ぱぱ道その1(携帯版)
●プロローグ
それは9月だった。
翌日に迫った『豊田組・南会津林道祭り』と称する、名前だけは立派だけれど、要するに皆でテキトーに林道をバイクで走って、テキトーにバンガローでどんちゃんやって、テキトーに帰ってくる企画に参加するべく、テキトーに準備をしていたのだった。
当然、我が夫婦もバイクでの参加である。
「ちょっと遅れてるし、まさかとは思うけど、念のため調べてみるね」
薬局でフツーに売ってるブツを持って、トイレに駆け込む朱蘭さま。
そしたら・・・・・・・
何やら小窓状の部分が変色している、薬局でフツーに売ってるブツ。
案の定、ビンゴだったのである。
「な・なんですとぉ?????オリがオトーチャンになるんかぁ!!!!!」
●ぱぱへの道
そうとなってはバイクで林道どころではない。
とは言え、これから当分、イロイロと行動に制約が生ずるのは避けがたい事実である。
まあ、超初期だし、今のうちに楽しまなければ・・・・・
急遽、クルマで南会津に。
一泊だけ宴会に参加して、次の日は温泉旅館でまったりと。
まだ駆け出しとはいえ妊婦を相手に卓球なんかも楽しんじゃったりして過ごすのであった。
世の中、キッチリとガマンが出来るのは最初のうちだけである。
何よりもビールが大好きな朱蘭さまへの対応策として大量に買って来たノンアルコールビールも、
「味がイマイチ。ぜんぜんビールっぽくない」
という重大かつ最もな理由によって却下され、医者からは
「仕方ないなぁ。1日あたり350mlまでなら・・・」
などと勝利を勝ち取ったりしたのであった。
最も、こりが完全に守られたかはヒミツである。
ビールごときでこの有様なもんだから、安定期に入ってしまえばコッチのもの。
再び医者を困らせる。
「なんだって?んなムチャしないでよう・・・・・仕方が無い。往復ビジネスクラスなら・・・」
などと再び勝利を勝ち取り、モルジブにだって行っちゃったりしたのであった。
●間接的対面
ついに朱蘭さまは妊娠8ヶ月。
世の中に3Dエコーなるものが登場し、こりはまるで誕生後の赤ちゃんの映像を見るように、カラーでバッチリとした写りなのだそうな。
じつは、そりを見るのが今日なのだ!!!
「赤ちゃんの体勢によっては、(性別まで)確認できないケースもある」
とのことだけれど、とにかく楽しみではないか。
しかし、問題があったのだ。
エコーのプローブは2種類あり、テレビなどで見掛ける妊婦のお腹にあてて見るタイプは、胎児がかなり成長してからでなければ使えないのだ。
まだ胎児が小さい時に使うプローブは、妊婦のアソコに挿入しなければならない。
医療行為とはいえ、自分の目の前でカミさんのおマタになにやら入れられているのをダンナには見せる訳にはいかないとの判断で、プローブがお腹タイプに移行するまではダンナはダメとの事だったのだ。
今はお腹からのプローブに移っているけれど、はたして3Dエコーのプローブはどちらなのだ!!
あれだけ鮮明に写っているところを見ると、再びおマタからなのだろうか。
そうだとしたら、ワタクシには見せて貰えないではないか。
デンワで確認してみると・・・・
「お腹からです。ダンナも一緒にどうぞ」
やったぁ!!!見るぞぉ!!!
今日は突発早退だぁ!!!
●お楽しみの結果は・・・・
「はいっ。今日は3D見るんでしたね。あちらにどうぞぉ。」
通いなれた産婦人科ながら、初めて見る地下室に導かれる。
急な階段を下ると、そこはまるで地下牢のような小部屋ではないか!!
ヌイグルミやオルゴール時計などによってラブリー路線に演出されている玄関や待合室と異なり、殺伐とした業務一辺倒な雰囲気。
『放射線注意』などと、何とも恐ろしいチェルノブイリーな張り紙まである。
なんか夫婦で監禁されて、木馬やらムチやらでシバかれてしまうのだろうか・・・
「おはいりくださぁい。」
我らをいざなうのは、白衣を薄緑っぽくした衣装の若いオネェチャンなのが救いである。
オネェチャンから簡単なレクチャーを受ける。
そして
「もう、先生から性別は聞かれてますかぁ?」
「いいえ、まだですぅ」
「お知りになりたく無いですかぁ?それならばおマタにはプローブをあてない様にいたしますが」
「知りたくない訳でも無いし、ぜひとも知りたい訳でも無いし・・」
本心は、今日にも判る物なら知っておきたいのだけれど、
「教えとくれよう」
などと息を荒げて目を血走らせるのもカッコ悪く、なんとなく曖昧に答えておく。
まあ、見える時は見えちゃうだろうし。
「はい、そこに横になってお腹を出して」
生え際ギリギリまで、パンツを下ろされ、ネチャネチャとゲル状のものを塗りたくられる。
念のために言っておくが、そのような目にあっているのは、当然朱蘭さまであってワタクシではない。
「それでは始めますよぉ。」
軽やかにプローブを手にし、機械のツマミ類をいじくり回すオネェチャン。
ピコピコピコォオオオンと、画面に何やら映像が映り始める。
ホントにそんな音がしたわけでは無いのだけれど、あくまでフンイキですぞぉ。
緊張して画面に食い入る我々夫婦!!!
「おおっ!!!こ・こりは!!」
結局、性別は判らなかった。
オネーチャンも頑張ってくれたけど・・・
左手で顔面をブロック、左足でおマタをブロック。
殆ど、何も見えないに等しい結果となってしまった。
2へ
BAKA夫婦へ
「週末の放浪者」携帯版TOPへ
「週末の放浪者」PC版