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いざ!キッザニア!(2007夏・キッザニア)
それは正月休みの事だった。
朱蘭さまご懐妊につき、毎年恒例の正月スキーなんぞは銀河の彼方。
ただただ家でゴロゴロして過ごす日々だった。
「トォチャン、どっか遊びに行こうよぉ」
「わかった。じゃあ、どこに行こうか・・・」
朝っぱらからのルービでモウロウとした脳細胞に、ひとつのアイデアが浮かんだ。
「そうだ! キッザニアなんかどうだ? あそこなら寒くないだろうし」
「うん! いくいく! ソレがイイ!」
もともとはメキシコで誕生し、子供が様々な職業体験が出来、そして給料まで貰えると言うキッザニア。
当時5歳の長男坊も、テレビか何かでキッザニアの存在は知っていたのだ。
しかし、オトォチャンはアサハカだった。
「超大人気なのは知っているけれど、もう開園してから3ヶ月。そろそろ客足も落ち着いたろう」
公式サイトを見たら、そんな甘い考えは一瞬にしてブッ飛んだ。
予約画面は、平日を含めて5月までギッチリと埋まっていたのだ。
第1幕
朱蘭さまが産休に突入した5月の終わり頃。
オタワムレでキッザニアの公式サイトをのぞいて見ると・・・
おうっ! 空きがある!
平日に限れば、ポツポツと予約可能な日が点在しているではないか!
6歳になったばかりの長男坊は、一度ガッカリさせられただけに、狂ったように叫ぶ。
「いくいくいくいくいくいくいくいく! キッザニアキッザニアキッザニアキッザニアキッザニア!」
ウラの公園じゃあるまいし、一人で行ける訳が無い。
もう収まりがつかず、すでに臨月の朱蘭さまが出動する事になった。
以下は、朱蘭さまによる当日(6月14日)の現場からのメール。
●9:48着信(以下、同じ)
オープン待ちの人で既に長蛇の列。
数百メートル?
並びたいのはやまやまだけど、まずはトイレさせてから。
大人が一人だとそれが不便。
●10:22
10:10入場。
まずは職安(案内所)。
大人入室不可の為、長男坊と(職安の)お姉さんの会話の内容は不明。
パン工場を紹介?され、順番待ち。
目の前に消防車が来て、長男坊は放水に釘づけ。
●10:34
所要時間(パン工場の勤務時間)30分。
長男坊の集中力が持つか?
只今、白衣にお着替え中。
●11:21
生地を丸めて真面目にクロワッサンを成型。
残念なのは、仕事が終わった途端に焼き上がったパンを渡され、料理番組みたい。
(自分が作ったのじゃないのがお土産)
また職安にいって、次のお仕事はガソリンスタンド。
●11:50
30分待ちで、今お仕事中。
2〜3歳のコドモと大人サイズの子供(6年生位?)が混在してて異様な光景。
長男坊は元気良く
「いらっしゃいませ〜」「オーライ、オーライ」
とお仕事。
●12:18
次は、はとバス。
但し、客。
さっき貰った給料から運賃を支払い。
とは言っても長男坊はキッザニア通貨に興味を持たず、最初に貰ったトラベラーズチェックも換金しようとせず。
●13:11
メシ喰う席なく、トイレ前のベンチ(唯一空いてた)でサンドイッチ。
その後、何やりたいか見て決めると、ひたすら場内を歩き回る。
結局、パイロットに決定。
40分待ちとの事で並び中。
●13:49
大人は中に入れず、モニター画面で長男坊を鑑賞。音は無し。
制服カッコイイけど写真撮れず。
●14:18
銀行へ。
口座開設・トラベラーズチェックの換金・今までに稼いだ給料の入金に、長男坊ひとりで行く。
大丈夫かなぁ?
●15:04
退散。
預金の残高分は、コドモしか入れない子供売店で買い物が出来るらしいけど、
長男坊が稼いだキッゾ(といふ通貨)では鉛筆一本とかしか買えないと言う話
(が聞こえてきた)。
しかも売店に入るのに長蛇の列。
だから売店の事は長男坊には伝えずに、
「一人で口座作れてエラい!」
と褒めちぎって終りに。
第2幕
オトォチャンが夏休みを1日も取れないまま迎えた8月の終わり。
マナムスメが6月末に産まれたばかりだし、どっちみち遠くに遊びに行く事もできなかった。
とは言え、何の罪も無い(?)長男坊はフビンだ。
「よぉしっ。今度はトォチャンと行くか」
案の定、夏休みが終わったばかりの9月の予約は空きだらけだった(もちろん平日に限る)。
たった1日の夏休みとして、9月5日、いざキッザニアへ。
キッザニアのある豊洲に向かう途中、経験者である長男坊がエラそうにホザく。
「トォチャン、キッザニアはいつも夜だから、アイサツは『こんばんわ』なんだよ」
「わかったわかった」
「それから、おシゴトは自分で決めるからね」
「わかった。オトォチャンは黙ってるから、ぜんぶオマエが決めろ」
到着したのは開園の1時間前で、それでも予約組が50人は並んでいた。
当日受付の枠は130人と書かれていて、ソチラに並んでいるのは20人くらい。
ううむ、早めに来れば予約ナシでもいけそうだ(くどいけれど平日の場合)。
そして入場。
1時間も並んだのは無駄ではなく、初回のみ、待ち時間無しでオシゴトにつけそうだ。
「おいっ、まずは何をやる?」
「案内所に行って決める」
な・なにぉぉ?
朱蘭さまから聞いていたとおり、長男坊は案内所(職安)が大好きだったのだ。
本人が好きならばソレでも良いのだけれど、そんな所で時間を食っては、せっかくの待ち時間無しの恩恵が無駄になってしまう。
「だめだだめだ。今決めろ、すぐ決めろ、ホレ決めろ」
「ええっ? 見てから決めるよう」
「ダメっ!」
すでに幾つかのオシゴトは定員一杯になりはじめた。
その時、たまたま目に入ったのが宅急便。
「よしっ、コレをやれ。文句あるか? キッチリ稼げ」
「わ・わかったよう」
何とかタッチの差で間に合い、そしてすぐに宅急便の定員も一杯となった。
やがてキッザニアのテーマ曲と共にスタッフが踊りだし、いよいよ働くコドモの世界がスタートした。
宅急便
小学生のオネェチャン4名、6歳の長男坊、4歳の女の子、定員6名でオシゴト開始。
クロネコヤマトの帽子と上着を着用して、同じ格好をしたスタッフのレクチャーを受ける。
それが終わるとゾロゾロと列をなしてブティックに向かい、集荷作業。
たぶん、日によって荷物を出す店は変わるのだろうか。
事務所に戻って伝票をチェックし、クロネコヤマトのクルマに乗り込む。
ホンモノに似せた小型の電気自動車とは言え、さすがに運転するのはスタッフだった。
ここまでの流れには親は一切関与せず、みな手に手にビデオやカメラを持って我が子を追い回すのがオシゴト。
動き出したクルマまでゾロゾロと追い回し、まさにパパラッチそのものなのだ。
そして到着した土産物屋に配達して伝票にハンコを貰い、事務所に戻ってオシゴト終了。
どこまで理解してるかどうか不明な4歳の女の子を、小学生ネェチャンがメンドウ見てやってる姿が何とも微笑ましかった。
はとバス
次に長男坊が選んだのは、はとバス。
宅急便のクルマと同様、ホンモノに似せた小型の電気自動車のバスで、やはり運転するのはスタッフ。
コドモはバスガイドとしてシゴトする事になる。
長男坊はバスガイドではなく、客として乗車すると言うのだ。
「カァチャンと来た時も乗ったんだろ?」
「うん。でも乗る!」
客が3人にバスガイドが2人。とにかく出発。
たどたどしく原稿棒読みで頑張るガイド、ソレを追いかけるのは、やっぱりパパラッチ。
場内を一周してアッサリと終了。
オシゴト案内所
長男坊の強い要望で、ヤツの大好きな案内所へ。
いわゆる職安で、不動産屋の物件のようにシゴトが書かれた紙がビッシリと張られている。
ソレをもとに、スタッフのオニィチャンと相談してシゴトを選ぶ仕組み。
ただしココではシゴトの予約は出来ず、紹介するのみ。
長男坊はオニィチャンに相談する事も無く、ただただ案内所の中をうろついているだけではないか。
勤労意欲なしとしか思えない。
「おいっ! 出て来い」
案内所の外に引きずり出し、ふたたびオトォチャンの強権発動。
「オマエ、レンタカーに乗りたいって言ってたよな?」
「うん、乗りたい」
「じゃあ、免許をとりに行ってこい」
教習所・レンタカー
場内に小さな周回コースがあり、コドモがゴーカート風のレンタカーを運転できる。
そこにはオートバックスとガソリンスタンドが併設されていて、もちろん働くのはコドモ。
コドモの客が、コドモに給油してもらう仕組みになっている。
実際にはレンタカーは電気で動く為、給油といってもフリだけなのでアブナくはない。
そのレンタカーを運転する為には運転免許証が必要で、まずはソレを取得しなければならないのだ。
一度とってしまえば、あとは何度でもレンタカーに乗る事は出来る。
さっそく受け付けに行くと、スタッフねぇちゃんが上目使いで
「ただいま1時間から1時間半の待ちですが、いかがいたします?」
などとノタマう。
「な・なにぃ? どうする?」
「まつ。うんてんしたい」
待つのは仕方ないけれど、親はコースの外に締め出されてしまうのだ。
果たして長男坊の集中力は持つのだろうか。
ガソリンスタンドの順番待ちの小さなコドモが泣き出し、それでも親の入場は許されないらしい。
スタッフのオネェチャンが、ひたすらダッコであやしている。
番外・喫煙事情
どのみち親の出る幕は無いので、ちょいとタバコでも・・・・
ちなみに、キッザニアの場内には喫煙所は存在せず、
いったん外に出なければならない。
一時的な退場は自由で、場外のレストランでメシを食うことだって可能なのだ。
入場時にオトナもコドモも腕輪をハメられ、これで本人確認される仕組みになっている。
この腕輪、特殊な工具が無いと着脱できない仕組みになっているので、
別の親子が途中で入れ替わったりは出来ない。
しかし、思わぬルールが存在した。
「お客様、お子様は何歳ですか」
「えっ、6歳ですが」
「他の保護者の方は中にいらっしゃいますか?」
「いません」
「それでは途中退場はできません」
「な・なじぇ?」
小学4年生未満のコドモだけを残しての退場はダメだというのだ。
「どうせ中にいたって、コドモとは隔離されてるんだから同じじゃんよぉ」
「どちらに行かれるのですか?」
「タバコタバコ」
「それじゃ、5分以内にお戻りくださいね」
と言う事で、とりいそぎ1本タバコを吸って戻ってきたら、なんだか話しが変わっていた。
「お客さん、今回だけですからね。もうダメですから」
「な・なにをぉ?」
以下省略:(スタッフとのオトナげない見苦しい激論バトル)
とにかくとにかく、いよいよ長男坊の番となる。
なにやら教室風の部屋に座らされ、信号やら道路標識やらの講習を受け、ペーパーテストもあるらしい。
その間30分。
親が立ち入れる境界線からはサッパリ様子が判らないものの、どうやら長男坊は合格出来たらしく、
意気揚々とレンタカーに乗り込むのが見えた。
トロトロと走るレンタカーを運転し、
コドモにガソリンを入れてもらって戻ってきた長男坊の手には、かなりホンモノっぽい免許証が握られていた。
昼メシ事情
弁当などの場内持込は禁止で、キッザニア内の店か、あるいは一時退場して外で食う事になる。
場内にあるメシ処では、スパゲッティやらカレーやら、それなりのモノは食う事が出来る。
長男坊の希望により、場内のモスバーガーの店に。
ハンバーガーを作っているのはオトナで、代金もキッゾではなく日本円で支払う。
しかし、朱蘭さまから聞いていた通り、確かに座るべき席が不足していた。
明らかに食べ終わっているのに、もしくは何も食べずに延々と座っているヤカラがいるのだ。
何かと待ち時間だらけなので、親が交代で席を占拠しているからに他ならない。
そういう連中は、店員が注意しても聞く耳を持たないそうだ。
「お客様、お席をお探しでしたらコチラにどうぞ」
スタッフに案内されたのはイスやテーブルが並べられた一室で、そこでも大勢の客がメシを食っていた。
どうやら臨時に開放された部屋のようで、もともとは何かのアトラクションの場だったのかもしれない。
だとすると、自己中な席取りオババどものせいで、コドモの楽しみ(シゴト)が一つ減らされた事になる。
そんな事でイイのか? 席取りオババ!
などと、自己中なニコチンおやぢもついつい苦言をホザきたくなる。
幼稚園
長男坊、またまた大好きな案内所(職安)に出向き、選んだのは幼稚園の先生。
なんですとぉ? オトコのくせにぃ? なんて言うと、タジマ先生に怒られるだろうか。
幼稚園でのオシゴトはフツーの幼稚園と同じく、先生が園児のメンドウをみる訳だけれど、
ホンモノと異なる点は、メンドウをみるほうもコドモという事だ。
ルールとしては、2歳児から5歳児までが園児で、6歳児からが先生になれる。
先生役は30分交代で順番にオシゴト、園児は時間に関係なく居られるらしい。
もしかしたら、小さなコドモを託児所がわりにブチ込んでる親もいるのかも知れない。
しかし園児役がいなければオシゴトが成り立たないので、それもアリだろうか。
ちなみに園児が居ない場合は、先生の講習会という事になるそうだ。
小学生の女の子5人、そして我らが長男坊で、幼稚園のオシゴトがスタート。
先生の服装は女性用っぽく、あきらかに一人だけヘンな長男坊。
レクチャーの後、オトナのスタッフ先生2名と共に、いざ園児と御対面。
ぐぐぐぐぐぐぐ。
予想できた事とは言え、長男坊は、園児そっちのけでオモチャで遊びはじめやがった。
挙句の果てにはオトナ先生にナツきまくり・・・・・
結果としては、園児役をソツなくコナしたとホメてあげよう。
デザイン教室
またまたまた案内所に出向いてクダを巻き、選んだのはデザイン教室。
これはオシゴトではなく習い事なので、逆にキッゾを支払っての参加となる。
いかにも画家といった風情のスモックを着せられ、ハガキ大の紙に絵を書く。
それをプリクラ風に、切手大のシールにしてくれる仕組みだった。
殆どのコドモは、あらかじめ用意されている塗り絵を選んだ。
我らが長男坊はソレを拒否し、真っ白な紙にオリジナルの絵を描くことに挑戦。
その精神はリッパなのだけれど、クレヨンをいじくってばかりでサッパリすすまない。
いらいらオロオロいらいらオロオロ・・・・
おおっ、真っ先に席を立ってスモックを脱いだ! 退場か? 逃亡か?
どうやらイッパツ逆転で絵が完成したらしく、意気揚々とシール作成マシンの所に向かった。
木と花と太陽の絵。
ごくごくフツーの6歳児っぽいターヘーな絵なのだけれど、縮小されてシール化されるとそれなりの絵に見えてしまうからフシギだ。
「エラい! ジョーズだぁ」
いちおうホメておくと、鼻の穴を膨らませて誇らしげにバカ笑む長男坊。
そしてコレで時間切れ。
殆どのシゴトが募集終了となった。
アフター・おシゴト
キッザニアを後にし、豊洲の駅に向かう道すがら。
「楽しかった?」
「うん、すごく楽しかった」
「何が一番楽しかった?」
「わかんない」
「わ・わかんないって。ま・まさか・・・何をやったのか全部言ってみな」
「わすれちゃった」
「や・やっぱり。トホホホホホ・・・」
イッキに萎えるオトォチャン。
まあ、楽しかったのなら良しとしよう。
とは言うものの、なんだか悔しい。
遠回りになるのを承知の上で、ゆりかもめで帰る事にする。
「おいっ、モノレールみたいなヤツで帰るか?」
「うん、のるのる!!」
豊洲駅が始発なので、思惑通り一番前の席に座ることが出来た。
ゆりかもめは無人運転なので、まさに運転手のような位置の席をゲットできたのだ。
「わぁ! 運転手さんみたい!」
乗り物好きの長男坊、思ったとおりに目を皿のようにして大喜び。
ぐふふふ、オトォチャンの勝ちだ。
長男坊のキッザニアでの最後のオシゴトは、ゆりかもめの運転手という事にしておこう。