御所掛野郎(1995GW・東北)その2(携帯版)
☆湯治場難民
実家に連絡を入れ、金を送ってもらう事に。
しかし世間はGW、郵便局は休みである。
「カネは送るけど、休み明けの3日後になっちゃうぞぉ!!」
「親父ぃ!そんなに待てないよう!ホントはいけないんだけど、宅急便で送っとくれ!」
「判った。でもバレないかなぁ」
小心者の親父。
旧ソ連じゃあるまいし、中身なんて見られる訳が無いのだ。
まさかクソ真面目な親父、 伝票に「現金」なんて書かなければ良いのだが。
それが到着するまでの間、ここの湯治場での難民生活が始まったのだ。
フェリーの2等を思わせる大部屋、温泉を利用した床暖房。
居心地はいいのだけれど、ヒマでヒマで・・・・
やる事が無いから再び風呂へ。
でも、風呂上がりのビールなどは無い!!
タバコの残も少なくなってくる。
それを見かねたのかフロントの兄ちゃんが
「当座の金に困るだろ?これを使いなよ!」
と5千円札!!。
うわぁい!!有り難うごぜぇますだぁ!!
売店にダッシュゥ!!
こんな時でもやっぱりルービィ!!
☆黄昏のJAF
夕方、JAFがやって来る。
器用にキーシリンダーを外してカギの番号?を確認。
該当するキー本体を、クルマのシガレットに繋いだDC24V仕様のグラインダーで削り始める。
こちらは全くヒマなので、JAFの手慣れた作業を見守っているのだが・・・
2個作ったキーうちの1個が、どうしても合わない。
エンジンはかけられるのだけど、タンクを開ける事が出来ない。
何度削り直してもダメなのだ。
みちのくの山中、次第にあたりは暗くなり、徐々に冷え込みが厳しくなる。
かじかんだ手を息で温めて、必死の形相でハナミズを垂らしながら頑張るJAF。
こちらもいたたまれなくなり、
「1個あれば良いですよ!!!」
しかし、後に代金は2個分シッカリと取られたのであった。
☆食う寝る出す
とりあえず、全ての段取りがついた今、あとは待つだけである。
そうなると、生きる為には食わなければならない。
コメは持ってるし食器類もある。
オカズはフリカケだけなのが寂しいけれど、それは仕方あるまい。
その時・・・・
「ドロボーのお客さん!!ゴハンの支度ができましたよぉ!!!」
おおっ!何と言う事だ!
メシまで食わしてくれるとは!
従業員といっしょに質素な晩飯を頂く。
質素といったって、フリカケメシよりは遥かに上等である。
でも・・
「ドロボーのお客さん」はやめてくれぇ!!
せ・せめて「ドロボーにやられたお客さん」でお願いいたしますぅ!!!
温泉に浸かり、ゴロゴロとヒルネをする時が過ぎる。
昼間からガハガハとルービーを飲んでいる訳にもいかず、健康的な一時なのだ。
なぜ飲まないって?
あくまでもカワイソウな被害者を演じ続けなければ、お情けの御飯のオカズも変わってしまうであろう。
☆さらば御所掛
ついに宅急便到着の日がやってきた。
到着の知らせを受けて、住み慣れた湯治場から本館のホテルのロビーまで、
自分でバイクで受け取りに行く。
久しぶりにバイクに乗る感覚だぁ!!!。
小心者の親父、本の中にカネを挟んで、無用な偽装工作が施してある。
でも、表紙に「カネは中に挟んであります」などと書いてあるので、何の偽装にもなっていない。
従業員の皆様に挨拶し、フロントの兄ちゃんに5000円を返す。
宿泊費は不要!との事だったけど、 強引に置いてくる事にする。
まあ、一泊分が僅か1000円だから安いもんだ。
その後、山を降りて鹿角市内に出向いてJAFにキーの代金を払い、その足で鹿角警察に顔を出す。
丁度、御所掛で世話になった刑事も居た。
「お蔭様で東京に帰れます。お世話になりました」
「おお、わざわざ顔を見せに来てくれたのか!!気を付けてな!!」
「ところで、あのぉ・・・・」
「何だべ?言ってみれ!!」
「一応、免許不携帯じゃないですか。乗って帰っても良いんですか?もし、途中で捕まったら・・・」
「う~ん。オレの口からは良いとは言えないが。ホレッ!捕まったらこの名刺を見せろ!そしてオレに電話するように言え!!」
お守り的な名刺を貰い、一路東京を目指す。
何から何までトラブリ続きだった今回のツーリング。
残金節約の為に下道ばかりの、長い長ぁい2泊3日の帰り道であった。
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