この灼熱こそがインドの大地・・・・・・そう、タンドーリとは過酷で空虚な世界に住むインド人の宇宙観を表す曼荼羅そのものなのさ。




インドといえば、象である。
それも、白象。モンゴルといえば蒼狼であるのと同じく、インドの象徴的な生き物は白象である。
だから、暗闇の中、俺の視界に浮かび上がった白い象の感動を、諸君らも是非想像していただきたい。
ああ、やはりインドはあったのだ、と。この方面で間違いなかったのだ、と。
つまり、これはスペインから西回りでついに陸地にたどり着き、西インド諸島を発見したコロンブスと全く同じ感想である。彼の、つらい旅路の報われた感動を、俺もまた共感できるのだ。
ただし、コロンブスよりこちらの方がランクが上である。
結局彼の見たものはカリブ海に浮かぶ島であり、死ぬまで彼がインドと信じ続けたものはアメリカ大陸の一部であったから・・・つまり、彼はニセモノのインドをつかまされたのである。
そして、俺たちは・・・またもやホンモノのインドを発見したッッッ!!


カレー、喰いたいね。インドカレー。
ふじみ野駅近くに馴染みのカレー屋があると、ブルースが言う。
カレーいいね、カレー。俺はもちろんカレー好きさ。
ブルースの車で送ってもらっていた俺は、即座に反応した。
カレーって結構、問答無用のトコ無い?
俺は、ある。
だが、なかなか見つからないカレー屋。馴染みなのに。
小学生のときに来たんだ。親父が急にインドカレー喰いたいとか言い出してな・・・
そーいうのは、馴染みとは言わん!
・・・カレーってほんと急に食いたくなるよな。俺の場合は夜中になることが多いんだけど。
抗議を無視して強引にカレー話を続けるブルース。そうなると、俺もカレー好きだからついつい釣られてしまうわけだ。他所のカレーの匂いに釣られて食べたくなるよね、とか。
ホント、カレーって問答無用。
そうこうするうちに、駐車場発見。「HATTI」と看板する駐車場。
その前に、ライトアップされたモダンな建物・・・入ろうとして気づいた。そこはマンションであった。
どこ?カレー屋??
明らかにマンション。あたかもその建物に付随しているかのような駐車スペースは、確かにカレー屋の専用駐車場。
謎が謎を読んだその時、肉弾頭の視力1.5の相貌が勝利を捕らえた。
「アレだッ!アレが・・・その、アレだッッ!!」
道路を挟んだ斜め向かい、暗闇にぼんやりと浮かびがる蜃気楼のような影が、アレ・・・もといカレーであった。

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