新西部警察


第1話(二時間スペシャル)「西部署、壊滅!」
(ナレーション)
 新宿西部署…いかなる巨悪にも怯まず、敢然と立ち向かった男たちがいた。
 危険を顧みず、命賭けて新宿を守った刑事たちがいた。
 今また、新宿を闇が覆い尽くそうとしている。
 甦れ!大門軍団!
 ………で始まる「新西部警察」を、君は見たか?俺は見た。見ていないみんなのために紹介しよう。新しい大門軍団の活躍を!

 冒頭でいきなり、西部署にガスが撒かれ、署員がバタバタ倒れる。「うわっ!マスタードガスだ!」逃げ惑う署員を、ヘリから降下してきた迷彩服の小隊が、マシンガンで殺してまわる。
 強行犯係刑事、飛崎京介、通称"トンビ"(=塩谷庄吾)はマシンガンを奪い反撃するが、顔面に被弾し、窓を破って脱出する。
 トンビの目の前で西部署は轟音とともに崩れ去る!

 警察の威信のために、ガス爆発事故で処理されてしまった西部署襲撃事件。こんなことが表沙汰になれば犯罪者がつけあがる、と上層部は知らぬ顔の半兵衛を決めこむつもりだ。
 警官皆殺しの手口にビビった他の署も捜査を手控える。
 捜査に当たるのは、顔面に深いキズの残ったトンビ(このキズは今後のトレードマークになるらしい)と、本庁のハミダシ空手刑事、巌流鉄騎、通称"ガンテツ"(=長嶋一茂)。
 だが、どこから洩れ聞いたのか、事件の真相を知っている新宿のアウトローたちは警察を舐めきって、協力の意思がない。ガンテツの鉄拳と、トンビの0.11秒の抜き撃ちでびびらせながら強引な捜査を繰り返すが、ついに追い詰めた関係者らしきヤクザは、拳銃を咥えて自殺する。ふてぶてしいヤクザが死より恐れる敵の全貌とは!?身を引き締めるトンビとガンテツであった。

 警察庁首脳部による秘密会議でも、西部署襲撃犯の扱いに苦慮していた。明らかな警察への挑戦を放置するのは威信に関わるが、しかし、圧倒的に警察の火力を上回る敵に下手に手を出して返り討ちに会うのも、自衛隊の力を借りるのもまた、威信どころではないのだ。話は完全に煮詰まる。
「真正面から潰せねェならよォ、懐に飛びこんで、内側から喰い荒らしゃあすむこった」
 ツバがギザギザに破れた制帽をハスに被り、制服を肩に引っ掛けたバンカラ男が入ってくる。
「ちょ…長官!」
 警察庁長官、十文字重太郎(=丹波哲郎:特別出演)である!すげーカッコいい!カッコよすぎるよ〜!!!
「大門を送りこんだ。すぐに結果が出るだろうぜ」
「まさか!だ…大門刑事は死んだはずでは…」
「ふふふ…大門軍団の伝説が甦るぜえ」ニヤリ
 ええ〜!大門が生きていたのか〜!って、キャスティング知ってる俺でも、思わずつられちゃうカッコよさよ。

 西部署跡地の瓦礫の前に、ボロい僧形の男(=渡瀬恒彦)が佇み、念仏を唱えている。
 早速目をつける、トンビとガンテツ。
「怪しいな。締め上げて吐かせるか」「がっつくな。ここは大事に行くぜ」
 トンビのアイディアで、泳がせ、尾行する二人。いつの間にやら、人気の無い資材置き場におびき出される。
「金魚のフンみてェについてくるのも飽きたろう…出てきな、試してやる」
「面白え。坊主だからって手加減できる鉄騎様の鉄拳じゃないぜ」「殺すなよ、ガンテツ」
と、トンビと話す隙を突いて、ガンテツのバックを取った僧形は、チョークスリーパーで、音もださず、一瞬でガンテツを絞め落とした。
「な、なに〜〜〜!」0.11秒の抜き撃ちがトリガーにかかる瞬間、僧形の一喝が大気を震わせる!「ひ、引き鉄が引けねー!」不動金縛りの術かっ!?その咽を杓丈が抉り、気絶させる。
 不様に伸びた二人を朝、通行人が発見する。なにも取られず、大怪我もしていない。そしてあの体術。果たして、奴は何物なのか〜?って、もうバレバレなんだけどね。

 武器の調達ルートから割り出された襲撃の容疑者は、新宿進出を狙う武闘派の新興暴力団であった。しかし、訓練された兵士である実行犯、その資金の流れなどは依然不明のままである。証拠を手に入れるために、事務所に侵入するトンビとガンテツだが…それは罠であった!
 四方八方からの一斉射撃!トンビを庇って10数発の弾丸を喰らうガンテツ!
 更にトンビを射殺しようとする組員たちを、組長が止める。
「まて、殺すな!…しょうがない。一人いれば吐かせることができるからな」
 既に動かなくなったガンテツを置いて、彼等はトンビを連行して行く。
 死ぬな!死ぬなガンテツ〜!!!

 アジトに連れこまれたトンビ。鉄骨の梁から鎖で吊るされて拷問を受ける。
「言えッ!貴様らが送り込んだスパイの名を!」
「し、知ら、ねえ、なあ…」ニヤリ。この、ニヤリがかっこええ!
 思わせぶりで、更に酷く殴られるのに、情報を隠していると敵に思い込ませることによって命をつなぐ。最後まで諦めないタフガイぶりがとにかくかっこいいんだよ。
 そこへ、僧形の男が現われる。こいつは組織の用心棒の先生だったのだ!なに〜!
「馬鹿な若造だぜ。あの警告で手を引けば命は助かったものをよ」と、木刀でトンビをめちゃくちゃにぶん殴るが、隙をついてトンビの尻ポケットに何かを押しこんでいく。
 男が出ていった後、ついに組長は情報を諦める。「殺れ」
 ヤバイ!これが最後のチャンスだ!跳べ〜〜〜!トンビ!
 鎖を撓らせた反動で、回転しながら上昇していくトンビ。尻ポケットから抜き出したのは拳銃であった。屈身回転しながらの射撃で、銃を持った組員を確実に仕留める。超精密射撃!
 梁の上まで跳びあがると、鎖を撃って断ち切る。その両手についた鎖をぶん回しながら闘うトンビ。
「殺せ!奴を殺せ!」アジト中のヤクザが出てくる。無人の事務室で端末を操作する僧形の男。「ふふふ…やはりバックはあの組織か」
 一方、鎖を絡め取られ、銃をつきつけられ、絶対絶命のトンビ。
「たった一人で組織と戦えると思ったか」「いいや…一人じゃねえのさ」「なに?」「ほら、聞こえねえかい。騎兵隊の足音がよ」
 耳を澄ますと…微かな爆音が、段々大きくなって来る。エンジン音だ。そして…
 ドガーン!壁が吹き飛んだ〜!

 バイクがコンクリートの壁をぶち破って飛び込んで来た!乗ってるのはもちろん、裸の上半身に包帯グルグル巻きで血まみれのガンドガーン!テツに決まってるだろ!ここで興奮しない奴は男じゃないぜ!すげーぜ、ガンテツ!
「ば、ばかな…お前は死んだはずだ〜」発射された弾丸を、十字受けので受け止める。
「俺の体にはてめえらにもらった弾が何十発入ってるんだよ!一発二発増えたって、大した違いはねえ〜!」だって、し、痺れるセリフじゃないか。
「こ、この男は不死身なのか!」「不死身なわけあるかい。ただちょっと根性があるだけよ!」
 起死回生のバトルで、数に勝るヤクザを押しまくる二人。やがて十文字長官に率いられたパトカー部隊も駆けつけるが…
 装甲車だ〜!組長が装甲車を持ち出して、二人を追う。銃も空手も通じない。機銃掃射に追い詰められるトンビとガンテツ。今度こそ、今度こそ駄目なのか?
ドガーン!
 装甲車が火を吹いて横転する。
 なに〜!このシチュエーションは、ま、まさか…
 あ〜ヘリからバズーガを撃っている。初代大門団長はライフル狙撃だったが、やはりこの僧形の男…
「大門軍団を率いて戦った伝説の大門刑事部長の弟、特命武装刑事、大門大覚。今日からお前らの団長だ!」十文字長官がトンビとガンテツを助け起しながら説明する。
やっぱりだ〜!大門団長だ〜!
 ってところでおしまい。実に密度の濃い二時間だったぜ。

 この作品から言える教訓はだな、カッコよさは理屈じゃないってことだ。相棒の危機を救うために壁ぶち破って登場したり、いきなりヘリからバズーガ撃ったり、カッコいいだろ!余計な疑問はいらねえんだよ!

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