2002.02.18

山を滑る勉強会
机上編
日にち :2002年2月5日(火) PM7:00〜
場 所 :山形市霞城公民館2F研修室A

山形にある「七横会」というバックカントリーを愛する”粋”な会が主催となり、
”道具(スキー、スノーボード、テレマーク)は何であれ、山を滑るものとして何が必要であるかを考え、
必要な事柄をお互いに勉強しあおう”という目的で勉強会が行われました。
講師は 高村 真司 氏 (東北山岳ガイド協会公認ガイド)
(実は山形県人初の8000m峰登頂者で文部省登山研修所の教官もやっておられる方だそうです)
・司会進行役は「七横会」の小林氏で、
「ただの参加者で終わらずに、今後は、あなたが山形に広める義務がある...。」と言われた時は何事かと思ったけど、
勉強会に対する意気込みや、バックカントリーへの姿勢が伝わり、先制パンチを喰らったようだった

また、「山を滑るには滑走技術の向上が第一。」....と。
未だにまともなテレマークターンが出来ないでいる僕にとって一番痛いところである。

講師の高村氏 司会進行が上手な「七横会」の小林氏
雪質の説明をする高村氏 司会の小林氏


参加者は20名。まずは最初自己紹介から始まり、講師のお話へと進んだ。
テキストとして前もって読んでおいた「雪山に入る101のコツ」(中山建生 著)と、
高村講師が準備した、”平成11年度文部省登山研修所/大学山岳部リーダー冬山研修会「雪山と雪崩」”の資料を、
今までの経験談など交えながら、「雪崩」に関して解説。
 (以下は僕なりにまとめてみた。)

1.雪崩につい
 ・雪の性質と種類
      *降り積もった雪は縮み(圧密)、氷点下で接触している氷は結合(焼結)する。
      *雪質は大きく分けると「新雪」「しまり雪」「ざらめ雪」「しもざらめ雪」とあり(もう少し細かく分けられるが)、
       蒸発/凝結する。温度差のない時とある時などいろんな気象条件で多様に変化する。

 ・弱層形成から雪崩の発生
      *蒸発/凝結で旧雪(積雪)との結合力が弱い場合、その層が弱層となる。
       弱層に積雪し自然の外力のきっかけがあれば自然発生雪崩となり
       人間の行動がきっかけとなれば誘発雪崩となる。

 ・弱層の種類と特徴/雪崩の種類と性質
      *弱層の種類は「降雪結晶」「表面霜」「しもざらめ」「あられ」「ざらめ雪」などあり、
       それぞれ結晶の形や形成条件など特徴を持っている。
      *雪崩発生の形として「点発生」「面発生」があり、層の雪質は「乾雪」「湿雪」が、
       そして滑り面位置の「表層」「全層」がある。
       例えば、滑り面が積雪内部で水分を含んだ雪崩層が広い範囲にわたって一斉に起こったら、
       「面発生湿雪表層雪崩」と呼ぶようになる。

 ・弱層の見分け方
      *弱層形成する雪の結晶を見分けれる。
      *ハンドテスト、シャベルテスト、ルッチブロックテスト、せん断テストなどなどあるが、
       それぞれ利点欠点がある。
      
 ・雪崩からの回避
      *上記の方法で弱層を判断。
      *雪崩の起きやすい地形を避ける(雪屁や沢筋)
      *少しでも高い所を歩くようにし、滑るときは尾根筋を選ぶ
      *雪崩を誘発しない工夫をする。
      *知識と経験を積んで「カン」を養う。
      
2.装備
 ・3種の神器(ビーコン/ゾンデ棒/スコップ)
      *個人装備として、ビーコン、ゾンデ棒、スコップは必需品

 ・ツェルト
      *ビバークした時など、広げたりくるんだり幅広く使える
     (危険のない所でビバークするのが前提)   

 ・他、便利グッズ紹介
      *雪崩埋没者の救出後、温めたりするのにテルモス(身体の内と外から)
      *細引き・シュリンゲ。ロープワークを覚えておくと何かと助かる。
      *”アバラング”....実際使えるのかな??
 
3.雪崩に遭遇したら
 ・救助者の場合 
      *初動捜索:現場に残され、かつ行動できるものが救助を要請にその場を離れるのではなく、
       いち早く仲間を発見して、掘り出し、救助すること。  
      *雪崩が止まるまで観察し、人・遺留品が出ていないか見る。
       (後から遺留品が出た場所近くに目印をつける)
       安全確保しビーコンを受信に切り替え捜索→救出
      *または、ゾンディング(2点・3点)による捜索→救出
 
 ・雪崩に巻き込まれた場合
      *とにかく転ばないで逃げ、ザックなどアンカーになる物は脱ぐ。
      *巻き込まれたら泳ぐ(これで助かった人もいるらしい。)
      *口や鼻を手で覆い呼吸できるようにする。
      *埋まってしまったら出来るだけ体を動かして空間をつくる。

 ・雪崩埋没者の救出法

      *骨折や、冷たい雪の中で体を冷やされることによる障害(低体温症)を
       受けていることが多く、慎重な対処が求められる。

      *状況によってはヘタに動かせない場合もある。
      *事故者を外気に直接さらすと急激に体温を失うので、徐々に体のまわりの雪を取り除きツェルトで包む。
      *また、低体温症の疑いがあるときも急激に加温せず、これまた徐々に温める。
       意識がある場合には、温かい飲み物を少しずつ与える。
      *搬送方法:ソリやザックを利用したおんぶ等々。ロープワークは覚えるように!


●高村講師の体験談で、H12年大日岳で学生二人が死亡する雪崩事故があった。 前例のない大規模な雪屁の崩落で、異常気象がもたらした結果であり、弱層は深さ20mと予測不可能な雪崩だったそうです。
雪崩に関して少し知識が増えたからといって雪崩を回避できるわけではない。
冒頭で「初心者でもベテランでも危険は同じ。」と言った高村氏の言葉がよくわかった。
また、「危険を知るには”カン”。」という言葉が何度かでてきたが、山(自然)は2つと同じ場所がないし、同じ気象条件の場所もない。知識と経験を積み重ねなければ”カン”もでてこないだろうと思った。
考えて行動するのではなく。冷静・的確に行動出来るようにするため、練習は必要なんだなと実感。

●たまたまネット上で「七横会」のHP→「勉強会します。」のBBSを見て、雪崩に興味を持った所だったので、
とってもタイムリーだった(^v^)。
一緒に勉強しよう!という場を作ってくれたことに感謝です。次回の勉強会も是非とも宜しくお願いします。

●山を滑る勉強会・雪上編はこちら


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