オリオン日記(2002夏・西表島)その3(携帯版)

●8/12(月)
いよいよ西表島に上陸する朝を迎える。
すでに表はキョーレツな日差しで、ちょこっと歩けば汗が噴き出す。
でも、ウキウキワクワクな足取りで離島桟橋に。
八重山荘からは徒歩5分くらいだったろうか。

この桟橋からは、八重山の各島への連絡船がひっきりなしに発着していて妙に活気がある。
竹富島、小浜島、波照間島、黒島、与那国島、鳩間島・・・・
そして我らが西表島という事になる。
わくわく。

各島の間を縦横無尽に連絡線が行き来している訳ではなく、ごく一部を除いて、全ての航路がこの離島桟橋からの発着となっている。
たとえば西表島から与那国島へ、小浜島から武富島へ、などなどと隣の島に定期船で渡ろうと思っても、必ず石垣島の離島桟橋に来なければならない事になる。
つまりここは、独裁的な八重山の中央ターミナルなのだ。

10分遅れで出発した船は、とにかく速い船なのだ。
見た目は隅田川下りの平べったいゴキブリ観光船をチンケにしたヤツみたいだけれど、船体よりもデカい飛沫をあげながら、まるで怒り狂ったようにズンズンと進む。
石垣島を後にし、平らな竹富島、小浜島、黒島などがイッキに流れ去っていく。
それでも、ひときわ高い山を抱いた石垣島は、いつまでもその姿を後方に晒し、八重山の盟主としてのニラミをきかせている。
いくつもの島影を目にしながら、

「ああ、時間さえあれば、ひとつひとつを周ってみたいなぁ」

などと思ったりする。


そんな島々を眺めながら、ふいに考えてみたりする。
もし自分が、動力船も無く、地図も無く、それぞれの島の位置関係さえ定かではなかった原始の時代のニンゲンだったとしたら・・・・
自分の住んでる小さな島で一生を終えるのはイヤだ。
当然ながら海の向こうに見えている別の島へも行ってみたくなる事であろう。
石垣空港でカッパらってきた八重山無料観光マップによれば、与那国島からも西表島が見えるらしい。
だとしたら、与那国島に生まれた原始人のワタクシは、いつしか西表島を目指すだろう。
そこをしばらく探検したら、隣の小浜島、黒島などを探索し、やがて山がそびえる巨大な石垣島に上陸するに違いない。
そんな事を繰り返すうちに、遂には沖縄本島に到着し、

「ああ、石垣島などはチンケだったのだ。ココこそは世の中で 一番の巨大な陸地だ。安住の地だ」

などと思い知り、ブッたまげる事だろう。

やがて、チンケながらも目の前の与論島が気になりはじめ、思わず訪れてみれば、またまた次の島影が気になり・・・・・
気がつけば九州にたどり着いてしまうのではないのだろうか。
そしてそして、しまいにゃ北海道の大地に立つのかもしれない。
今のニポンじゃそこが終点だけれど、原始の時代には国境など無く、更にサハリンか国後に・・・・・・・
おおっロマンじゃぁ!!
素晴らしい!!

しかし、実物のワタクシが臆病者であるが故、原始人のワタクシだって同様であると思われる。
だとすれば、島影が見えなければ先に進まない可能性が極めて大きい。
それでは、どこが終点となってしまうのだろうか。
少なくとも、石垣島まで到着する事は確認できた。
朱蘭さまに聞いてみる。

「石垣島から宮古島って見えるかなぁ?」
「見えるわけ無いでしょ!」
「石垣島と宮古島の間って、なんか島がなかったっけ?」
「多良間島があるけど?」
「その島なら、石垣島から見えるだろうか?」
「ムリでしょう。なんでそんな事が気になるの?」

仕方なく、原始人のワタクシの行動計画を説明する。

「へぇ。でも、多良間島からも、たぶん宮古島は見えないし・・・」

どうやら原始人のワタクシは、八重山人で終わるしかないようだ。
朱蘭さまが追い討ちをかける。

「でもさぁ、それだったら何で台湾には渡らないの?」
「うっ!!そういえば・・・・・・」
「ソッチのほうが、大陸に続くじゃない」
「で・でも、島伝いに先に進むからこそロマンが・・・」
「ヘンなの」


与那国島と台湾の間は、たかだか125km程だそうな。
しかし、台湾が見える事は極めて稀だとの事。
年がら年中温暖な海水温であるが為に、海上は絶えず霞がかかり、朱蘭さまが与那国島に訪れた際も、全く見る事が出来なかったらしい。
その時に島の人に聞いたら

「台湾?う~ん、もう長いこと見てないかなぁ」

なんて悩んじゃうぐらいだから、観光ガイドブックなどに
『運が良ければ台湾が見える、与那国島の西崎』
などと書いてあるけれど、そんな簡単なモノでは無さそうだ。
ところが、その『運が良ければ・・・』に遭遇すると、またまた島の人いわく

「こんな巨大なモノが、なんでいつもは見えないのだ!!」

などとノケぞっちゃう程の光景だとか。
そうまで言われりゃ見てみたい。
見えない時と見比べてみたい。
でも、今回はとても与那国島に渡る余裕が無いのが残念だ。


2へ
4へ
BAKA夫婦へ

「週末の放浪者」携帯版TOPへ

「週末の放浪者」PC版