ぱぱ道その2(携帯版)
●イーシャンテン
すでに3900グラムまで巨大化してしまった我が家のオコチャマ。
フツーであれば、出産が近づいてくれば、徐々に子宮口が開いてくるそうなのだ。
しかし、我が家のバヤイは気配すらありません。
当然、そりでは胎児が出てこれない。
また、へその緒を経由して胎児に栄養などを送る胎盤ですが、胎児が居住権を強引に主張して体内で粘り過ぎると、恐ろしい事に、胎盤が石灰化してきて追い出しにかかるそうなのだ。
こうなってくると、胎児の居住性が悪化することこの上なし!!
予定日前だと言うのに、我が家のバヤイは、この石灰化も始まりつつあるのだそうだ。
そこで、強制的に出産させられてしまう事になった。
子宮口に、海草を乾燥させて棒状に固めたものを入れられるそうなのだ。
これは体内で水分を吸収し、「増えるわかめちゃん」のごとく膨張するらしい。
それによって子宮口がある程度広げられたら、今度は風船。
風船を差し込み、空気を入れられて子宮口をムリヤリ広げるというのだ。
そりが痛いの何の!!んもぉタイヘンよぉ!!オクサマ!!
どんな痛さなのかって??想像がつきまへんがな。
聞いた話によると「生理痛を強烈にした」様な感じだとか。
余計に想像が付きまへんがな。
●リーチ
遂に入院。
陣痛が始まった訳では無いのですが、予定どうりに計画分娩をされてしまう事になったのだ。
15時。
病院に到着。
「いらっしゃいませぇ!!どうぞどうぞ!!」
看護婦が登場し、我々の荷物をひったくって、すり足でエレベーターに向かう。
「さぁ、こちらへ。お部屋に案内いたしますぅ」
まるで3流観光ホテルの仲居さんの行動ではないか。
今日生まれたばかりの赤ちゃんがガラス越しに陳列された廊下を進む。
「お部屋はご希望が有りますかぁ??個室とかぁ。特・別・室とかぁ。」
さりげなく「特別室」を強調して、上目遣いに視線を投げかけてくる仲居看護婦。
「フツーでいいですよう」
「さいですか。ケッ」
アタリマエである。
怪我や病気と違い、帝王切開などを除けばお産には保険が適用されないのだ。
一日あたり17000円も高い個室などもってのほか!!
おススメの特別室だと30000円ですぞぉ!!
案内されたのは3人部屋。
まあ、ベットをカーテンで仕切ってある、いわゆるフツーの病院と同じである。
入り口側のベットには荷物が置いてあり、先客がいるらしいけれど今は無人である。
空いている2つのベットのうちの窓際をあてがわれ、とりやえず荷物を置いてレクチャーを受ける。
「ご主人はこのイスに座ってね。312と書いてあるヤツに。こりがこのベットの番号ですからねぇ。私たちは312号室と呼んでます。壁はカーテンだけど、個室みたいでしょぉ?」
どういうリクツなのだ!!
程なく、別の夫婦が連れられてきて、空いている最後のベットにブチ込まれ・・いや、案内されてくる。
茶パツ妻と、フリーター風の夫である。
「・・・・・私たちは311号室と呼んでます。壁はカーテンだけど、個室みたいでしょぉ?」
ついさっき聞いたセリフそのまま!!
まったく台本どおりとしか言い様が無いぞぉ。
少しは工夫したまい。
「オクサマ方、シャワー室の場所を案内します。こちらへ」
仲居看護婦に連れられて、二人の妊婦が立ち去る。
部屋に残るのはワタクシとフリーター夫。
30秒ほどの長大な時間が経過するも、それぞれの妻は戻ってくる気配は無い。
妙に間が持たず、どちらからともなく
「ども」
「ど・ども」
などと挨拶を交わす。
聞けば、こちらの夫婦も全く陣痛が無く、へその緒が首に絡みそうとの理由で計画分娩になったらしい。
入院も出産も同じ日である。
「ここって、計画分娩が好きらしいっすからねぇ。」
「計画の方が、病院は儲かりまっしぇ!!」
ほどなく妻達が、ヒソヒソと陰湿にホザきあっていた夫達とは好対照に、楽しげに会話をしながら戻ってくる。
どちらも陣痛に苦しんでいる訳では無いので、
「明日は出産だぁ!!こりからタイヘンだぁ!!」
などと言う雰囲気は全く無く、まるで『ブーデーな妻を持つ夫婦の会』の会合のような雰囲気での会話を楽しんでいると・・・・
「ちょっとスイマセン!!!通路をあけてぇ!!」
飛び込んできた看護婦に続き、この部屋の先客らしい女性が運ばれてくる。
おおっ!!!
目を閉じたまま口を半開きにし、顔はまるで土のような色である。
看護婦4人がかりでベッドに移されても、ピクリとも動かない。
な・何があったと言うのだ!!
入院患者をリラックスさせるためだろうか、館内放送で延々と流されていたオルゴール風の音楽が、まるで凍りついた音色にさえ聞こえてくる。
ここはやはり、女性にとっての戦場だったのだ。
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