魯肉飯



魯肉飯との出会いは、1999年、俺が初めて台北に行った時のことだ。

台北ドラゴンシリーズ(2001)刀削麺参照
ただ、当たり前のようにうまい、そぼろ肉のぶっかけ飯、と表記されている。
水餃子と魚丸のスープに驚きまくっている俺たち。飯に関してはそれほど注意を払わず、そこにあるのが当然だと言わんがばかりに、何の感謝もせずにうまい、うまい、とぶっかけ飯を喰っていた。
ただ、たまに思い出していた。その、飯を。
「うまかったね、あの“ろにくめし”」
「そうそう、あのろにくめし」
当時はルロウハンという読みすらも知らなかったのだ。
頼んだときは、“魯”の字に魚の部首が入っているから魚ものだと思っていたくらいだ。
“魯”は魯山人の“魯”、そして魯迅の“魯”!!
漢字の意味は「粗末なもの」だそうだ。くず肉を角煮にして飯にぶっかけて出したのが始まりらしい。
え!?角煮??
そぼろ肉だろう?
疑問が残った。しかし、まだ当時、飯を喰うときに写真を撮ろうなどという習慣の無い俺だ。証拠もないし、第一、あのときは俺もブルースも飢えていた。
砂漠に蜃気楼でも見ようかというほどにうまい飯に飢えてまともな精神状態じゃあなかった。
あれは、幻の飯だったのか・・・・・あの旨さは寂しい俺たちの心が生んだ幻影だったのか!?

離れるほどに募る思い。
俺は魯肉飯を忘れられなくなった。新宿の魯肉飯屋にも行った。八角と甘い中華醤油で煮込んだ旨い豚角煮の細切りが乗った、旨味の濃いとても美味しい飯だった。
だが、それはおばちゃんの店で食ったあの飯じゃないんだ。
魯肉飯とは違う何かなの?

2回目の出会いは2003年のことだった。

2003年台北


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