オリオン日記(2002夏・西表島)その2(携帯版)
飛行機にしては大した距離ではないので、あっというまに石垣空港に。
八重山地方の中心的空港とは言え、は那覇空港とは大違いのチンケさで、あちこちに停まってるコミューター便の小型プロペラ機が良く似合う。
今はあまり見かけなくなったタラップ車で飛行機を降り、歩いて平屋のターミナルビルに向かうあたりは、モルジブの空港と大差無いローカルさ。
ネットリと絡みつくような空気にイキナリ晒され、もう一方的に南国情緒の中に放り込まれた気分なのだ。
これがまた良いではないか。
さて、当初の予定よりも早い便で石垣島に到着してしまった為、まだまだ西表島行き最終の船に間に合う時刻だったりするけれど、今日はこれ以上先に進むツモリは無い。
オコチャマの発熱が心配なのでギリギリの予約となった訳だけれど、いまさらコレをキャンセルして西表島の宿を探すのも億劫だし、西表島に比べたら大都会である石垣で美味しいモノを楽しむ一夜だって魅力的なのだ。
西表島には、南国のキョーレツな朝の日差しを受けながら、オリャオリャと上陸するのもオツであるという事にしておこう。
「ウチの場所?『八重山荘』ってだけ言えば大丈夫」
予約の際、八重山荘のオバチャンが誇らしげに言ってたとおり、宿の名前だけ告げるとタクシーは走り出した。
「アンタら、何時の便で来たの?」
「今、ついたばかりです」
「ほう、じゃあアンクか」
「アンク??」
聞けば何の事は無かった。
ANK(日本近距離航空)の事だった。
たいした意味は無いけれど、なんだかプロっぽい言い回しではないか。
しかしこの運ちゃん、肝心の運転が全然プロっぽく無かったのだ。
とにかくアブナイのだ。
左折の際にチャリのオバチャンを巻き込みそうになるし、自信満々に到着した八重山荘を20mばかりオーバーランし、
「いいからここで降りる」
と言っても、ムリにバックして縁石にガリガリとクルマをこする始末である。
そんなタクを見送りながら、朱蘭さまが呟く。
「離島の人って、運転がヘタなんだから」
どれだけ客観的な事実かは知らないけれど、今は納得するしかない。
八重山荘はコンクリ3階建てで、民宿と言うよりも保養所の様な宿だった。
バッチい事は無いけれど、八重山っぽい風情は乏しい。
まあ値段も安いし、中継地点での一泊だけだから全然OKである。
さっそく宿のチャリを借りて、市街地を回る事にする。
これがレンタチャリと言うよりも、まさにフツーのママチャリなのである。
オコチャマをおんぶして、サビたペダルをキィキィと言わせながら、まだまだ暑さ厳しい遅い午後の日差しの中を進む。
表通りは、そこいらの地方都市と何ら変わりは無いけれど、ちょっと裏に入ると、んもぉ八重山っぽさが点在している。
石垣塀、シーサー、ピーフンなどなど、なかなか良いではないか。
石垣塀は、その名のとおり、石垣で出来た塀である。
疲れ果ててバッチくなっているものが多く、なんとも好ましい。
何が好ましいって、これが必要以上にコギレイに飾られていたら、それはいわゆる『ヤラセ』ってヤツ以外の何物でもない。
「オマエら、こういうふうに作っとけば満足するんだろ?感激しやがれアリガタがりやがれ」
なんていった押し付けに涙するほど、コッチはマヌケではないのだよ。
「蔵の街だから、電話ボックスや便所まで蔵っぽくしてみました、はい。」
みたいな、そんな役人仕様は見たってしょうがない。
要は、ホンモノの情緒を楽しみたいのだ。
そういう意味では、ピーフンは感激モノであった。
ピーフンってのは(実はココに来るまで全く知識が無かったのだけれど)、門から玄関までの花道を遮るように立ちはだかる、衝立状に独立した塀の一部のようなモノである。
頻繁に襲撃してくる台風などから玄関を守る為に存在するのだと推測でき、んもぉ地域色バリバリな風情なのだ。
だって、バッチイ石垣塀の家にはバッチイ石垣のピーフン、小粋なレンガ塀の家にはレンガのピーフン、エコノミーなブロックの家には当然の様にブロックのピーフン。
洒落た現代風コンクリ打ちっ放し塀の家には言うまでも無くコンクリ打ちっ放しのピーフン・・・・・
んもぉ何の躊躇いも無く、存在してアタリマエの様に、生活に密着しているのだ。
素晴らしい!!
文化財的なモノに惑わされ、文化そのものを見失ってはイケんのじゃ。
まあ、全く個人の主観ですが、いかがでしょうか。
夜は離島桟橋近くの『磯』へ。
沖縄慣れした朱蘭さまが、つぎつぎと沖縄料理を注文してくれるので、もうただただオリオンを空けてれば良いのでラクチンなのだ。
チャンプル、ミミガーくらいしか聞いたことないモノばかりだけれど、どりも美味くて、もうオリオンでは太刀打ちできず、泡盛にて延長戦に突入せねばなるまい。
よかよか。
宿への帰り道。
まだまだちょっぴり汗ばむ位の気温ながら、それだけに夜風の気持ちよさが身にしみる。
聞けば、この夏の北海道は冷夏に見舞われてるらしい。
気分が良いので、これは北海道で凍えてる皆様にイヤガラセのイタ電をかけねばなるまい。
「どう?ソッチのキャンプの調子は。盛り上がってる?」
「寒みぃよう。シャレになんねぇよう」
「ほう、そりゃお気の毒。ところでコッチは・・・・・」
こんなのを、何人にデンワしたろうか。
それが、翌日にバチが当たるとも知らずに・・・
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