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ニポンをゆく(懐かしの修学旅行)
ワタクシは中学・高校共に「学ラン」でした。その影響か、未だにネクタイが結べません。
修学旅行も制服で行動させられました。
まあ、千葉あたりの中学生は、ジャージ姿でディズニーランドに遠足に行かされるラシーので、それよりはマシでしょう。
高校の修学旅行は中国地方。
ニイハオ地域ではありません。
萩・津和野の中国地方です。幹事の教師が
「今までの東北や九州では単なるバス巡りになってしまうので、自由行動をタップリ取れる形式にするのだぁ!!」
などと張り切り、試験的に選ばれた行き先でした。
自由行動といっても、5〜6人で班を組まされてのグループ行動なのですが、な・なんと・・
ワタクシがリーダーを務める班に、丁度フィンランドから来ていた留学生を入れられてしまったのでした。(日本語ダメ率98%)
初日はひたすら新幹線での移動で過ごし、下関の観光ホテルへ。
かなり大きなゲーセンが有るホテルで、生徒も教師もひたすらゲームに興じていると、全校生徒から嫌われている、我が担任の数学ブタ教師が、明らかに泥酔した状態で現れる。
そしてイキナリ・・・・
例の、おこちゃま用・100円を入れると前後左右に揺れるヤツ!!
クルマやらウルトラマンやらヘンなケダモノやらのあれにですよ!!
ホテルの浴衣をはだけながら、ぶひぶひ乗って居やがる!!!
周りがアゼンとする中、居たたまれなくなった若い添乗員が注意する。
「やめなさいよ!!あなた教師でしょ!!みっともないっ!!!」
やぁいっ!
おこられてやぁんの!!
翌日は秋吉洞へ。
ゾロゾロと洞窟見物。しかし、日本的なベルトコンベア式見学法が慣れていない留学生のフィンランド君、
「OH!!」「ワンダホー!!」「ビューテホー!!」
などと、いちいち立ちどまってじっくり見学。
徐々に本隊から離されていくワタクシの班。
急げ急げと煽っても通じない。
とうとう本隊は完全に見えなくなり、やっとたどり着いた出口には・・
ブタ教師が仁王立ち!!!!
「おまえらぁ!!なにやってんだぁ!!ぶひひひひぃ!!」
そう言うのと同時に、まずはリーダーであるワタクシがパンチを食らう。
そして二人目・三人目・・・・
ムカツク半面、妙に興味をそそられたのが・・・
果たしてブタ教師、フィンランド君にも鉄拳をくれるのだろうか?
彼はなぜブタが怒っているのか理解できない様子で
「OH!ナジェ、ミンナぱんちヲクラッテイルノデスカァ?」
といった雰囲気で唖然としている。
そこへ容赦なくブタパンチが!!!
後で賢いヤツが英語で説明するものの、
「ダメデス!!ワタシ、アイツヲユルセナイアル!!」
ブタ教師とフィンランド君の抗争は、その後も繰り広げられるのであった。
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萩市内の自由行動。
とはいえ、完全に自由な訳では無く、事前に班単位で調査して提出したコースを廻らなければ、感想文が書けなくなってしまう。
仕方が無いので、テキトーにデッチ挙げたコースをブラブラ歩く事に。
萩観光と言えば『松下村塾』『○○氏生家』『××氏が生活した家』・・・
この様な所を順次見学するものの、はたして名前しか聞いた事が無い程度の人由来のボロ家を見たってサッパリ面白くない。
しかし日本人の我々がこの有様だから、フィンランド君に至っては全く訳の判らない市中引き回し!!
「OH!こきたない家を次々見てるけど、これはナンヤネン!!」
一軒毎にイライラが充填していくのが判る。
(彼は関西弁を喋っている訳ではない。フィンランド人の名前は○○ネンというパターンが多いので、それにちなんだ識別のセリフなのだ。だって、漫画などの外人のカタカナセリフって読みにくいでしょ?)
フィンランド君の気を静める為、予定には無かった『萩城』に。
彼は日本の城には興味あるらしく、新幹線から見えた『姫路城』にコーフンしていた事実があるのだ。
それを知って喜ぶフィンランド君!
ところが・・
観光案内の看板には立派なお城の絵が書いてあるにも関わらず、完全な城跡!!
石垣の一部しか存在していないではないか!!
彼のイラツキは極限に達し、今にも中指を立てそうな勢いである。
何とかせねば・・・・
おおっ!!たまたま通りかかった街中に『伊東博文』の銅像を発見!!。
当時の千円札は、このオッチャンの肖像が書かれていたのだ。
それを知らされ、
「oh!!ワケワカラナイけど、偉いオッチャンですねん!!」
機嫌よく、千円札を手に記念撮影を始めるフィンランド君。
フビンな行動が続くと、ささやかな理解できる物の発見に感動するのは世界共通らしい。
やがて本隊と合流し、一同バスで津和野を目指す。
今日の宿は観光旅館風。
おおっ!!
各班の部屋毎にユニットバスが有るではないか!!
これに感激したのはフィンランド君。
彼は下関・萩と続いた『大浴場』にウンザリしていたラシーのだ。
フィンランドでは共同浴場に入る習慣が無く、大勢の前で全裸になる事に抵抗を感じているのに加え、金髪白人の彼はどうしても注目をあびてしまう。
要するに、果てしなくコッパズカシかったのだ。
とりあえず部屋に荷物を置いて晩飯。
教師がノーガキを垂れるのに引き続いて、宿のオッチャンが
「あのー、いま津和野では水不足でして。できれば部屋の風呂わ使わずに、大浴場をご利用頂ければと・・・・」
それを聞いた、我らがブタ教師!!
いきなりイイコブリ攻撃!
「よ〜しっ。ウチのクラスは部屋風呂禁止だぞぉ!!」
それにタマゲタのはフィンランド君。
「oh!!なじぇ使っちゃいけないねん!そりはイヤガラセですねん!」
水不足うんぬんを訳せる語学力が無い我々にも問題はあるのだけど・・
とりあえずブタ教師に「彼だけは・・・・」
と事情を説明するものの受け入れられず。
わざわざフロの蛇口のハンドルを外して持っていくありさま。
仕方なく大浴場へ向かうフィンランド君。
案の定、他の宿泊客の視線は彼の特定の部分にそそがれる。
「この屈辱、今に見てるねん!ブタ教師、只じゃ済まさないねん!!」
いきり立つフィンランド君。
でも、彼の苦悩の旅ははまだまだ続く。
(注意:精神的にいきり立っているのですぞ!念のため)
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萩・津和野と続いて、意味の判らないボロい家を見せ続けられたフィンランド君、ご機嫌ななめである。
そんな彼の感情とは無関係に、バスは次の目的地・広島を目指す。
バスでの移動中といえば、いつの時代もカラオケですな!!。
当然、我らがバスの中でも、マイクが行ったり来たり。
この頃は「ピンクレディー」が消え去った時期だった様な気がする。
やがてマイクはフィンランド君の席に。
一同注目するうち、いきなりアカペラで歌いだすフィンランド君!!
何やらフィンランドの歌らしい。
日本で言えば童謡のような、ゆっくりしたペースが繰り返される曲。
皆、面白がって手拍子を合わせる。
なごやかな雰囲気の車内!!
しかし!!!
この歌が、いつまでたっても終わらないのである。
徐々にまばらになる手拍子、それでも延々と歌は続く。
「やべぇ!!ひいちまったぃ!!そろそろやめるか!!」
的な思考は、北欧には存在しないのであろうか?
「歌えと言ったのはキサマらですねん!歌うと言ったら歌いますねん!」
歌詞がその様に聞こえてくる。
そして延々と歌は続く。
事前に『原爆』の予備知識が有った様で、『平和記念公園』では興味深々に見学を続けるフィンランド君。
再び、徐々に本隊からの遅れが目立ち、ヒヤヒヤ物である。
かなり機嫌を直したフィンランド君を引っ張る様に連れ歩き、本日の宿・広島東急インに。
今から思えば、何と言う事もないビジネスホテルである。
しかし殆どの者にとっては、初めての本格的ホテルであった。
シングルルームに次々と収まり、初めてのオートロックに不安を覚えてホントに鍵が掛かってるのかを確認したりする。
案の定、自分の部屋から締め出されてフロントに走る者も出始めた頃・・・・
嫌われ者の、我らが担任のブタ教師登場!!!
「おまえらぁ!勝手に出歩くなぁ!!よぉしっ。ウチのクラスは、俺がキーを預かる!!」
キミの悪いカン高い声での強権発動!!
無理やりキーを没収された我らは、誰一人部屋から出る事が不可能となる。
「平気ですねん!!スリッパを挟んでおけば大丈夫ですねん!!」
イナカ高校のアタマワルイ生徒とは、一味違ったキレを見せるフィンランド君。
なるへそぉ!などと関心しながら、一つの部屋に集まってカンパイ!
そしてトランプ賭博などに興じて過ごす。
ほどなく、
「今度は、フィンランドで流行ってるゲームをしますねん!!!」
早速始めてみると、『大貧民』に似てるけど、フシギなルールが追加されている。
中々面白いゲームだったけど、今となってはルールが思い出せないのが残念である。
当然の様に、フィンランド君が一人勝ち!!
彼は相当機嫌を良くし、やがて
「そろそろ寝ますねん!!」
と、部屋に戻っていく。
しかし!!!!
「大変ですねん!!いつのまにかスリッパが抜かれてますねん!!」
血相を変えて戻ってくるフィンランド君。
見事に締め出されてしまったのだ。
かわりにフロントに行ってやる等の申し出に対し、
「隣の人の部屋の窓から移りますねん。」
「えっ!!ここは8階ですぜ!!もし落ちたら・・・」
「大丈夫ですねん!!!」
たいした足場も無く、遥か下が丸見えだと言うのに、全く怯える事も無くサーカス技を発揮するフィンランド君であった。
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広島を後に倉敷に。
倉敷と言えば大原美術館である。
が!!閉館!!!
臨時閉館では無く、週に一度の定期閉館である。
「なんでですねん!修学旅行のシオリにも、見学場所として書いてありますねん!」
そんな事知るかっ!。
周りから気を使われ、トランプでヒーローになったものだから、次第に威張り始めてきたフィンランド君。
勝手にしろっ!
備前市に移り、備前焼の窯元を見学。
ここでも係りのオジサンに特別扱いされ、ますます増長するフィンランド君。
んもぉ威張る威張る!!
そして本日の宿、修学旅行最後の宿でもある岡山の日本旅館へ。
日本旅館と言うと聞こえは良いが、いかにも『修学旅行用』といった感じのボロ宿で、業務用大部屋がドスンドスンと並んでいる。
次々と建て増しを繰り返したような複雑な構造の宿。
その渡り廊下の屋根の上に乗ってコッソリ煙草を吸っている連中を発見したフィンランド君、
「OH!煙草吸ってますねん!!ワタシも吸いたいですねん!!」
どうやらフィンランドでは、高校生の喫煙が認められているらしい。
しかしそれは日本の風習と異なる為、ホームステイ先の物理教師と
【物理教師の家では可。それ以外の場所では不可】
との約束をしていたのである。
学校では我慢しているものの、何日も続く修学旅行では辛かったのであろうか、目を輝かせて喜ぶフィンランド君。
一番英語が出来、クラスの「ハカセくん」的立場で通訳を引き受けてきたヤツが、フィンランド君をたしなめる。
「No!ヂスイズ バッドスチューデント!!」
一旦は煙草を吸える喜びに浸ったフィンランド君、それだけに失望のダメージは大きく、ガックリと口だけパクパクさせている。
頼りのハカセくんには逆らえないのだ。
食後の大部屋。
テレビさえも無く、ヒマを持て余す生徒達。
こうなるとアタマワルイ男子校ならではの荒んだ遊びが始まる。
他の部屋からクラスの「のびたくん」的立場のヤツを呼び出し、いきなり布団を被せてフクロにするのである。
次々と呼び出し、エスカレートしてパンツを脱がせたりするものだから、やがて呼んでも誰も来なくなる。
そこへ現れた数学ブタ教師。
「おまえらぁ!なにやってるんだぁ!ぶひひひひぃ」
「まあまあ、先生も一緒にどうですかぁ?」
所詮はバカ学校の教師である。
アタマワルさなら生徒と同レベルなのだ。
「よぉしっ!オレが呼んでるって言えば、誰か来るだろう!!」
呼び出され、不安げに部屋を覗き込む、次なるのびたくん。
ブタ教師の姿を発見し、安心して入り込んできた所で布団を被せられ・・・
上機嫌のブタ教師。
「うまくいったなぁ!おまえらぁ!乗っかるだけにしとけよぉ!蹴ったりするなよぉ!!ぶひっ。」
そんなパターンが2〜3人繰り返された頃、何となく皆で無言で目と目を合わせ、その後は視線をブタ教師に・・・・・
一斉に飛び掛る。
「な・なんだぁ!!!おまえらぁ!なにをするぅ!ぶひひひひひひぃ!」
ガタイがガタイなだけに、なかなか手ごわいブタ教師。
その時!!!
猛然とアタックをかけるフィンランド君!!
彼は来日前から柔道に興味を持ち、すでに柔道部暦3ヶ月なのだ。
妙に強気になっている彼は、
「覚悟するねんっ!!!!!!!」
強引な払い腰!!
ブタ教師はメガネを吹っ飛ばしてを畳の上に沈む。
布団をかけられ、先ほどと違って皆で蹴り・エルボー・ヒザが容赦なくブタ教師の巨体を捕らえる。
責める事数分・・・・・・
攻撃が終了しても起き上がれないブタ教師。
やがてノソノソと布団から這い出し、
「おおまえらぁ!!!そこへ正座しろぉ!!!!」
しかし、集団フクロについては、ブタ教師自らも共犯者なのだ。
「乗っかるだけにしろって言ったろぅ!!ぶひぃ〜・・・」
荒い息の下で、弱々しくこう言うのが精一杯のブタ教師であった。
翌朝、朝食の大広間に姿を表さないブタ教師。
皆が食終わる頃、浴衣の前をはだけて、ヨタヨタと二日酔いバレバレで登場。
悪は必ず滅びるのであった。
「今までの東北や九州では単なるバス巡り。自由行動をタップリ取れる形式」を目指し、試験的に決行された今回の修学旅行。
次の年から、再び行き先は九州に戻ったそうな。