「紹興酒のランクはどれにする?」
人和園の親父は三本の指を立てる。
「1番イイの・・・2番目・・・3番目」
「よーし、じゃあ思いきって、一番イイ酒だッッ!!」
「ダメダメダメ。アンタ達にはまだ早いよ。2番目のにしておきなさい」
・・・って、じゃあ聞くなよ!
それにしても、台北の店ではボラれたという記憶がない。高いものを喰わせようとしないのだ。
2人で水餃子一皿と飯とスープを頼んだら、餃子が2皿も来てしまい、意思の疎通が取れなかったのか?と断ろうとしたら「サービスだよ」といただいてしまったこともあった。
そして、雲南のカブのサラダやら、チーズっぽい風味の臭豆腐やら、いろいろ「雲南っぽいメニュー」を頼んだ挙句に辿りついたのが、「シャブシャブ麺」であった。

まず、出てきたのは湯(スープ)であった。
鶏のスープ。
「す・・・透き通っているッッ!!」
その透明度はバイカル湖すらも陵駕していた!そのうえ、あたりにはなんとも言えぬ「鶏!!」な馨りが立ち込める。純粋なる鶏の馨り。鶏スープとはかくあるべきか・・・
「ちょっと待った。まだ飲まないで」
親父は超薄切りの豚肉を持って現われた。
あ・・・あ・・・入れる!入れてしまう!純粋なる鶏スープの風味が豚の強烈な匂いに侵されるッッ!!!!
ふや〜〜〜ん・・・・・・
純粋なる鶏の馨りに、優しく、それでいて力強い母の愛のような豚の芳香が加わった。
知らなかったんだ。豚と鶏がこんなに仲が良かったなんて。
ちっとも邪魔しあっていない。お互いのいいところを引き出し合って、1+1は100にも200にもなるとはこのことかッッ!?
「ちょっと待った。まだ飲まないで」
予想通りにまたもや親父は厨房に消えた。
「これ以上、ガマンなどできるかァ!!」
店員達の目を盗み、肉弾頭は鶏+豚=∞のスープを口に含んだ。
ふや〜〜〜ん・・・・・・
ホンの一口。ただそれだけだ。ジャブ一発でKOだ。
そして現われた具は、湯葉や青菜など上品に。そして、麺はたまご麺らしき薄黄色の麺。
旨かった!!
1999年2月の台北滞在で間違い無くナンバー1料理である!

そして、数ヶ月。ブルースは日本に雲南料理の店を発見した。
日本に??
店の名は御膳房
しゃぶしゃぶ麺の名称が「過橋米線」らしいことも判った。
早速喰いに行った。
昼に行ったので、飯自体はそれほど「雲南っぽい」ものでなく、普通の中華的なものをいただいたのだが、最後はやはり「過橋米線」でシメだ。

鶏スープ。しゃぶしゃぶ。麺様ご入湯。そして、ここでは海鮮が具である。
「あ、ウマイ」
「確かにウマイ」
ちょっとサッパリめ。麺は米粉。これはこれで間違い無く旨いんだが・・・
「俺は、本当の雲南が食べたいんだよ・・・」
ブルースの目に光るものがあった。
しかし、ここで彼がいう「本当の雲南」とは、雲南省のことではない。台北のことである。
全く失礼な奴だ。

続く

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