「さて、夕飯は・・・・・・・・(ニヤリ)うどん以外を!」
な、なに〜〜〜〜!!
ブルースのその一言に、俺は色めきたった!
朝昼晩とうどんを喰らい、間食、夜食に食してもなお可なりと、そう誓ったのを忘れたのかと、
うどんの誓いを忘れたのかと、俺は言いたかった。
きっと、ふなっも同じ気持ちであったろうよ。
あったに決まっている!おれはそう信じる。
「誓い?・・知らんなァ〜〜」
ブルースの、耳まで裂けた口が、そう言っていやらしく歪んだ。
そうか、それが大人のやり方か!?
「でも、考えても見ろよ。ココはドコだ?」
うどんの国だろ!讃岐だろ!・・・・・・ここ、四国香川は讃岐うどんの国だって言ってるだろ!
「四国と言えば、瀬戸内海。温暖な、豊富な漁場を有する海国に来て、魚を喰わずに帰る法があるか?・・・・あるのか、肉弾頭よ!!」
な、なんと・・・・・・
たった一言で俺は折伏されてしまった。
そう、四国に来たら、瀬戸内海の魚だ。

しかし!宿の予約などは取っていない。旅館の海幸料理に舌鼓を打つつもりなど、毛頭ないのは3人の心。
そんな宿泊代があるのなら、その分食費に回すのが食べバカ流だ。
一夜を凌ぐなら、サウナかカプセルホテルが安上がり。おばあちゃんのカーナビが指し示すお風呂のマークを追って、俺たちは一路高松へ。
四国随一のこの都会ならば、俺たちに枕を提供してくれるはず!
その甘い気持ちが、のちのちうどんツアーに暗い影を落とすことになるとは・・・・・・いやいや、まずは初日夕飯の話であった。

なんとかやっとこ見つけ出したサウナの駐車場におばあちゃんの車を止め、さて、夕飯。しかし、もう8時を回る。早寝の地方都市にあって、この時間からの店探しはハンディキャップか?
そんな俺たちの前に、突然現れた看板。まだ、全然捜し歩いてもいないのによ?
サラリーマン割烹!とな?
脱サラした親父が道楽でやってる店か?それとも、時節柄、リストラ中年の起死回生のリトライか?
いやいや、重要なのはそんなことではないんだよ。
「魚屋直営店」「瀬戸内海のとれピチ鮮魚」
これ!これだよ、これ!
これなんだよ、求めていたものは!
なんのために、わざわざ瀬戸大橋を渡った?俺たちは?
瀬戸内海を食べつくすためじゃあないか!最初ッからそう決まっていたんだよ。そうとも。
しかし、客がいない。貸しきり状態。大丈夫かなかな、この店。
「あと1時間くらいなんですが・・・」
ああ、なるほど。大丈夫ですよ。台北では、45分で客家料理の真実に迫った俺たちだ。1時間ならおつりが来らァよ。
・・・・旨かった。
お造り。新鮮な海の幸が、たまりませんよ。いろいろと、料理もイカしています。が、板前さんはなんとホンの1ヶ月程度の腕前。
元は魚を売っていたのが、人事異動で何故か作る人に。これぞ、サラリーマン割烹の意味なのだろうか?
実家も魚屋と言っていたから、料理は新米でも、さすがに魚の扱いは年季が違う。

楽しい饗宴も、やがて閉店間際。よし、どんぶりで締めるか。
「俺、ウニ丼」
「俺はいくら丼ね」
え?ええ?
ブルースとふなっに、海鮮の華、ウニといくら行かれちまいました。俺が迷ってる間に!
でも、同じ物頼むのもバカらしい。しかし、残るは・・・・うな丼のみ。
うな丼か・・・決して嫌いじゃないけど、でも、わざわざこんなとこで頼むモンじゃあないな。
とはいえ、結局うな丼を頼む俺。
目の前で焼いてくれるのは旨そうだが、ウニといくらは先に出てきて俺を羨ましがらせる。
ええい、大げさに喜ぶな!それがそんなに旨いことなど判っておるわ。
そして、ようやくうなぎの焼き上がり。
旨い!
すッげえぷりぷりしてて、口ン中で弾けるような感触。濃厚な脂の旨み!
うなぎって、こんなにおいしいものだったのか?
絶妙の焼き加減です。旨いです。板前歴浅いなんてウソでしょう!え?ホント?
関東のうなぎは背中から裂いて、白焼きした後一回蒸して、もう一回タレつけて焼くといいます。
対して、西日本のうなぎは腹から開いて、2回焼くだけ。蒸しません。
俺、この蒸さない蒲焼喰ったの初めてだから、これがこの店の旨さなのか、この調理法としては当たり前の味なのか判断できないんだけど、コレだけは言える。
折角のぷりぷり感と濃厚な脂を、わざわざ蒸して台無しにするのは間違っている!
西日本の、腹開き文化圏の皆さん。そう思いますよね?



次回はうどん編クライマックス
ついに俺たちが「行列に並ぶな!」の禁を破るよ!

次へ

戻る