第6話「嵐呼ぶ転校生」

 転校生、檜垣竜は学園に嵐を呼んだ。
 学園のアイドル、豪徳遥に何故か世話を焼かれちゃう竜に嫉妬した男子生徒が竜を呼出した。
「校舎裏のジェラシックワールドによーこそ。ミスター色男〜」
 10人掛かりにぼてくり回されても、一切の抵抗をしない竜。コイツは、腰抜けなのか〜?
 数学の流教諭が止めに入る。いつも生徒に舐められているダメ教師だが、
「おまえ、先刻のパンチは一発も効いてないな。・・・見りゃあ判る。鍛え方が違うのはな・・・一体何者だ?」
 意外と鋭いこと言うと思ったら、なんだ、コイツ流北斗じゃん。なるほど、普段は教師の姿で世を忍んでいるのか。
 その時、校庭から遥の悲鳴が!駆けつけた2人の前で、運動部の猛者たちに襲われる遥。
 そして立ちはだかる竜!しかし多勢に無勢だ。
「この人たち、正気じゃない。きっと地獄獣絡みだよ。一人でも、逃げて」「そんなことできるか!俺はこんな時のために・・・」
 言葉をグッと呑み込む竜。遥のボディーガードとして転校したことは本人には内緒だという玄十の言葉を思い出したのだ。そう、この竜は、檜垣玄十の息子だったのだ。
「ひぃぃぃぃ!」「あ、センセイ・・・」
 悲鳴を上げて校舎に逃げ込む流北斗。しかし、校舎に入るなり、フラッシュに転身!一陣の疾風と化して4階建ての屋上まで、2秒半で駆け上がる。
 屋上には幽玄道士と迫撃ジャンクがいた。高校生のありあまるエネルギーを悪用するために運動部の生徒たちを幽玄道士の幻術で洗脳していて、遥を見つけたという次第だ。
 一方、玄十の戒めを守って、一般人には幻術も殺人技も使えない竜は、限界に近づいていたが、メガトンとブレードが助けに入る。安心して気絶する竜。
 屋上では、ジャンクの肉薄攻撃と幽玄の精神攻撃に苦しめられるフラッシュだが、屋上の鉄扉を吹き飛ばしてナックル参上!
 激突爆炎拳で迫撃ジャンクをぶち抜いて、勢い余ってフェンスを突き破って落ちていってしまった。
 1対1ならば、幽玄道士如き、目では無い。幻影閃光脚の神速の連撃が、はるか宙天の彼方まで幽玄道士を蹴りあげ、破壊した!
 その後、カレーショップでファイアースピリッツだけが出動しなかったワケを玄十に問い詰める北斗。
 檜垣と暗闇街道は互角の力を持っており、どちらか不用意に動いた方が裏をかかれる。お互い竦みあって動けないのだ、と説明されるが・・・何故こいつらは敵でありながらここまでお互いを理解し尽くしているのだ・・・新たなる疑問の湧き上がる北斗だが、そこに竜と遥が帰ってきてしまったので、普段の姿を生徒に見せるわけにはいかず、顔を隠してその場を退散するのであった。


第7話「見参!!地獄の狩人」

 戦闘ロボ軍団を引き連れた地獄獣アポロキッドの人狩りの現場に急行したファイアーメガトンは、危機に陥る。
 神博士オリジナルのブースタープラントを背面から腕にかけて埋め込むように装着したキッドはサイバーアポロとなり、メガトンを陵駕する膂力を発揮しだしたのだ。
「パワーだけの貴様がそのパワーで負けたら、あとは何も残らない。ただの木偶の棒だ」「確かにただのデクノボーかもしれない・・・だがな!」「なに?」「タダより高いものは無いってところを見せてやるぜ〜〜!」
 指四つの姿勢のまま、グルグルと回転しだすメガトン。振りまわされたアポロの足が遠心力で地面を離れた刹那!
「骨端!微塵!ン投げ〜〜〜〜〜〜〜!!」
 大車輪で5,6回、宙を舞ったアポロが頭から地面に突き刺さり大爆発!ちょっとヒヤヒヤしたが、終わってみればメガトンの圧勝だ〜  メガトンに殺到する雑魚ロボ軍団。しかし、竜巻に吸い上げられて吹き飛ばされて行く。何事?
 ボロを纏い、包帯で顔を隠した謎の男が、片手の一振りで竜巻を次々と作りながら近づいてくる。
「メガトンとやら・・・勝負してもらおうか」「戦う理由がない!」「あるさ・・・“無敵”なんぞと名のってる奴らをみると、吐き気がするほど腹が立つのさ」
 有無を言わさぬ竜巻が体を吸い上げる。メガトンの怪力を持ってしても、アメリカでは家すらも吸い上げるトルネードだ!耐えきれるモンじゃない!!
 回転して方向を見失ったメガトンの背後には謎の男が、フルネルソンを決めていた。はるか上空からのドラゴンスープレックス逆落とし!名づけて「飛竜!竜巻落し!」ドシャァァァ!!
「ふふ、死なない程度に手加減したが、一生ベッドの上で無敵を名乗ったことを後悔するがいい。そして檜垣に伝えろ。いずれ貴様の番が来るとな」
 突如として現われた謎の強者ヘルハンター。何故無敵戦隊を目の仇にするのか?檜垣との関係は?
・・・そんなことは一切考えず太志の病室を飛び出す城太郎。「その野郎!俺が叩きのめしてやる」
 後を追おうとした晶を檜垣が止める。「待て。ヘルハンターは暗闇街道の味方でもない。あえて闘ってワザワザ戦力ダウンをするのは得策ではない」
「なら何故城太郎を止めない?」北斗は珍しく食ってかかる「第一、なんであんたは暗闇やハンターをそんなによく知ってるんだよ」
「止めて止まるようなら、雷城太郎じゃァないさ。それにな、自分より強い奴と闘ったくらいで再起不能になるような奴なら、無敵戦隊を名乗る資格はないぜ」と、もう一つの質問は黙殺だ。
「くそ・・・アンタがそれだから、とことん信じ抜くなんてことはできねぇんだよ」
 竜巻が巻き起こり、がっちりと飛竜竜巻落しが決まっている。あとは落とすだけだ!
「くそっ!喰らえ!喰らえ!喰らえ!喰らえ!」
 背後に向かって叩き込むファイアーナックルの後頭部が、ヘルハンターの顔面を朱に染めた。地面が迫るのも介せず、ただ打ち込み続けるのみ。
「貴様、恐ろしくはないのか」「怖ェよ!負けるのが怖ェよ!てめえを無傷でウチに帰すのが、死ぬほど怖ェんだよ!!」「クレイジーだぜ」
 それ以上のケガを避け、ナックルを投げ落として着地したハンター。激突の砂煙が収まったときには・・・
 病院にいるはずのメガトンが、ナックルを受けとめて、そこにいた!

第8話「狼は狼を呼ぶ」

「飛竜!竜巻落としを喰らって立っている男を見るのは初めてだよ・・・。だが、これでお終いだッ!」
 再び、天まで巻き上がる竜巻が満身創痍の2人を襲う。逃げ場ナシ!これが、これが絶対絶命ってヤツか?・・・その時!
「激流キーック!」
 雪崩れ落ちる瀑布の飛沫の如く、数十の影が上空からヘルハンターに殺到する。かろうじて十文字受けで凌ぎ切ったハンターの前に、影は一人に集約した。・・・分身の術か!?
 その能力、そしてメタリックに輝く緑のスーツ。どう見てもこいつはヘルファイアーだ。
「天地返し!!」
 間髪入れず、幻術天地返しでヘルハンターを混乱させた謎の助っ人は、既に姿なく、その隙に逃げおおせた城太郎と太志も、その正体に気を巡らすのだ。天地返しは檜垣の技のはず、と。

 そのころ、流北斗は飛騨山中にあった。檜垣玄十が修験者として修行した霊場がそこであると、豪徳大蔵の資料にあったのを発見したからだ。
 昼なお暗い幽玄の世界を彷徨う北斗の前に、猪に追われて少年が逃げ込んでくる。
 必殺の蹴りで迎え撃つ北斗だが、もう一人藪から飛び出した男の蹴りが交錯し、猪は堪らず絶命する。
 そいつはルポライター犬上と名乗る。超二枚目だ。ニヒルな態度で、ちょっと北斗と被ってるよなぁ。
 少年の村に連れて行かれた北斗は、民間伝承の研究家と偽り、古老の話を聞く。犬上も一緒に。
 この集落はもともと、飛騨の山神を祭る神事のためにはるか昔に作られたという。しかしこれが主体性の無い神で、何百年に一度かは権力の亡者みたいな奴らに「食べられて」は、その力を悪用されたと言う。
 15,6年前にも一度、そうなりかけたが、『無敵3人衆』と名乗る修験者が現われて、退治したという。
 『無敵』の名が気になる北斗は、深夜抜け出し、古老に禁止された霊場跡に向かう。
 いつの間にやら同行している犬上に同じ臭いを感じた北斗。「俺と同じタイプの男?・・・いや、同じヤツなどいない。どちらかが、偽りの無頼・・・」
 突然、怪物に襲われる2人。地獄獣に似ているが、しかし、地獄獣にも多少はあった人間臭さがない。完全なる魔物の風だ。
 応戦するが、いかんせん、生身で勝てる相手ではない。犬上からは見られないようにファイアーフラッシュに転身した北斗は「幻影閃光蹴り」で魔物を撃破する。
 が、もう一体の魔物が大技を出して隙だらけのフラッシュを襲う。ヤバイ!
「絶!天狼抜刀牙」大回転しながら体当たりした鋭い牙が魔物を真っ二つに切り裂いた。
 なんと、フラッシュを助けたのは、地獄獣13人衆のトップ、金狼であった。
「いいのかい。こんなところで俺を助けちまって」「我々が決着をつけるのは、もっと別の場所だ・・・」
 金狼も暗闇街道を信用しきれていないのだと、北斗には判った。奇妙な友情があった。しかし、いつか必ず闘い、殺しあうことすら了解している友情が!
「いずれ会おう」「ああ、楽しみにしているぜ」

第9話「登場!!悪夢戦隊」

 ついに檜垣玄十が動く。他のメンバーには禁足を命じ、己一人で暗闇街道とヘルハンターに話をつけに行くという。それは何事かと、追跡を提案する流北斗だが、
「一度命を預けたからには、例え殺されても疑うことはしない」と轟太志。
 無言で首を振る豪徳晶。
 意外なことに、普段一番仲の悪い雷城太郎が行動を共にするという。
 自分たちの知らないヘルファイアーの存在が、檜垣への不信感を芽生えさせたのだ。
 深夜の新宿オフィス街を往く檜垣玄十。そして、闇より溶け出すように暗闇街道出現。風を巻いて現われるヘルハンター。
「正義を思い出させてやるぜ」「人間の身で正義だの無敵だのとしゃらくさい」「俺はおまえら2人に復讐するために生きてきた」
 3人を中心に空間が歪んだ。城太郎と北斗も足場を失って転げ出た。地獄獣も3人。赤毛鬼、無念和尚、狛犬が転げ出てきた。
 暗闇の助太刀に駆けつける地獄獣。そうはさせじと城太郎、北斗。
 しかし、全員辿り着けない。3人を中心に竜巻が吹き荒れ、幻術が熱量を持って空間を沸騰させる。
 既に余人の入れぬ次元の闘いが始まっているのだ。しかし、3人は3すくみにあってその異常な空間の中に微動だにしない。恐るべし!これが無敵三人衆の世界!!
 その外ではしかたなく、地獄獣対ナックル、フラッシュの闘いが・・・
 なに〜?地獄獣が転身した〜〜〜!!
 「グフフ、悪夢戦隊、見参」
 まさに悪夢のような、不気味で強烈なフォルム。これが、これが悪夢戦隊。
 確かに、ファイアーエンジンの発明者が寝返ったのだから、あり得るべき事態ではあったが。
「地獄獣のパワーとファイアーエンジンのパワーが一体化したのだ。貴様等など敵ではない!」
 高らかに笑う悪夢戦隊。勝ち目はあるのか?
 何度もアスファルトを舐める城太郎。変幻の速度を持つフラッシュならばともかく、パワー押しのナックルが勝てるあいてではない。
「ヤメロ!今の俺たちは生身で地獄獣と闘っているようなものだ!正面からでは勝ち目は無いぞ」
北斗の忠告にも、
「伊達に無敵戦隊名乗ってるんじゃねえや!素手で地獄獣くらい倒して見せらァ!!」
 と、転身を解く城太郎!!おい!どーすんだ?
「やけになったか?それとも、勝ち目でもあるのか」やっぱり地獄獣も驚いてる。
「勝ち目なんてあって、ケンカやるかよっっ!負けそうなのを勝つからカッコいいんだろがっっ!!」
 ボッコボコ、血まみれの城太郎。何故生きてるのか不思議なくらい。
 その時、三人衆が形作る異常空間に基礎を打ち崩されたのか、高層ビルが一つ、倒れてきた。
 大混乱に、それぞれの決着はウヤムヤになった。
 城太郎、北斗を連れて脱出に成功した檜垣は、ついに全てを明かすことを北斗に約束するのであった。


第10話「地上最強の三人」

 ほとんど死に掛けの城太郎。普段の余裕も見せず、青息吐息の北斗。
 説明を受けるまでも無く、悪夢戦隊の脅威をヒシヒシと感じざるを得ない太志と晶であるが・・・
「まだ手出しはしてこないようだな」檜垣の問に頷く太志。なに?なんのこと?
「幻術、影日輪!」
 おおっ!闇を照らす一瞬の輝きが、地面に影を染め上げた。しかし、本体は存在しない。影のみとは奇怪な・・・
「ククク・・・透明なはずの俺に影を生じさせるとは・・・やるな。さすがファイアースピリッツ」
 なんと、コスモ嵐がアジト前を張っていたとは!檜垣が太志たちに禁足を命じたのは敵の襲撃に備えてのことだったんだな!!
「丁度いい。悪夢戦隊との戦力差など存在しないということを、今証明しておこう」
 転身もせずに、生身でコスモに歩み寄る檜垣。
「舐めるなよ、人間め」膨張し、トゲ蔓を弾けさせるコスモを、次の刹那、百人の檜垣玄十が取り囲んだ!!
「迫撃!!夢幻掌」全ての玄十が、秒間百発の掌底打ちを放ち続ける。勝負は1秒でついた。一万発の打撃を受けて、コスモの原型はすでになかた。
「つ、強ぇえ・・・・・・」
「生身でも地獄獣などこんなものだ。こちらが転身できれば、悪夢戦隊などおつりがくるぐらいだぞ」
「な、何言ってるんだ・・・悔しいが、今の俺たちじゃアンタの強さとは天地ほども開きがある。できるわけが・・・ない」珍しく弱音を吐く北斗。
「確かに、今のお前らは弱すぎる。なんの役にも立たない味噌ッカスどもだ」
「・・・・・・」
「だが、それは“今の”お前らがってことだ。特に、このバカ」と、ソファに転がされた城太郎に「この無鉄砲なバカは凄まじい強さを発揮するようになる」
「約束だったな。話してやろう。俺が無鉄砲なバカだったころの話を」

 厳しい修験道の山篭りのなかで、あらゆる体術を極め鉄人となった竪守龍鬼。
 霊峰に魂を交わらせること参千行。幻術の奥義を掴んだ魔人氷堂不死彦。
 そして、2人の技を伝授され、虚実の技を使いこなす若き天才、超人檜垣玄十。
 誰呼ぶとも無く、無敵3人衆と称されるようになった3人は、日本全国悪の禍根を絶つ!絶つ!!絶つ!!!
 おしげもなく正義の技を晒す3人の耳に、飛騨の山奥に甦った荒神の話が伝わってきた。やがては日本全土を呑み尽くす勢いだというのだ。
 当然3人は立ちあがった!
 しかし、無敵3人衆。その氷堂不死彦の顔ってあきらかに暗闇街道じゃん。竪守龍鬼って声も技もヘルハンターじゃん!
 視聴者の驚きも無視して、次週へ続くってさ。チクショー!気になるぜ〜〜!


第11話「正義の炎、いまだ燃え尽きず」

 轟太志の操るジープが、一路飛騨を目指して突き進む。
 流北斗が、豪徳晶が、そして檜垣玄十が、沈黙のまま同乗していた。城太郎は?俺達のヒーロー、雷城太郎はどこにいる?
「いいのかい?城太郎なしで・・・」
「時は一刻を争う。半死人を連れていくワケにはいかないサ。それに・・・もし我々が全滅したとしても、奴がいれば巻き返しは可能だ!!」
「いつも、あんな根性だけの男に、アンタ期待し過ぎだぜ」
「北斗、おまえこそ根性とやらを過大評価しすぎているぞ。根性では、全力を発揮する程度のことしかできない。城太郎のように、実力に優る相手を倒すにはな・・・」
「なんだい?」
「城太郎の目だ・・・見たことはないのか?あの時、俺にあの目があれば・・・・・・」
 昨晩告白した衝撃の過去を、檜垣は反芻しはじめた。

   奥飛騨の荒神に挑んだ無敵3人衆は連戦連勝。地獄から呼び戻された魔獣どもを打ち破り、ついに荒神の待つ霊域に辿り着いた。
 強い!体中から7つの怪物の頭部を生やした男は、無敵三人衆をキリキリ舞いさせる。
 しかし、無敵3人衆はやはり無敵だった!檜垣と竪守の竜巻フォーメーションで大地に叩きつけられた荒神を、氷堂不死彦最大最強の必殺技「血縛り死界送り」が捉えたのだ。
 地獄のヘドロに足を取られ地面に食べられていく荒神が、その左胸の最も凶悪な顔が、最後の最後で檜垣を視線で刺し貫いた。
 見据えられ、檜垣の心に怯えが走った。自分よりも遥に上位に格づけられるべき存在に不敬を働いたという慙愧に震えた。
 無防備の檜垣にイタチの最後っ屁。凶悪面の口から放たれた毒風が襲いかかるが、檜垣を庇った竪守龍鬼が替わりにそれを浴びてしまう。

「竪守は廃人同然となり、しかし1年後に病院から姿を消した・・・氷堂は数年のうちに性格が変容し・・・冷酷無残な男になってしまった。死界に送られてもなお消滅せぬ荒神の邪悪な魂が、死界送りのゲートの役を果たした彼の肉体になんらかの影響をもたらしているのは確実だろう」
「それが、暗闇街道ってワケかい」
「俺も、あの技を見るまでは確信を持てなかったがな」
「ってことは、あのヘルハンターってヤツは!?」
「間違い無い。竪守龍鬼は荒神の毒気をまともに喰らって心を壊されたんだろう・・・竜巻落しを使えるのは俺を入れてもこの世に3人しかいない」
「3人?もう一人は・・・」
ヅガ〜ン
 地獄獣デザートフォックスのツインバヅーカでジープを粉砕され、しかし、転身したフラッシュ、メガトン、ブレードは瞬時に脱出に成功していた。そして、檜垣は?
 転身もせずに、既に数百メートル先を歩いていた。時速40キロほどで。
「地獄獣は任せたぞ、無敵戦隊。俺は無敵3人衆としてのケジメを果たしにいく」
 と叫ぶ檜垣の頭上から地獄獣マーダー牙が2刀流で襲いかかる!それを弾き飛ばす深紅の弾丸!
 雷城太郎だ〜〜〜〜〜〜〜〜!
「ここは若者に任せて、老体は先に行っていな」
 憎まれ口を叩く城太郎を真っ直ぐ見据えた檜垣。
「その自信に満ちた目を、もう一度だけ見せてくれ・・・どんな不利でも、己の負けを想像できないそのバカ自信に溢れた目の光を俺にくれ!」
「檜垣さん・・・」
 歩み去る檜垣を見送る城太郎=ナックルの背後で、デザートフォックス、マーダー牙、赤毛鬼、無念和尚、狛犬が転身した!これがパーフェクト悪夢戦隊!!

第12話「心意気、無限大」

 第9話で北斗と金狼が魔獣に襲われた霊場。そこに暗闇街道がいた。
「やはりな・・・お前は魔獣と凶悪犯を合体させることで地獄獣を生み出したが、それではあきたりず、地獄を現世に噴出させるつもりか!」
「そんなおおげさなもんじゃぁない。こいつらは悪気に吹き上げられてきただけの雑魚さ。俺が死界から呼び戻すのは・・・」
「・・・ッッ!!きさま!正気かァッッ!」
 怒りの竜巻が、魔獣どもを吹き上げる大嵐になった!
 対峙する2人の巨人。
 ・・・静寂。先に動いた方が負ける。

 四対五。マスクの下で、冷たい汗が頬を伝う。北斗の頭の中には勝ちのシナリオが見えないのだ。
 他の仲間は・・・どうだ?
 瀕死でフラフラのくせに何故かやる気マンマンのナックル。感情を表に出さないブレード。不動心のメガトン。
「へっ!馬鹿馬鹿しい。こいつらといると、心配してる俺が馬鹿みてぇだぜ」
 だが!赤毛鬼のウェスタンラリアットがナックルの激突爆炎拳を弾き返す。
 無念和尚が手四つでメガトンを押しつぶす。
 マーダー牙の2刀流がブレードの真空斬りを挟み受ける。
 そして、狛犬の跳躍は幻影閃光蹴りの遥か上空を超え、フラッシュは地上に叩き落された!
 上!悪夢戦隊の技量は無敵戦隊の悉く上を行く!
 勝てない。勝てようハズがない。俺たちはなんで勝てるなどと思ったんだ?勝てる要素などは何一つとしてないというのに。
「弱い!弱すぎるぞ!赤毛鬼っっ!」
 赤毛鬼をせせら笑う城太郎に、メガトン、ブレード、フラッシュの背筋が凍る。
 血まみれで、一番ふらふらしているくせに、死にかけているくせに、やつの言葉には負け惜しみや大口の気配もない。本気だっ!本気で言ってやがる!!
「俺はいつだって本気なんだよォッ!!」
 いきなり赤毛鬼の打ち下ろしフック。
 不様に地べたへ叩きつけられたナックルが、再び立ちあがってくることを、仲間達の誰一人疑うものはない。もちろん俺もだ。みんなもそうだろう?
「てめえのパンチ、昨日より痛くねーぞっ!」
 やっぱりだぁ〜〜!堂々と憎まれ口叩いてやがるゼ〜!
「昨日は生身だったろうが・・・」
「生身の俺を殺せねェてめぇに・・・転身したファイアーナックルが倒せるかァァァァ!」
 クロスカウンター炸裂!
 吹っ飛ぶナックル、よろける赤毛鬼。
「昨日より今日、今日より明日の雷城太郎だ・・・昨日はてめェが強かったが、今日は互角、明日は俺の勝ちだ・・・・・・いいや、この勝負の間に俺が、超える!
 呑んだ。城太郎の気迫が赤毛鬼を呑んだ!一瞬だけだが、赤毛鬼の表情に不安が走った。
 改めて狛犬を見ると・・・北斗の目には、地獄の呪術、ファイアーエンジンにそれぞれ頼り切った哀れな囚人にしか見えなかった。
 ただ、己の心だけに立脚する自信だけを強さにする城太郎と較べてみれば・・・
「握力も腕力もお前さんの勝ちだ・・・しかし、背筋力はどうかな?」
 メガトンのフロントスープレックスが無念和尚を逆落としに投捨てていた。
「無形・・・」
 突然、マーダー牙の足元に刀を投げ出した晶が、意味不明の呟きとともに、ふらつくような足つきで歩き出した。
 ふわふわと、浮わついた居着かない足取りに、しかし、牙は狼狽していた。
 ファイアーブレードの定まらない重心が、マーダー牙の折角の2刀流の標的を絞らせないのだ・・・
 武道の極意、「浮身の歩」。今、刀を捨て、自らの持つ全ての型さえも、永年積み重ねてきた血と汗の結晶さえも投捨てることによって、彼女は「無形」を手にしたのだ。
 形の無いものは斬れない・・・それが武道の限界なのだ!
「死・・・死ぬゥ!」
 牙の発した弱音に、見物を決め込んでいたデザートフォックスが動いた。ツインバズーガの砲弾が発射された刹那!
 砂嵐が吹き荒れた〜〜〜!
 ヤツだ、ヤツが来た〜〜!
 明後日の方向で破裂した砲弾の爆風を背に、深緑の戦士、見参。その名も、
「俺が勝利への水先案内人。ファイアードラゴン!!」

第13話「あんたは俺の師だっ!!」

「俺が勝利への水先案内人。ファイアードラゴン!!」
 ババーン!!出た!ついに!
 謎の助っ人、第六の戦士。ヤツの名がついに明らかになった。その名もファイアードラゴン!!
 ・・・・・・まてよ。ドラゴンって、日本語にすると・・・竜?
 その時、はるか樹海の向こうで数本の木が空中に逆さに生えているのが見えた。
 蜃気楼?いや・・・あれは、天地返しだッ!檜垣と暗闇の死闘が始まってしまったのだ!
「行かなくちゃ・・・いけねえゼ」
 フラリ、と歩き出す城太郎を赤毛鬼が止める。
「キサマはココで死ね。ワシが暗闇街道さまを助けに行くのだ」
「どけ、ザコ」
 その存在すら、今の城太郎の眼中にはない!一度でも怯んだヤツは戦士の世界では相手にされなくなるんだよ!どんなに実力があってもな!
って、言ってる感じで、ムチャクチャ痺れるぜ〜〜
 そして、再び赤毛鬼ラリアットと激突!爆炎拳の激突だ!
 今度は・・・止まったァァァ!!!大激突のまま、破壊力が拮抗、静止してしまったのだ。

 無形・・・・・・全ての形を捨て去った晶の歩みは、不安定なまま、マーダー牙の間合いの奥深くまで入り込んでいた。牙に無形は斬れない。
 一見ゆったりとした動きで刃の下をかいくぐり、密着するほど牙に接近した。
 野郎、ビビッてやがるゼ!殺れ〜!殺ったれ、晶!!
 アレ?何故、平手うち・・・・何故斬らぬ・・・・って、刀捨ててるじゃん!オイ!どーするんだ!?

 ドラゴンが竜巻を起こした!あれはヘルハンターの技!
 驚く間もなく、デザートフォックスの両腕が回転、熱砂嵐が迎え撃つ!
 2つの嵐が絡み合って巨大なスピンストームを吹き上げるのを横目で睨みつつ、ついに流北斗が最後の賭けに出る決心を固めた。
 限界まで撓ませた全身全霊のジャンプ!
 ・・・努力空しく、狛犬の跳躍はやはりその頭上にあるというのに、
なんだ?フラッシュのマスクの下のこの不敵な笑みは!?

 無念和尚にバックを取られた轟太志は、怪力無双のスリーパーホールドを決められていた。
 外せるわけがない!それがこの裸締めなのだ!
 顔色が変わり始める太志だったが・・・締められたまま、背に和尚を負って歩き出した・・・・・・
フォックスとドラゴンが巻き上げる嵐に向かってだっっ!!

 ナックルはがぶっていた。足が空回りしようが、ちっとも進んでいなかろうが、そんなことは関係ない!走り続ける姿が偉大なのだ。
 摩擦熱!足から回った炎が全身を包む!いま、城太郎の全身が巨大な爆炎の拳と化した!
 これが激突!爆炎拳赤毛鬼にも一撃必殺だ。
 後ろも見ずに走りぬけていく城太郎。しかし、仲間達との心の絆は完全だ。だからこそ振り向かないのだ。振り向く必要などないのだ。
『行けっ!』空中のフラッシュが大回転をしながら叫ぶ。
『走れっ!』嵐に巻き上げられながら、メガトンがささやく。
『駆けぬけろっ!』刃の下に身を置いたブレードが想う。
そして、描写はされてないが、見てる俺には判ったゼ!ドラゴンもきっと思ってる。俺には判る。絶対そうだ!
 みんなの心を一身に受けて、いま、ファイアーフラッシュが正義街道をまっしぐらに突き進んで行く。

 回転に面食らった狛犬の隙を見逃す北斗じゃない。下から足で狛犬の頭をがっちりと挟み込んだ。
「足技ってのは、蹴りだけじゃないんだゼ」
 これが、足の投げ技?
「フランケン・シューーーーッッティングスタァァァ!!」
 回転の勢いで、地面に叩きつけられた狛犬の上に、華麗に片足で着地する北斗。
「だがなぁ、実はメインディッシュはこれからなんだよ」
 まさか?まさか出すのか、このまま?だとしたら、カッコよすぎるゼ〜〜〜
「やめろォオ」
「幻ッ影!閃ッ光!蹴りっっ!!」
 で、出た〜〜〜!目にも止まらぬ必殺の連続蹴りが、地面に狛犬を埋め込んでいく〜〜〜!!

 刀を手放してこそ、初めて無形。無行にあろうとする限り、得物は持ちえない。
 そう気づいたマーダー牙は強気になった。
 傍若無人に振りまわされる2刀の間を、岩間に踊る流水の落花の如く、軽やかに、尚且つ自然に移ろう晶の脳裏に、祖父大蔵の面影が甦る。
「己を捨てきるような、無形の位にまで辿りついてほしくはない・・・祖父としてそう思うが、剣の師としては、お前に道を極めてほしい。・・・憶えておけ。無形は既に世界の常識の外にある幽玄の境地だ。生は危険の隣にある」
 晶はマーダー牙の真っ向唐竹割りに、吸い込まれるように体を突き出していった・・・・危な〜い!!
「真空無形斬り」
 無刀捕りに捉えた牙の刀が、牙の首を飛ばしていた。

 無念和尚は怪力だけではなかった。執念も筋金入りである。スピンストームに遥上空に飛ばされようが、決してそのスリーパーホールドを外そうとしない。
「当てが外れてしまったなァ・・・ワシが慌てて手を放すとでも思ったのか?」
「いや、イイさ。一緒に地獄に落ちようぜ」
 首を締められて逆落としのまま、太志は見た!デザートフォックスをフルネルソンに固めて回転しながら天空に駆け昇るファイアードラゴンを。
 あれは間違いなく、ヘルハンターが使っていた飛竜竜巻落し。やはりヤツは・・・
「観念したか」
 地面が急速に迫って来た。
 ドワオ!
 無念和尚は生きていた。落下の衝撃に体の自由を奪われながらも、必死に立ち上がろうとしていた。
 空中から味方の3連敗は見ている。早く立たねば生き残りのヘルファイアーに止めを刺される。
 焦る無念和尚の目の前に、一人の戦士が立ち塞がった。・・・遅かったかァ!
 なんと、それは、ファイアーメガトンであった。
「な、なにィ?ワシよりも打ち所が悪かったはず・・・」
「パワーも、スピードも、執念も、アンタは俺の上だった。だけど・・・タフネスだけは俺が勝っていたらしいな」
 身動きの取れぬ和尚をヒョイと摘み上げ、太志は頭上で振り回した。
「骨端!微塵投げィィ!」
「ぐわははははは、ワシの、負けだ〜〜」
潔く叩きつけられる和尚であった。

  檜垣玄十対暗闇街道。2人の超人が逆回転の天地返しで捻り合う空間に亀裂が走った!
『しまったァ!このまま空間を破ってしまっては意味がないっ!』
「ふふ、いいのだぞ、玄十。俺はこのまま空間を破ってアレを呼び戻してもな・・・」
「くそっ!喰らえ、迫撃夢幻掌を」
 檜垣の肉体が2つになった。3,4,5・・・
「敗れたり!迫撃夢幻掌」地面に貫手を深々と埋め込む暗闇街道。「大山鳴動ォォォォ!」
 揺れた。大地が唸りを発して揺さぶられた。これすらも幻術なのか?
 99人の檜垣玄十が、鳴動する大地の上に振動した。残るはあと一人。ただ一人の檜垣のみが不動のままであった。
「血縛り死界送りだ!」
 暗闇街道が作り出す血風が、ただ一人本物の檜垣玄十を包んだ。
「死界の扉が開くぞォ!」
 檜垣の足元に暗く底知れぬ穴が穿たれ、そして、無数の亡者どもの腕が、檜垣を、無敵戦隊のリーダー檜垣玄十を引き込むのだ!
  「うおおおああああああ!」
 体中に絡みつく腕に自由を奪われ、ゆっくりと玄十の体が死界への穴に引き込まれて行く。
「フハハハハ、待っていろ、玄十。すぐにお前の子分どもをそちらに送り込んでやるからな」

 全力で走り続けるナックルの足元で、大地が鳴動していた。地震か?いや、違う。この、どこか非現実的な感触。幻術に違いない。
 嫌な予感がした。とてつもなく嫌な感じだ。
 予感の正体はすぐに知れた。樹海の切れ間に辿りついた城太郎が目にしたのは、死界の穴に引き込まれた檜垣の、断末魔であったのだ。
「やめろォォォォ!」
 既に手遅れだったが、走らねばならない。
 本体の消滅に伴ない、消え去っていく分身たち。
「次の餌食は、きさまか、突貫小僧」
 しかし、余裕ぶっこいてる暗闇の背後の最後の一体。この分身だけが消えぬ。まさか!?
「夢幻掌ォォ!」
 100×100発の迫撃夢幻掌には劣るにしても、掌底打ち100連発の夢幻掌は、勝利を確信し、奢りきった暗闇には効いた。
 吹き飛ばされた暗闇は自らが作り出した死界の扉に叩き込まれた。死界からは、檜垣の腕が飛び出し、力ずくで暗闇を引きずり込んだ。
「流石だぜ、檜垣さん。分身の方を死界に送り込ませたのか・・・見事な勝利だぜ」
「いいや・・・この勝負、引き分けだ」
「ど、どっかやられたのかい?」
「死界に引き込まれたのは、まごうことなく本体の檜垣玄十だ・・・俺の方が分身なんだよ」
 なに〜〜〜そうだったのか〜!!檜垣は、もう・・・・・・
「さらばだ、城太郎。後の事はお前達にまかせたぞ。無敵戦隊の勇士たちよ」
 薄ぼやけて消えそうになっていく分身の檜垣。
「待ってくれ。分身だっていい。行かないでくれ。俺はまだ、あんたに教えてもらいたいことがいっぱいあるんだよ・・・檜垣さん。俺はあんたみたいになりたいんだ。あんたは、俺の師匠なんだ!!」
「ありがとう。城太郎、俺を師と呼んでくれるんだな。ならば、たった一つ・・・俺の願いはお前達が弟子の使命を果たすことだけだ」
「なんだい?使命って。言ってくれ。なんでもするぜ」
「弟子の使命、それは・・・・・・師を超えることだ!
 淡雪のように消え去る檜垣玄十の魂を、城太郎の慟哭だけが見送るのであった・・・・・・
  

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