ニポンをゆく(携帯版)その1
高校の修学旅行は、萩・津和野など中国地方でした。
幹事の教師が
「今までの東北や九州では単なるバス巡りになってしまうので、自由行動をタップリ取れる形式にするのだぁ!」
などと張り切り、試験的に選ばれた行き先でした。
自由行動といっても、5~6人で班を組まされてのグループ行動なのですが、な・なんと・・
ワタクシがリーダーを務める班に、丁度フィンランドから来ていた留学生を入れられてしまったのでした。(日本語ダメ率98%)
初日はひたすら新幹線での移動で過ごし、下関の観光ホテル泊。
翌日は秋吉洞へ。
ゾロゾロと洞窟見物。
しかし、日本的なベルトコンベア式見学法が慣れていない留学生のフィンランド君、
「OH!」「ワンダホー!」「ビューテホー!」
などと、いちいち立ちどまってじっくり見学。
徐々に本隊から離されていくワタクシの班。
急げ急げと煽っても通じない。
とうとう本隊は完全に見えなくなり、やっとたどり着いた出口には・・
我が担任のブタ教師が仁王立ち!
「おまえらぁ!なにやってんだぁ!ぶひひひひぃ!」
そう言うのと同時に、まずはリーダーであるワタクシがパンチを食らう。
そして2人目・3人目・・・・
ムカツク半面、妙に興味をそそられたのが・・・
果たしてブタ教師、フィンランド君にも鉄拳をくれるのだろうか?
彼はなぜブタが怒っているのか理解できない様子で
「OH!ナジェ、ミンナぱんちヲクラッテイルノデスカァ?」
といった雰囲気で唖然としている。
そこへ容赦なくブタパンチが!
後で賢いヤツが英語で説明するものの、
「ダメデス!ワタシ、アイツヲユルセナイアル!」
ブタ教師とフィンランド君の抗争は、その後も繰り広げられるのであった。
萩市内の自由行動。
とはいえ、完全に自由な訳では無く、事前に班単位で調査して提出したコースを廻らなければならない。
仕方が無いので、テキトーにデッチ挙げたコースをブラブラ歩く事に。
萩観光と言えば『松下村塾』『○○氏生家』『××氏が生活した家』・・・
この様な所を順次見学するものの、はたして名前しか聞いた事が無い程度の人由来のボロ家を見たってサッパリ面白くない。
しかし日本人の我々がこの有様だから、フィンランド君に至っては全く訳の判らない市中引き回し!
「OH!こきたない家を次々見てるけど、これはナンヤネン!」
一軒毎にイライラが充填していくのが判る。
(彼は関西弁を喋っている訳ではない。フィンランド人に多い名前、○○ネンというパターンにちなんだ識別のセリフなのだ。)
彼のイラツキは極限に達し、今にも中指を立てそうな勢いである。
何とかせねば・・・・
おおっ!!たまたま通りかかった街中に『伊東博文』の銅像を発見!
当時の千円札は、このオッチャンの肖像が書かれていたのだ。
それを知らされ、
「oh!ワケワカラナイけど、偉いオッチャンですねん!」
機嫌よく、千円札を手に記念撮影を始めるフィンランド君。
フビンな行動が続くと、ささやかな理解できる物の発見に感動するのは世界共通らしい。
やがて本隊と合流し、一同バスで津和野を目指す。
今日の宿は観光旅館風。
おおっ、各班の部屋毎にユニットバスが有るではないか。
これに感激したのはフィンランド君。
彼は下関・萩と続いた『大浴場』にウンザリしていたのだ。
フィンランドでは共同浴場に入る習慣が無く、果てしなくコッパズカシかったのだろう。
とりあえず部屋に荷物を置いて晩飯。
教師がノーガキを垂れるのに引き続いて、宿のオッチャンが
「あのー、いま津和野では水不足でして。できれば部屋の風呂わ使わずに、大浴場をご利用頂ければと・・・・」
それを聞いた、我らがブタ教師!!
いきなりイイコブリ攻撃!
「よ~しっ。ウチのクラスは部屋風呂禁止だぞぉ!」
それにタマゲタのはフィンランド君。
「なじぇ使っちゃいけないねん!そりはイヤガラセですねん!」
水不足うんぬんを訳せる語学力が無い我々にも問題はあるのだけど・・
とりあえずブタ教師に「彼だけは・・・・」
と事情を説明するものの受け入れられず。
仕方なく大浴場へ向かうフィンランド君。
「このイジワル、今に見てるねん!ブタ教師、只じゃ済まさないねん!」
いきり立つフィンランド君。
でも、彼の苦悩の旅ははまだまだ続く。
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