オリオン日記(2002夏・西表島)その4(携帯版)


次第に、石垣島に負けず劣らずの山々を並べた、西表島が接近してくる。
脇にチョコンと鳩間島を従えて、そして両島の間に浮かんでるのが小さな砂の島、バラスである。
海のど真ん中にふんわりと浮かんでいる純白の島、バラス。
なんだか間違って流れてきちゃった氷山にさえ見え、何気にイイカンジなのだ。
そしてこのバラスは、西表島に滞在中、やさしく慰め、見守ってくれるトモダチとして付き合う運命となる。


いよいよ、昼前に上陸。
船浦港は、ホントに何も無い、桟橋だけの港という感じだった。
西表島はガタイだけはデカいけれど、日本でも指折りの未開の島なんだそうであり、人口密度も極めて小さい。
島の住所も「八重山郡竹富町」となっていて、はるかに小さい竹富島の子分のようだ。
まぁ、その未開さを楽しみに来たのであって、妙に開発されてたり人々で賑やかだったりしたらかえって困る。

特に頼んだ訳でも無いのに、この島での宿となる、いるもて荘のクルマが迎えに来ている。
この船に乗ってた宿泊客は我が家だけだと言うのに、クソ暑い中、手際の良さがアリガタイ。
もっとも、一応は路線バスも走っているけれど、本数的には無いに等しい状況だから、迎えが無かったら困ってしまう。


ボロっちいワンボックスでちょろちょろっと走り、あっというまに、小高い丘の上の いるもて荘に到着。
どっちが本業なのかは判らないけれど、YHと宿の兼業で、我が家は宿のほうに泊まる事になる。
食堂やらYHのベッドルームやらがある母屋からちょっと離れた、コテージ風の建物に通され、そこが我が家の遠征基地なのだ。
それにしても、なんとも素晴らしい眺め!!
広々とした芝生の広場の先には、「これでもか!!」ってくらいに海が広がり、鳩間島やバラスが気持ち良さげに浮かんでるのが見える。
そりゃもう、
「お願い、ココに転がって!!ルービも飲んでぇ!!」
などと悩ましげににじり寄って来るような、最高の眺望なのだ。


ルービよ、オリオンよ、ちょっと待ってておくれ。

「まずは一息入れてメシでも食って、今日はノンビリするんだろう?」

などと考えているであろう西表島のウラをかき、ピナイサーラの滝あたりを先制奇襲攻撃し、我が家の機動力を思い知らせてやらねばなるまい。
ところが・・・・
オコチャマの様子がおかしい。
元気だけれど、妙にアッチンチンなのだ。
ああ、イヤな予感!!
信じたくは無い、一番恐れていた事が・・・


慌てて、荷物の中からミミッピを取り出す。
リゾート用品満載のバッグの中身で、一番先に必要となったのがオコチャマ用体温計になってしまった情けなさ。
案の定、見事なオーバーヒート状態で、「フリダシに戻る」の39.1度。
移動の疲れが出てしまったのか、
高速船のクーラー利き過ぎがマズかったのか、
南国の熱気にやられてしまったのか・・・・
とにかく、午後の攻撃はシオシオのパァとなる。


いずれにしても、昼飯を食わねばなるまい。
いるもて荘には昼飯の準備は無く、交通手段が無いので、必然的に、すぐ近所の『ポケットハウス』というレストランに行く事にする。
新しいシャレた造りの建物で、沖縄っぽさはミジンも無いけれど、ヘンにわざとらしく造られてるよりは良いのだ。
夜の営業が主流なのか、昼間の食事のメニューはちょっと貧弱で、定食が数種類あるだけだったりする。
しかし、大きく海に開けた窓からの眺めは快適で、オヤクソクの様に鳩間島、バラスが覗いている。
店内には、この店のオカミサンらしき人の小さなオコチャマが解き放たれていていて、何やら吠えまくっている。
この環境なら、子連れの我が家も気兼ねしないで済むのも有難い。
う~む、居心地が良い。
とにかくここで、オリオン&チャンプル&いのしし料理のヤケ呑み食いでもしようじゃないか。
いや、するしかないのだ。


いるもて荘に戻れば、長いながぁい不毛な午後が待っていた。
元気一杯なんだけど発熱中のオコチャマを、ムリに引きずり回したところで、余計にマズい事が待っているのは必至である。
部屋の中で、意味も無く走り回ろうとするオコチャマをなだめたりすかしたりしながら、ひたすら時の流れに身を任せるしかないのだ。

トーチャンカーチャンがセットで引きこもっている必要もなかろうと、まずは朱蘭さまがレンタサイクルでお出かけ。
小一時間ほどで交代し、今度はオトーチャンの番だけれど、オトーチャンはチャリよりもオリオンを選ぶのであった。
広い芝生でゴロ寝し、オリオン片手にただただ海を見て過ごす。
同じ風景と言えども、先ほどまでのウキウキ感と、今の失望感。
それでも鳩間島もバラスも変わらぬ姿を浮かべ、
「ここは西表島ですねん」
などといった感じで、南国情緒を主張し続けている。

嗚呼、明日をも知れぬ我が家となれど、今はただ、オリオンを煽るのみ。


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