一つ、こちら岸は敵地のど真ん中だ。
二つ、もう橋はない。
そして三つ。我々にはこの2本の足がある!

「ナバロンの嵐」より
(例によってうろ覚え引用)

さて、足を使ってさ迷い歩き、食欲と感性だけによって店を探したりしなくなって、大分経つ。
これで食べまくりバカと呼べるのだろうか?
もちろん、呼べる。
目的と手段を取り違えてはいけない。歩くことではなく、未知のおいしさに出会うことが目的なのだ。
ガイドを見たりネットで伝聞を集めたりしたほうが見つかりやすいものを食べるのならば、その手段を取れば良い。だが、

歩かなければ手に入らないというものも、確かにあるのだ。
今日はその話をしよう。
俺とブルースはその日、新宿駅西口に馬刺しを食べに集まったハズだった……


発端はたしか、ナツカの「馬刺し食べたことない」宣言だったように思う。
ほう、珍しいねえ、勿体無いねえ、馬刺し、あんなに旨いのに。
じゃあ食べに行こうか。どうせなら本場の味が良いよね。なら、九州だ、決まった!

今まで機会がありそうで無くて食べ損ねていた九州料理へのリベンジを兼ねて、周到に下調べし、新宿の九州料理を食べに行った。
誤算は2つ。
ナツカが来なかったことと、俺もブルースも九州料理店の住所を控えてこなかったことだ。
まあ、いい。2人だし、なんか普通に旨いモンでも喰って帰るか?ああ、そうしよう。
てなことになった。
土曜日の気安さ。無理に急いで店を探すこたァねえよ、と軽い気持ちで歩き出せば、それはすなわち無間地獄だ。
なんでもいいよ、とは、なんでも駄目だと言うことだ。満たすべき勝利条件を定めずに歩き出した俺たちは、
……ああ!俺たちは!!
またもや暗黒地帯に嵌り込んだ。ココはどこだ!?
薄暗い、工事中の歩道をとぼとぼと行く。
いいや、とぼとぼとなんて歩かない。少なくとも歩く早さにならば自信があるのだ。この俺たち。
彼方、天を突く摩天楼が見える。まだ新宿をそうは離れたわけじゃあない。
ぐるぐる歩き回って方向感覚を見失っただけなのだ。
経験が教えてくれるのだ。いかに、何がないようであっても、歩き続ければ次ぎの街には着く。
そして、人が住むからには旨い飯屋は必ず存在するものなのだ。
日本の場合、海や山にぶつからない限りは、それは終わりではない。

ああ、そして、友よ。

[中 野]

ああ、やはり。ココは隣町。こんなところまで来てしまったというべきか。
1時間半歩いたわりにはたいした距離を移動できなかったとでも言うべきなのだろうか?
大した期待は出来ないな。「中野」と言う街には美食の匂いがしない。
そう、俺たちは思ってしまっていた。
その瞬間までは。




どわっ!
ル、ル、ルーマニア!?


ルーマニア

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