宴(うたげ)ジャックその2(携帯版)
50人を超えるキャンプである。
これだけの人数になると一つの輪になるのは難しく、幾つかのグループに別れてしまうのは必至である。
既にあちこちで炊事の輪が出来ている。
これでは、全員に一斉に発表するには都合が悪い!どうしよう!
などと思いながらも、ひまは「いけいけ団」系・朱蘭は「チームぽっぽや」系の輪の中にそれぞれ別れて侵入し、アツアツがバレないように万全を期す。
しかし、我々に雨が味方したのだ。
まとわりつく様な霧雨を嫌い、調理を終えた面々が次々と30人用巨大バンガローに集結して来たのだ!!
そして全員が収納された頃、
「せっかくだからさぁ、一人一人自己紹介しようよ!!」
おおっ!
何とも予期せぬ、そしてアリガタイ提案!!
自分の番になったら、そこで発表してしまえば良いのだ!!!!
図らずも、我々二人にとっては最良のお膳立てが整った!!
何も知らない豊田組長の御挨拶を皮切りに、自己紹介が開始される。
いよいよ宴(うたげ)ジャック決行の時が、刻一刻と迫り来るのであった。
●カウントダウン
自己紹介が始まる。
バンガローの入口側に居た人から時計周りに一人ずつ起立し、
「○○から来ました△△です。バイクは□□に乗ってます」
のような挨拶が続く。
ウケ狙い的な自己紹介には適度な笑いも出て、場の雰囲気は悪くは無い。
全体の1/4程経過したあたりで、朱蘭の番になる。
「東京から来ました、朱蘭でござい~!!『酒乱』ぢゃ無いので、『しゅ』にアクセントを置くように!!(後略)」
う~む、さすが我が妻になるシト!!
ソツの無い、立派な御挨拶ではないか!!
程よいツッコミも入ったりしながら、観客(?)の雰囲気も益々良好なのだ。
5人ほど置くと、ワタクシの番になる。
ここで発表か?
でも、まだまだ半数以上の人は自己紹介が済んでいない。
そっと朱蘭を見やると、小刻みに首を横に振り
「おあずけ!」
のサイン。
仕方が無いので、
「よぉしっ!!次、○○!!」「OK!!次は△△ちゃん!!」
などと勝手に順番を仕切り、巧みに自分を後回しにする。
全員終ったら、いよいよ・・
焦りと緊張から気が動転し、まだ終っていない人が居るのにもかかわらず
「これで全員だよね?」
を連発!!我ながらマヌケなオタオタっぷり!!
怪しまれなかったのが幸いとしか言い様が無い。
そんなこんなのうちに、遂に自己紹介が一回り。本来ならトリを勤めるハズであった(?)K山商会の自己紹介に引き続き、満を持していた割りにはヨタヨタと見苦しく立ち上がる。
妻になる朱蘭の堂々としていた立ち振る舞いに比べたら、こちらはいささか頼りないのであった。
●発表!!!
「え~、途中まではTWで来ましたぁ・・」
ややウケ。
ツカミはまずまずOK!!
よぉしっ。
この流れで一気に行くぞぉ!!
「実はワタクシ、結婚する事になりましたぁ!!!」
(シーン……)
ま・全く反応が無いっ!!!
こ・こりはいったい!!!
予定していたセリフ、『相手は皆様も知っている人です』を省略し、一気に勝負に出なければ!!!
「結婚相手は、今日ここに来ています!!!」
(ちょこっとザワザワ)
ヤ・ヤバイ!!
このヒキかたは何だ!!
ギャグかと思われているのかしらん?
と・とにかく続けなければ!!
「妻!!スタンドアップ プリーズ!!!」
それでも場は盛り上らず、目の前に居た男が面白がって二人程立ちあがる始末。
何かつまらないギャグが始まったぞぉ?といった空気を一掃するが如く、スクッと起立する朱蘭。
(ザワザワザワ!!!!)
ここで始めて、大きなどよめきが起こる。
き・きたぁぁぁ!!!!
ここぞとばかりに、密かに用意していた婚姻届を取り出して、公衆の面前に晒す。
「マ・マジィ?」
「ホントかよぉ!!!」
「ウッソォ!!!」
やっとの事で驚きのるつぼと化した、雨の内山牧場・山小屋風巨大バンガローなのであった。
1へ
3へ
BAKA夫婦へ
「週末の放浪者」携帯版TOPへ
「週末の放浪者」PC版