メンソーレうらがわ(1991夏・沖縄)その1(携帯版)


「キミィ、ヒマそうだねぇ」
イキナリ、常務様に呼び出される。
「今度の社員旅行、沖縄なんだけど・・・・」
なんと、幹事を仰せつかってしまったのだ。
決まっているのは日程と予算のみで、あとは全部やれとのこと。

いくつかの旅行社にデンワをし、N社に確定。
決め手となったのは、以下のセリフだった。
「ハイッ!大丈夫です。我が社はキッチリ予算をたてまして、幹事さんにはオイシイ思いをして頂きますよぉ!!!」
この一言が、様々な苦難に繋がってしまうとは・・・

このN社、トンデモないのである。
誰でも知ってる大手のクセに、手際は最悪!!
泊まるホテルを転々と変更され、搭乗するヒコーキがいつまで経っても決まらない有り様。
担当者を替えさせても、次のヤツもアホなのだ。
「すみません、ご迷惑をかけます。幹事さま、アチラではその分イロイロと幹事さまの為に用意させて頂きますので・・何をって?グフフフフ・・」
これで許してしまう、我々幹事もアホなのであった。


那覇空港に降り立つ東京勢80人。
ここで福岡から飛んでくる九州工場(熊本)からの40人と合流するのだけれど・・・
にゃにおぅ?工場長が来ていない!!。
事務をやっている奥様が来ているのに、なじぇ??。
正解は無残だった。
バスで熊本から福岡空港に向った時には全員一緒だったのだ。
空港で待機していたN社の社員からチケットを受け取ろうとすると、何と4人分足りないのだ。
全くN社側のミスなのだけれど、ガタガタ言っても仕方が無く、キャンセル待ちの末3人だけは乗る事が出来、工場長は置き去りとなってしまったとのこと。
東京から同行している添乗員のむなぐらをつかむ。
「キ・キサマァ!!!」
「わ・私には事情がわかりませんよう!!」
「にゃにおう?そんな無責任な!!!」
「す・すいません。お詫びは後で・・・」
許すのであった。

普段は物静かな紳士であっても、旅行、しかも団体となると人間性が変わるもので、その境目は4人からとも5人からとも言う。
モチロン我がバカ社の社員も例外ではなく、口に出せない愚かな一行と化す。
そんな大迷惑な行動の数々を一気に省略し、恩納村のリゾートホテルに転がり込む。
恩納村とは沖縄本島の中央部、島が一番くびれている所で、那覇よりも名護に近い。

宴会が始まる。
「社員旅行には全員での宴会が付き物である」といった、常務様からの勅命で用意したのだけれど、なにぶんゼニは無い。
ホテル内のレストランを借り切り、バイキング形式の立食パーティーが精一杯なのだ。
居並ぶオードブルには沖縄郷土料理のオの時も無く、我ながらここまで安くあげられた事に関心してしまう程である。
それでも、飲み物だけは飲み放題にした事が功を奏し、オヤジどもは満足げにガハガハと飲めや歌えの大騒ぎ。
我々幹事は・・・・
レストランのスミッコで、細々とヤキソバなどを食う。
決して虐げられている訳では無く、自らの意思なのだ。
これからの「グフフ」に備え、ハラだけ落着かせて準備は万端!!
お開き時間を心待ちにしているのだ。
こんな、水牛のションベンのような水割りを飲んでるバヤイではない!!


待ちに待った宴会が終る。
モチロン、「待ちに待った」は、「終る」にかかる言葉である。
日本語はムツカシイのだ。
ホテル内の飲み屋などに消えて行くオヤジどもの視線から逃れるように、柱の影に潜んでこちらに手招きをする添乗員。
待ってましたぁ!!
ソソクサとホテルのロビーを出て、タクシーに乗り込む4人。
「さぁ!行きますかぁ。行き先?当然、那覇ですよぉ!!」
暗闇の海っぺりを走り、やがてタクシーは高速道路に入る。
対向車さえロクに走っていない、存在価値を疑う様な高速道を延々とかっ飛ばし・・・
遂に、ギラギラうっふぅん的な国際通りに到着。
空港でのオロオロ顔から豹変し、一気に自信満々な薄笑いを浮かべる添乗員。
「さぁ、ここですよぉ!!」
ドヤドヤと店に入る。
おおっ!!なんとも高級な飲み屋なのだ!!
想像だけど、銀座あたりの成金オヤジの巣窟のような雰囲気!!
我々のリゾート衣装が思いっきり浮き上がっているではないか!!!
「いらっしゃいませぇ。」
一人一人にオネェチャンがつく。
おもむろにキンチョーする幹事3名。
添乗員、一気に立場が逆転し、余裕で我々を見下ろしながら
「まぁ、くつろいでくださいよぉ。グフフフフフ・・」
おおっ!!こりがグフフの正体かぁ???
違ったのだ。
グフフはこれからだったのだ。

オネェチャンを交え、小粋なトークが弾み始めてしばし・・・
「ふぇJGりえじえR@CPうぇV」
文字化けではない。
オネェチャンどおしで、沖縄言葉で話し始めたのだ。
な・なんですとぉ???。
我々にはサッパリわからない。
その会話の後、オネェチャンたちはまるで示し合わせた様に(示し合わせたんだろうけど)、我々と1対1になるように寄り添い
「ねぇ、私の事、気に入ってくれた?」
「な・なんれすかぁ・・」
「もし気に入ってくれたなら、一緒にどぉ??」
「い・いっひょにぃ?」
「○万円でいいのよ。ホテル代はあたしが持つから」
そ・そういうこつれすかぁ!!!

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