんは「大学時代は若いころ特有の思い上がりもあった。
それをたしなめた恩師の言葉や、
当時注目する人が全国にだれ一人としていなかった冑佛への思いなど、
私の心の軌跡を描いた」と語り、冑佛の研究を中心とした第二弾の執筆も進めている。
「蒼天のクオリア」は静岡新聞社刊、税込み八百円。
冑佛
昔、戦国武将らが戦場に赴く際に兜(かぶと)の中に納めていたとされる
高さ数センチ程度の小さな仏。
髻(もとどり)の中に入れたり、前立てにつけるものもあったという
平成五年、河村家に代々伝わる冑佛に当主の河村隆夫さんが着目し、
各地の歴史研究者に問い合わせたのを機に、存在が知られるようになった。