ニポンをゆく(携帯版)その2


フィンランド君、朝からご機嫌ななめである。
そんな彼の感情とは無関係に、バスは次の目的地・広島を目指す。
事前に『原爆』の予備知識が有った様で、『平和記念公園』では興味深々に見学を続けるフィンランド君。
再び、徐々に本隊からの遅れが目立ち、ヒヤヒヤ物である。
かなり機嫌を直したフィンランド君を引っ張る様に連れ歩き、本日の宿・広島東急インに。
今から思えば、何と言う事もないビジネスホテルである。
しかし殆どの者にとっては、初めての本格的ホテルだった。
シングルルームに次々と収まり、初めてのオートロックに不安を覚えてホントに鍵が掛かってるのかを確認したりする。
案の定、自分の部屋から締め出されてフロントに走る者も出始めた頃・・・・
嫌われ者の、我らが担任のブタ教師登場!
「おまえらぁ!勝手に出歩くなぁ!よぉしっ。ウチのクラスは、俺がキーを預かる!」
キミの悪いカン高い声での強権発動!!
キーを没収された我らは、誰一人部屋から出る事が不可能となる。
「平気ですねん。スリッパを挟んでおけば大丈夫ですねん」
イナカ高校のアタマワルイ生徒とは、一味違ったキレを見せるフィンランド君。
なるへそぉ!などと関心しながら、一つの部屋に集まってカンパイ!
そしてトランプ賭博などに興じて過ごす。
ほどなく、
「今度は、フィンランドで流行ってるゲームをしますねん!」
早速始めてみると、『大貧民』に似てるけど、フシギなルールが追加されている。
中々面白いゲームだったけど、今となってはルールが思い出せないのが残念である。
当然の様に、フィンランド君が一人勝ち!!
彼は相当機嫌を良くし、やがて
「そろそろ寝ますねん!」
と、部屋に戻っていく。
しかし!
「大変ですねん!いつのまにかスリッパが抜かれてますねん!」
血相を変えて戻ってくるフィンランド君。
見事に締め出されてしまったのだ。
かわりにフロントに行ってやる等の申し出に対し、
「隣の人の部屋の窓から移りますねん。」
「えっ!!ここは8階ですぜ!!もし落ちたら・・・」
「大丈夫ですねん!」

たいした足場も無く、遥か下が丸見えだと言うのに、全く怯える事も無くサーカス技を発揮するフィンランド君であった。

広島を後に倉敷に。
倉敷と言えば大原美術館である。
が、閉館!
臨時閉館では無く、週に一度の定期閉館である。
「なんでですねん!修学旅行のシオリにも、見学場所として書いてありますねん!」
そんな事知るかっ!。
周りから気を使われ、トランプでヒーローになったものだから、次第に威張り始めてきたフィンランド君。
勝手にしろっ!

そして本日の宿、修学旅行最後の宿でもある岡山の日本旅館へ。
日本旅館と言うと聞こえは良いが、いかにも『修学旅行用』といった感じのボロ宿で、業務用大部屋がドスンドスンと並んでいる。
食後の大部屋。 テレビさえも無く、ヒマを持て余す生徒達。
こうなるとアタマワルイ男子校ならではの荒んだ遊びが始まる。
他の部屋からクラスの「のびたくん」的立場のヤツを呼び出し、いきなり布団を被せてフクロにするのである。
次々と呼び出し、エスカレートしてパンツを脱がせたりするものだから、やがて呼んでも誰も来なくなる。
そこへ現れた数学ブタ教師。
「おまえらぁ!なにやってるんだぁ!ぶひひひぃ」
「まあまあ、先生も一緒にどうですかぁ?」
所詮はバカ学校の教師である。
アタマワルさなら生徒と同レベルなのだ。
「よぉしっ!オレが呼んでるって言えば、誰か来るだろう」
呼び出され、不安げに部屋を覗き込む、次なるのびたくん。
ブタ教師の姿を発見し、安心して入り込んできた所で布団を被せられ・・・
上機嫌のブタ教師。
「うまくいったなぁ!おまえらぁ!乗っかるだけにしとけよぉ!蹴ったりするなよぉ!!ぶひっ。」
そんなパターンが2~3人繰り返された頃、何となく皆で無言で目と目を合わせ、その後は視線をブタ教師に・・・
一斉に飛び掛る。
「な・なんだぁ!!!おまえらぁ!なにをするぅ!ぶひひひぃ!」
ガタイがガタイなだけに、なかなか手ごわいブタ教師。
その時!
猛然とアタックをかけるフィンランド君!
彼は来日前から柔道に興味を持ち、すでに柔道部暦3ヶ月なのだ。
妙に強気になっている彼は、
「覚悟するねんっ!!」
強引な払い腰!!
ブタ教師はメガネを吹っ飛ばしてを畳の上に沈む。
布団をかけられ、先ほどと違って皆で蹴り・エルボー・ヒザが容赦なくブタ教師の巨体を捕らえる。
責める事数分・・・
攻撃が終了しても起き上がれないブタ教師。
やがてノソノソと布団から這い出し、
「おおまえらぁ!!そこへ正座しろぉ!!」
しかし、集団フクロについては、ブタ教師自らも共犯者なのだ。
「乗っかるだけにしろって言ったろぅ!!ぶひぃ~・・・」
荒い息の下で、弱々しくこう言うのが精一杯のブタ教師であった。
翌朝、朝食の大広間に姿を表さないブタ教師。
皆が食終わる頃、浴衣の前をはだけて、ヨタヨタと二日酔いバレバレで登場。
悪は必ず滅びるのであった。


「今までの東北や九州では単なるバス巡り。自由行動をタップリ取れる形式」を目指し、試験的に決行された今回の修学旅行。
次の年から、再び行き先は九州に戻ったそうな。

1へ
夜明け前へ
「週末の放浪者」携帯版TOPへ

「週末の放浪者」PC版