オリオン日記(2002夏・西表島)その1(携帯版)
旅行会社のパンフレットを眺めると、西表島へ行くにはツアーが断然安い。
でも我が家は、航空券から宿から、モロモロ全てバラバラ手配で挑む事にしたのだ。
それでも超割高な個人手配にしたのは、それなりの理由があった。
夏に沖縄に行こうとすると、断然気になるのは台風である。
行けなかったり帰って来れなくなったりなんてのはヒサンながらも珍しいケースでは無さそうだ。
もちろんこれは、ツアーであっても無くても同じ運命である。
そんな悪魔のような台風でさえ、不意打ちをするほど卑怯ではない。
「オラオラァ!!おまえら、諦めろぉ!!」
とでも言いたげに、じわりじわりと、ひまわりの画像の中を陰湿に這い寄りながら、ココロの準備をする時間を与えてくれるではないか。
それに引き換え・・・・
我が家の、いや、我が家に限らず一歳を過ぎたばかりのオコチャマ突発熱は、全くの不意打ちなのだ。
ニコニコ元気にしているからって安心してたら大間違いで、何の前触れも無く40度近い熱を出しやがり、オトォチャンオカァチャンの予定を全てブチ壊してくれるのだ。
「すまないねぇ、ゴホゴホ・・・」
などと弱々しく横たわったりしてれば同情の余地もあるのに、そんな状態でも元気一杯に振舞ったりしてるから癪に障る。
ってな訳で、出発当日にゲロ熱でも出された日にゃ、ツアーだったら一巻の終りとなってしまう。
高額なキャンセル料をとられるか、ヘタしたら全額没収である。
それよりはリスクが小さい、個人手配にしたのだった。
まぁ、どっちにしろ行けなくなっちゃう事には変わりないけれど。
●8/10(土)
な・何と言う事だ。
西表を目指すのは明日だというのに、我が家のオコチャマったら、朝に計った熱が39.2度。
長々とノーガキを垂れたとおりの展開になってしまった。
「ツアーにしなくて良かったね」
などと、手に手をとりあって喜んでるバヤイではない。
意地でも西表島を目指さねばなるまい。
その為には、何とか熱を下げねば・・・
ソッコーで医者に連れて行くも、診断は聞くまでもなく「風邪」。
「じゃぁ、クスリは二日分出しとくから。三日後に来るように。お大事にね。」
「あのぉ、実は・・・・」
「ヒコーキで旅行?冗談じゃない。クスリを余分によこせって?ダメ。診断もしないでクスリを出せるか。あくまでもウチで今日出せるのは二日分だけ。そりでも行くんなら、行った先の医者に出してもらえ」
果たして、西表に小児科なんてあるのだろうか。
●8/11(日)
オコチャマは、奇跡の37.5度。
保育園でもギリギリ預かってくれる体温ではないか!!
こりは行くしかない!!
渋滞も無く、ムチャクチャ早く羽田空港についてしまった。
予定しているJAL那覇行きは午後一時過ぎであり、それは二時間近くも先の事なのだ。
西表島には空港が無いため、西表島に行くには石垣島まで飛んでいって、そこから船で渡る事になる。
その石垣島への羽田からの直行便は少なく、予約が出遅れた我が家は羽田→那覇→石垣島といった乗換え便であり、しかも、我が家が予約できた便では西表行きの最終の船には間に合わずに、石垣島での宿泊を余儀なくされていたのだった。
とりあえず、羽田でメシでも食ってウダウダと・・・
ところが、ふと見上げた電光掲示板には、なんと一本前のANA那覇行きに『空席あり』の表示が出ている。
我が家が予約した段階では満席だったハズの便なのに。
当日キャンセルでも出たのだろうか。
「こりは乗るしか無い!!」
とにかく、このチャンスを逃がす手は無い。
ソッコーで変更手続きを済ませてANAに乗り込み、いざ沖縄に。
二時間ほどのフライトの最中、これまた懸念されたオコチャマ退屈大騒ぎはナイスタイミングなオヒルネで回避され、何の苦も無く那覇空港に到着すれば、待ってましたのオリオン・・・・
といったココロの叫びをグッと堪えて、まずは石垣行きの便の空き具合をチェックしなければならない。
乗り換えカウンターに駆け込めば、案の定、石垣行きにも一本前に空席があったのだ。
当初、
「もし那覇空港で時間が空いちゃうなら、市内に繰り出して、小粋な店でンマいモノを・・・・」
などと考えていたのだけれど、先に行けるのならばそれに越した事は無い。
空港にだってオリオンはある。
チンケながらもソーキそばだって。
本格的なのは、これからイヤって程食えるのだ。
たぶん。
もう十年以上っぷりに降り立った那覇空港は、妙に小奇麗で近代的な姿に生まれ変わっていた。
シャレた感じで沖縄っぽくないターミナルビルの中で、何のキャンペーンだか知らないけれど、沖縄民謡と踊りのデモンストレーションが行われている。
賑やか華やかなその光景は妙に空々しく、なんだか沖縄に来たって気がしない。
「まさかここは関空では無いか?通天閣を探せ!!」
などとボケてるバヤイではなく、空港内の立ち食いそば風の店で、いよいよソーキそば。
う~む、ソバというよりもラーメンに近い。
それもトンコツの。
「まあ、とにかく沖縄へのお約束的第一歩をしるしたぞぉ。オリオン、おかわりぃ!!」
などとジョッキを傾けソバをすすれば良い気分。
ハイサホイサと聞こえてくるヤラセ踊りの民謡も好ましく聞こえてきたりする。
んもぉなんでもかんでもワクワクなのだ。
2へ
BAKA夫婦へ
「週末の放浪者」携帯版TOPへ
「週末の放浪者」PC版