憧れのスゥイートホームその3(携帯版)


二人で駅前に戻る。
う~む。
便利さと駐輪場所なら大家マンション、値段と広さなら団地風。
いい加減に、どちらかに決めなければなるまい。
でも、どっちもどっちなのだ。
「ねぇ、ゴハンの前に、ちょと寄ってかない?」
昨日の外観チェック中に、たまたま通りかかった建築中の建て売り住宅・全16棟を覗いていたら、そこの営業マンに声を掛けられて資料を貰ったそうなのだ。
「参考の為に一緒に見に行こうよ。賃貸ってイヤになっちゃった!!こっちがカネを払う側なのに、何でアタマ下げてご機嫌伺って・・・・気持ち良くバイクを停めるなら、やっぱり分譲よね!!」
余りにも全くなので、その建て売りを見に行く事にする。


同じような造りの家が、ズラリと並んで建築中である。
どこからとも無く、営業マンが登場!!
「おやっ!今日はご主人様も御一緒で!!どうぞどうぞ、中も見てってくださいな!!どうぞ土足のままで!!お足元に気を付けてぇ!!」
う~む。
やはり、客はこの様に扱われるべきなのだ!!
「バイクを3台お持ちだとか。今なら間に合いますよぉ!塀の造りを変えまして、バイクの専用スペースも作れますぅ!!!」
どの部屋を見ようとしても、巨体を揺らして汗を拭きながら、もみ手でピッチリとついてくる営業マン。
「2階も見ていいですか?」
「どうぞどうぞ!!気を付けてくださいよぉ!!!」
まだ階段が出来ておらず、掛けて有るハシゴを使ってよじ登る。
さすがにここまではついてくる事が出来ない巨体営業マン、ひたすら一階から叫び続ける。
「どうですかぁ~!!!お気に召しましたかぁ~!!!」
いかにも作った感じのサワヤカ声が、木の香りの立ち込めた部屋の中にこだまする。
「ぜしぜしご検討下さいよぉ!お早めにご返事下さいよぉ!!。徒歩10分位の所に、既に完成している我が社の物件もありまして、そちらにはオープンハウスもございます。資料をお渡ししますから、そちらも見ていって下さいな!!ワタクシの名前を出して頂ければ結構ですから。でも、買うならこっちですよぉ!!こっちの方が全然良いですからねぇ!!!!」

巨体営業マンに免じて(?)、折角だからそちらも見てみる事にする。
「いらっしゃいませぇ!!どうぞどうぞ!!」
さっそく、神経質そうな中年営業マンが飛び出してくる。
「さあ、まずは中をご案内いたし・・・・・うっ!!!!」
我々が手に持った、巨体営業マンから貰った資料を目にした途端、動きが止まる中年営業マン。
「お・お客様、そりはどこから・・・・」
「えっ?○○町の建て売りの所で、御社の巨体さんから・・・」
「さ・さいですか。」
プイッと何処かに行ってしまう中年営業マン。
いったい何があったのだ!!!
訳が判らないまま、勝手に中を見ようとすると、今度は別の若手営業マンが揉み手でやって来る。
「いらっしゃいませ!!!」
そこへ、再び顔を出した中年営業マン!!!
「おぅいっ、若手君、その人達は良いんだ!!巨体君の客だから。」
な・なんなんだ!!
このあからさまな対応は!!!
縄張りだか個人のノルマだか知らないけれど、建て売りには建て売りのヘンな掟が有るのかしらん・・・・


ふたたび駅を目指して歩く。
通り掛かりの不動産屋に反応し、シッカリとウインドーの物件をチェックをする。
そう、我々夫婦は、既にそういう体になってしまったのだ。
『中古住宅 ○○○○万円・ルーフバルコニー付き』
これに妻の目が止まる。
朱蘭様はルーフバルコニーが大好きなのだ。
「ねぇねぇ!これ、見てこうよう!!!」
ここからそれほど遠くないし、地図を貰ってルーバル屋敷に向う。
「え~とぉ、次の次の十字路を右に・・・・」
その時だった。
「ちょ・ちょっと見てぇ!!」

全く偶然通りがかったマンション。
3階建てが3棟並んでいるのだけれど、信じられないほどユッタリとしたスペースの使い方!!
そしてあちこちに停めてある、居住者の物と思われるバイク!!!。
こ・これは・・・・・
敷地の入口には『入居者募集中』の看板!!
早速そこに書かれているD不動産にデンワ。
「はぁい。それじゃ今からカギ持って向いますからぁ」
待つ事しばし、クルマで現れたのは若いおねえちゃん、しかもミニスカ着用なのだ!!
ちょっぴりB不動産の悪夢がアタマをよぎる。
「それじゃ、さっそく中を・・」
「んにゃあ?」
風呂をチェックに行った、朱蘭様が叫ぶ。
な・なんと!念願の追い炊き式だぁ!!!!
協議の結果、バイクの事を打ち明ける。
C不動産の茶髪君の様な反応じゃ無ければ良いのだけれど・・・
「バイク3台?それじゃ大変だったでしょうね。」
おおっ!!
今までに無い穏やかな反応!!!
「何てバイクですかぁ?あたしも乗るんですけどぉ・・・・」
な・仲間だぁぁぁぁ!!!!
でも、このおねえちゃんは大家では無いのだ。
問題は大家の考え方なのだ。
「で・で・で、ここのマンションは、バイクOKなんですかねぇ・・」
「ジャマにならない様に停めて下さいね。駐輪代?要りません」

即決!!!!!


二ヶ月にも及んだ家探しに、遂に終止符が打たれる。
ここを見付けたのは偶然とは言え、朱蘭様の行動力がもたらした幸運!!
ますますアタマがあがらないよう!!!!
新居決定祝に、二人で寿司屋でカンパイ!!!
もちろんルービはガバガバと!!
そしてもちろん、BAKA夫のオゴリなのだ。


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