宴(うたげ)ジャックその1(携帯版)

●プロローグ
それは、散った桜の花の残骸がドブの中からも消え去る頃、ふとした会話の中から生まれた作戦だったのだ。

下町のアパートと多摩のマンションを日替わりで行き来する男女、決して夫婦では無い。
嗜好や行動パターンが酷似しているとは言え、兄弟と言う訳でもない。
「半同棲」などと言う言葉は妙にコッパズカシく、まあとにかく、ヘンなの二人が西に東に移動しながら一緒に住んでいた訳なのだけれど・・

女「ねぇ、6月に大勢集まるキャンプがあるんだって?」
男「うん、豊田組系の。旅先で出会ったライダーをみんな呼んじゃって、交流を深めようって主旨のがね。」
女「それってどこでやるの?」
男「長野県の内山牧場キャンプ場だってさ。」
女「ふ~ん・・・」
この時、女の脳裏には何かひらめきが走ったようだ…

女「ねえねえ!その日の朝に入籍して、キャンプ場で発表しちゃうってのはどう?みんな驚くよ!!!」
男「アッタマイイ!!そ・そりは面白い!!どうせならキャンプ参加者の前で婚姻届を書いて、誰かに証人になってもらって、次の日にキャンプ場の近くの役場に提出しちゃうってのは??」
女「そうしよう!そうしよう!あなたこそアッタマイイ!!!」
男「そ・そうかなぁ!デヘヘヘヘヘヘ・・・」
アタマイイどころか、世間様から見れば、何ともアタマワルイ会話である事か!!
そんな二人によって、「宴会乗っ取り突発結婚発表作戦 IN内山牧場」の幕が切って落とされたのであった。


●決行の朝
当日の朝を迎える。
ひまTW・朱蘭ジェベル、2台揃って出発だぁぁ!!!
と言いたい所だけれど・・・・・
朝から激雨なのであった。
「どうする?」
「一緒にクルマで行く?」
「それってブリブリ怪しまれない?」
「・・・・・・」
議論時間わずか2分で、結局クルマで行く事に。
カッパを着ないで済むなんて、こんなシヤワセは捨て置けないのだ!!
いきなり、ひま携帯が鳴る!!
今回のキャンプの主催者・豊田組組長からだ!!
「どうするの?ほとんどの人はクルマで行くって言ってるけど」
「そ・そうですか。ワタクシはバイクで行きますよぉ!!」
思わずウソをつく。
そこへ再びデンワ!今度はネリからだ!!
「どうするのぉ?」
「も・もちろんバイクで・・・」
「ウッソォ!!峰部長に乗せてってもらえばぁ?」
間髪入れずにまたまたデンワ!!ああ忙しい。
今度は問題の峰部長だぁ!
「どうする?クルマ出すけど乗ってく?」
何が問題って?実は前夜から朱蘭邸に居るのだ。
迎えに来られたらバレバレだぁ!!
「峰部長!クルマなんてとんでもない!当然バイクで行きますよ!!」
後先を考えない嘘である。
(この一言で、峰部長がクルマからバイクに切り替えてしまった事を、後に知る事となる。ゴメンネ・・)


●そして出発!!
昼過ぎ。
朱蘭号(カリブ)に乗込み、いざ出発!!。
準備は万全なのだ。

参考:婚姻届は、現住所や新しく本籍地に定める場所とは無関係に、全国どこの市町村役場に提出しても良いのだ。
しかも年中無休の24時間受付。
我々が提出しようとしているのは、内山牧場から至近の「下仁田町役場」なのであった。
婚姻届には本人達の署名の他に、2名の成人による「証人の署名・捺印」が必用なのである。
証人は誰でも良く(通り掛かりの知らないおぢさんでも可)、我々はキャンプ参加のどなたかに依頼するツモリであった。
ただしキャンプにハンコ持参のシトは殆ど居ないだろうから、確実に参加しそうな人々の名前のハンコを、100円ショップで20本程買って来ているのだ。


●雨の内山牧場
下仁田の町でルービなどを買い、下仁田町役場の位置も確認。
あとはキャンプ場を目指すのみ。
「この天気だし、あまり参加者が居なかったら・・・」
「発表しても、誰も反応してくれなかったら・・・」
「タイミングを逸し、発表出来ないままコッソリ入籍じゃ寂しいね・・・」
などなど、口々に不安を語り合いながらも、遂に内山牧場に到着!!!
おおっ!
クルマやらバイクやらで集まってきた面々、50人以上も居るではないかぁ!!
「な・なんだ!オマエら!!」
「おいっ!いつからTWは4輪になったんだ!!」
四方八方から到着をねぎらわれ(?)ながらも、まずは一安心。
「ジェベル+TWだから4輪でいいんでしょ?」
などとボケながらも、二人の関係を追及される気配は全く感じられない。
これも一安心。
しかし、ワナワナと怒りを抑えながら鋭い視線を送ってくる、まだカッパを着たまま仁王立ちになっている峰部長の姿が・・・・


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