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憧れのスゥイートホーム(完結編)

住民票
収穫の無いまま週末が終る。
このまま次の週末までノホホンとしている訳にはいかないのだ!!!
今度の土曜日は結婚披露宴に招待されているため、まるまる家探しには使えない。
それはKDJとTBBの結婚式、出席しない訳にはいくまい。
「おねげぇですだ!!何とかしとくれよう!!」
A不動産に泣き付く。
とにかく物件を数多く紹介して貰い、平日の夜に外観(バイク駐輪スペースの有無)だけでも確認しておこうという作戦なのだ。
 この日の為に用意した(÷ホンダなる人物からタダで貰った)、お下がりのお下がりらしいD51不況型旧式ボロFAX、頼んだぜぇ!!!!
 さすが東東京で最も有力な(支店数の多い)大手不動産屋、ボロFAXからはカタカタと物件&地図が次々と吐き出されてくる。
その数は一戸建て1軒、マンション3軒、アパート1軒。
どれか一つ位はマトモなのが有ってくれぇ!!!

 水曜日。
仕事をイイカゲンに切り上げて、さっそくBAKA夫が一人でTWに跨る(妻・朱蘭様はおシゴトが忙しいのだ)。
夕闇の荒川を渡り、一軒目の『駐車場付き一戸建て』に。
 なにやら狭い路地をクネクネと曲がり続け・・・・
おおっ!確かに敷地内に駐車スペースが!!
バイクだって余裕だぞぉ!!!!
でも・・・
おクルマ様&おバイク様用のスペースと、ニンゲン様居住のスペースが殆ど変わらない、超ミニ・鶏小屋仕様のブリキ屋敷なのであった。

 気を取り直して2軒目。
古い団地風のマンションなのだけれど、敷地内に立派な立体駐車場が!!
スペース的には余裕だし、他のバイクが停まっているのも心強い。
ただし道路からは丸見えで、駐輪環境は今一つ。
おまけに駅から不便である。
とりあえず、ブリキ屋敷を押しのけてナンバー1候補の座に。

 3軒目。
こ・こりは良い!!
3階建の新しいマンション。
賃貸に住むバイク乗りが抱える盗難やイタズラへの不安、それをアッサリと解決してくれる駐輪環境!!
しかも空いているのは一階の角部屋、他の住民の迷惑にもなるまい。
堂々とランク1位に上昇だぁ!!!
と思ったら・・・
えっ?イヤな予感・・
 不動産業界は他社とのネットワークがかなり近密で、お互いの管理物件を紹介しあう事は日常茶飯事である。
そう。ここは『バイク = ワニ』の図式のミニスカねえちゃん達がはびこる、B不動産の管理物件だったのだ。
確かに、他にバイクは停まっていない。

 4軒目。
間取りは最高!!一階がコンビニで便利!!
バイクも置けない事はないけど、ここもB不動産。

 5軒目。
川っぺりのアパート。駐輪スペースは先住民に占拠されている。

あたりはドップリと夜の気配。
まずまずの手応えとB不動産のミニスカねえちゃんに対する一抹の不安を抱えながら、妻とルービの待つ『ゲロ狭・家財散乱ジャングル屋敷』を目指す、BAKA夫なのであった。

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 土曜日。
BAKA夫婦揃ってA不動産に向う。
チェックした5軒のうち、2軒目の団地風、3軒目の極上マンション、4軒目のコンビニマンションの部屋の中を見せてもらう為である。
案の定、3軒目と4軒目は、A不動産からB不動産へのデンワによる確認の段階で
「バイク?とんでもない!!」
のアリガタイお言葉が有ったと聞かされ、いきなり出鼻をくじかれる。
その2軒は、後学の為についでに見る程度の意味合いでしか無くなり、事実上、勝負は2軒目の団地風だけになってしまった。

 ちょっぴり古めの内装、しかし広い。
窓からの眺めも良く、古さが幸いしてか(?)風呂は念願の追い炊き式である。
問題は大家のお許しが出るかどうかだけなのだけど・・
「どういたしますかぁ?キッチリとご決断頂ければ、大家さんに交渉いたしますよぉ!」
やはり、「駐輪OKなら即契約」という表明をしないと、交渉は出来ないとの事。
それは当然であろう。
しかし、ここまで苦労したからには、もう少し物件を見たいではないか。
「あのぉ、夫婦でジックリ話し合って決めたいのですが、今日はこれから用事が。今晩検討させて頂いて、明日に返事させて頂きたいのですが・・」
出掛けるのはウソではない。
現に、午後からのKDJ披露宴に出席の為、礼服持参で来ているのだ。
ただし、夜の二次会から参加予定の妻・朱蘭は、午後も他の不動産屋を回っちゃおうという予定なのはヒミツ!!!。
以前に夫がデンワで聞いた際には『バイク3台?ムリです』とアッサリ断られた、地元では有力らしいC不動産。
ここにバイクのバの字も出さずに妻が訪れて何軒か外観をチェックし、バイクを停められそうな物件のみを日曜日にジックリと見せてもらおうと言う作戦なのだ。
「そうですかぁ?早くしないと他に決まっちゃいますよぉ!!」
「仕方ないんですよう!!大切な披露宴なもので。ホレホレ!!」
 これ見よがしに礼服を振りかざし、式場に向う夫。
ゴージャスな料理&高級な酒が待っている夫とは裏腹に、ラーメンをすすってルービも飲まずに午後の勝負に備える妻。
そんなけな気に頑張る妻・朱蘭の健闘が、後の勝利に繋がる事となった。

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 日曜日。
再び夫婦揃ってC不動産屋に。
エラい妻・朱蘭様が、2軒ほど候補と成りうる物件をピックアップしてあるのだ。
 まずは本日の一軒目。
我々を案内してくれる担当者は、茶髪のヤンキーあがりっぽい兄ちゃん。
こういった男の方が話しは通じ易そうな気もする。
今までの不動産屋とは打って変わったブッキラボウな応対の仕方もうるさくなくて良い。
「どうっすか?ここ。」
う〜む。
環境、間取り、バイクスペースもまずまず及第点である。
さすが我が妻、目の付け所が違う!!。
(いいんじゃない?)
妻と協議の上、ここで始めてバイクの事を告げる。
「さ・3台もぉ!!!!!」
思わずのけぞる茶髪君。
それでもB不動産の様なワニ反応は示さずに
「わ・判りましたぁ。き・聞いてはみるっすけどぉ…」

 ちょっと重い空気に包まれてしまったクルマに乗り、2軒目に向う。
ここは妻の一押し!!
大家が同居しているタイプなのだけれども、なんと大家のバイクが停めてあるというのだ。
既に冷静さを取り戻した茶髪君。
「どうっすか?ここ。」
おおっ!先程の1軒目よりも、昨日の団地風よりも、駐輪環境は素晴らしい!!
大家スペースの大家バイクに並べて停めさせて貰えれば、なんと屋根付きなのだ!!
ニンゲン様の居住環境も悪くない。
ただ、家賃がちょっと高め・・・・
「バイクOKなら即契約!!って言わなきゃ、交渉してくれないんでしょ?」
「そおっすねぇ。」
「ちょっとメシでも食いながら相談します。」
「そおっすか。」

 二人で駅前に戻る。
う〜む。
便利さと駐輪場所なら大家マンション、値段と広さなら団地風。
いい加減に、どちらかに決めなければなるまい。
でも、どっちもどっちなのだ。
「ねぇ、ゴハンの前に、ちょと寄ってかない?」
妻のお誘い。
決して『ご休息』に誘っている訳では無い。
昨日の外観チェック中に、たまたま通りかかった建築中の建て売り住宅・全16棟を覗いていたら、そこの営業マンに声を掛けられて資料を貰ったそうなのだ。
「参考の為に一緒に見に行こうよ。賃貸ってイヤになっちゃった!!こっちがカネを払う側なのに、何でアタマ下げてご機嫌伺って・・・・気持ち良くバイクを停めるなら、やっぱり分譲よね!!」
全くである。
たとえばクルマや家電製品を買う客が店にヘイコラし、礼金まで払う事が有り得るだろうか!!
ふざけ過ぎている!!
余りにも全くなので、その建て売りを見に行く事にする。

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 同じような造りの家が、ズラリと並んで建築中である。
あまりの密着っぷりに息苦しさを感じる程!!
まさに窓越しにお隣り様と手を繋げるのだ。
 どこからとも無く、営業マンが登場!!
「おやっ!今日はご主人様も御一緒で!!どうぞどうぞ、中も見てってくださいな!!どうぞ土足のままで!!お足元に気を付けてぇ!!」
う〜む。
やはり、客はこの様に扱われるべきなのだ!!
「バイクを3台お持ちだとか。今なら間に合いますよぉ!塀の造りを変えまして、バイクの専用スペースも作れますぅ!!!」
どの部屋を見ようとしても、巨体を揺らして汗を拭きながら、もみ手でピッチリとついてくる営業マン。
「2階も見ていいですか?」
「どうぞどうぞ!!でも、気を付けてくださいよぉ!!!」
まだ階段が出来ておらず、掛けて有るハシゴを使ってよじ登る。
さすがにここまではついてくる事が出来ない巨体営業マン、ひたすら一階から叫び続ける。
「どうですかぁ〜!!!お気に召しましたかぁ〜!!!」
いかにも作った感じのサワヤカ声が、木の香りの立ち込めた部屋の中にこだまする。
「ぜしぜしご検討下さいよぉ!お早めにご返事下さいよぉ!!。徒歩10分位の所に、既に完成している我が社の物件もありまして、そちらにはオープンハウスもございます。資料をお渡ししますから、そちらも見ていって下さいな!!ワタクシの名前を出して頂ければ結構ですから。でも、買うならこっちですよぉ!!こっちの方が全然良いですからねぇ!!!!」

 巨体営業マンに免じて(?)、折角だからそちらも見てみる事にする。
駅からはかなり遠くなってしまうけど、まあ、見るだけだから。
「いらっしゃいませぇ!!どうぞどうぞ!!」
さっそく、神経質そうな中年営業マンが飛び出してくる。
「さあ、まずは中をご案内いたし・・・・・うっ!!!!」
我々が手に持った、巨体営業マンから貰った資料を目にした途端、動きが止まる中年営業マン。
「お・お客様、そりはどこから・・・・」
「えっ?○○町の建て売りの所で、御社の巨体さんから・・・」
「さ・さいですか。」
プイッと何処かに行ってしまう中年営業マン。
いったい何があったのだ!!!
 訳が判らないまま、勝手に中を見ようとすると、今度は別の若手営業マンが揉み手でやって来る。
「いらっしゃいませ!!!」
そこへ、再び顔を出した中年営業マン!!!
「おぅいっ、若手君、その人達は良いんだ!!巨体君の客だから。」
な・なんなんだ!!
このあからさまな対応は!!!
 縄張りだか個人のノルマだか知らないけれど、建て売りには建て売りのヘンな掟が有るのかしらん・・・・

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 ふたたび駅を目指して歩く。
なんだかんだで昼飯も食いそびれているし、早くメシを食おうと早歩きになるが・・・・
それでも通り掛かりの不動産屋に反応し、シッカリとウインドーの物件をチェックをする。
そう、我々夫婦は、既にそういう体になってしまったのだ。
『中古住宅 ○○○○万円・ルーフバルコニー付き』
これに妻の目が止まる。
朱蘭様はルーフバルコニーが大好きなのであった。
「ねぇねぇ!これ、見てこうよう!!!」
ここからそれほど遠くないし、地図を貰ってルーバル屋敷に向う。
「え〜とぉ、次の次の十字路を右に・・・・」
その時であった!!!!
「ちょ・ちょっと見てぇ!!!!!」

 全く偶然通りがかったマンション。
3階建てが3棟並んでいるのだけれど、信じられないほどユッタリとしたスペースの使い方!!
まるで校舎と校庭なのだ。
そしてあちこちに停めてある、居住者の物と思われるバイク!!!。
こ・これは・・・・・
 敷地の入口には『入居者募集中』の看板!!
早速そこに書かれているD不動産にデンワ。
「はぁい。それじゃ今からカギ持って向いますからぁ」
待つ事しばし、クルマで現れたのは若いおねえちゃん、しかもミニスカ着用なのだ!!
ちょっぴりB不動産の悪夢がアタマをよぎる。
「それじゃ、さっそく中を・・」
団地風に比べれば、一部屋少ない。
その分家賃はちょっぴり安いのだけれど。
「んにゃあ?」
風呂をチェックに行った、朱蘭様が叫ぶ。
な・なんと!念願の追い炊き式だぁ!!!!
(こんどこそ良いんじゃない?)
協議の結果、バイクの事を打ち明ける。
C不動産の茶髪君の様な反応じゃ無ければ良いのだけれど・・・
(もちろんB不動産の反応は問題外!!)
「バイク?何台ですかぁ?3台?それじゃ大変だったでしょうね。」
おおっ!!
今までに無い穏やかな反応!!!
「何てバイクですかぁ?あたしも乗るんですけどぉ・・・・」
な・仲間だぁぁぁぁ!!!!
でも、このおねえちゃんは大家では無いのだ。
問題は大家の考え方なのだ。
「で・で・で、ここのマンションは、バイクOKなんですかねぇ・・」
「ジャマにならない様に停めて下さいね。駐輪代?要りません」

即決!!!!!なのであった。

 一階の角部屋。
ベランダから荷降ろしが出来る便利さ!!
クルマの駐車場まで徒歩6歩!!
裏のスペースは我が家の庭の様な物で、BBQだって出来ちゃいそうなのだ!!!


 二ヶ月にも及んだ家探しに、遂に終止符が打たれる。
ここを見付けたのは偶然とは言え、朱蘭様の行動力がもたらした幸運!!
ますますアタマがあがらないよう!!!!
新居決定祝に、二人で寿司屋でカンパイ!!!
もちろんルービはガバガバと!!
そしてもちろん、BAKA夫のオゴリなのであった。

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