美也樹


早朝、埼玉を発った俺たちは午前のうちに富士吉田市に到着した。
意外と近いぞ、山梨県。
さて、店の開き始める時間から早速食べまくり。
最初は「美也樹」インターネットとカーナビで適当に探した店に適当に入りまくった、最初の一店目にしては、実にグッドチョイスしたことがやがて明らかになってくるぞ。




上がブルースの頼んだ温つけ麺。下が俺の頼んだ冷やしたぬきだ。
記念すべき一口目。ほぼ同時に噛み締めた二つの口から同じ感想が漏れた。
か・・・・・硬い!! もしも予備知識無しで喰っていたら、厨房に飛び込んでいたかもしれない。
「おばちゃん!コレ、生煮え!!」と。
コシがあるとか、弾力があるとか、そんなモンじゃあない。
とにかく硬い。判っているのに硬い。しかし、
火は確かに通っている。生粉の臭いはしない。中心まで圧縮された粉の歯応えが均質に詰まっているのだ。
驚愕、動揺を経て、しかし数口目からはなんだか面白くなってくるから不思議だ。
そして、半分くらいを過ぎた頃、なんだか味が物足りなくなり始めた。
硬くてつゆの染み込みを拒絶する吉田うどんボディでは、徐々に味が足りなくなる感がある。

「コレつけると旨いですよ」


硬い、硬い、信じられぬ、と余所者丸出しではしゃぐ俺らに、隣の席の地元民らしいアンちゃんからアドバイス。
これは、薬味?
ひと垂らしで濃厚な味と香りがうどんに宿った。
するするとうどんが入りだす。吉田うどんとは、この薬味を入れて初めて完成品なのだということが良くわかった。
唐辛子味噌にゴマや山椒を練りこんだ“すりダネ”というらしい。各店のオリジナルがあり、それぞれに個性を出している。
この後入って店ごとにいろいろあって実に面白かった。ビジュアル的にはほぼおんなじなので他の店のすりダネは写真を撮っていないが、基本的にほとんどの店にあると思っていただきたい。


美也川


2店目の紹介は、パス。あんまりおいしくなかったから。わざわざ店名出すのも悪いから、3店目、美也川に移る。
美也樹と名前似てるなあと思ったら、関係者らしい。
味も近い。




より冷たい方が吉田うどんらしい硬さを堪能できると思い至ったブルースが上の冷やしわかめ、ならばもう一つの冷うどん、と俺が選んだ下の冷やし納豆。
むう、やはり硬く歯を押し返す力は美也樹と同じ、外来者を驚かす食感。
しかし、そう何度も同じ手で騙される俺たちじゃあない。
じっくり堪能。そう言えば、吉田うどんの具には、結構当たり前のように茹でキャベツが入っていることが多い。固すぎる麺の食感との対比のためだろうか?それにしても、火を通したキャベツは甘いので、これが乗っていると心和むことは間違いない。
あとで調べたところによると、やはり、この美也樹、美也川系列あたりが最もオーソドックスな吉田うどんテイストの人気店らしい。
始まりでしっかりと基礎を押さえてしまう幸運。これは讃岐うどん編でのいきいきうどんの時にも経験してる。
しかし、具材がさっぱりしているせいか?美也樹にくらべて粉本来のコクが少し薄い気がする。
よく言えば、さっぱり、だが、
いやいや、しかし、やはりここにもありますよ。すりダネ。
ゴマが強めのコクの濃いタネ。物足りなさを吹き飛ばしてくれました。
ホンの2店較べるだけで、自分の店のうどんに相性のいいオリジナルブレンドのすりダネを作っていると言うコトが実感できた僥倖。


みやした


昼飯時もそろそろ終り、胃の容積も限界に近づいて来たので、これが今日最後と決めてかかった、4店目「みやした」
この店は、中の作りが面白い。下を見てくれ。


鰻の寝床のように伸びる薄暗い店内。左側に座布団が並んでいるのが見ていただけるだろうか?
その向こうが、カウンター、そして厨房なのである。
カウンター座敷?
そう。畳短辺の幅の座敷に座って、カウンターから直接うどんが出てくるのである。
カウンターの下には週刊マガジン・・・・20世紀の。
これはレトロ風味のための小道具なのか?謎は謎を呼ぶのだった・・・・・





さて、今回は二人揃ってつけ麺を頼む。なんというか、そろそろさっぱりと済ませたい、という気持ちもなきにしもあらず。
アップの方を良く眺めて欲しい。
このあたりまでくると、見た目で少し判るようになってくるから不思議だ。
あんまり、ゴツゴツした印象がない。
はたして、それまでの吉田うどん然とした店よりも、ふんわりとした食感で落ち着く味だ。
もちろん、他の地方のうどんに較べれば硬いのは確かなのだが、もう少しコシがあって、つるっと入る感じ。
いままでのボリュームうどんに較べて、“おやつうどん”的だね、とブルースは言う。


こうして、一日目が終わりを告げた。まずは吉田うどんらしさを実感する、という意味では成功と言っていいだろう。続きは「2日目」の項を参照いただきたい。

ちなみに、山中の宿に飛び込みで安く泊まれた俺たちは、温泉に浸かって英気を養った。
この温泉が「バイタル温泉」ミネラル、酵素を含んだ鉱石を風呂桶内壁に散りばめた人工温泉である!と堂々と謳っている度量に感服した。
ウソこいて温泉の素を使っている奴らにも見習って欲しいものだ。

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