控え室でいつもの様にPCに向かっていると、HISASHIを除く3人のメンバーが
何かを見て笑っていた。
「これいつのやつ?」と真ん中に座っているTAKUROが聞く。
「え〜デビューしてすぐかなぁ?」
右隣に座っているTERUが、写真を見ながら答える。
「いや、もうちょっと後でしょ。だって2人とも髪ながいよ。」
反対側に座っているJIROが言う。
「てっこ、このときどんくらい有った?」
「えーっとねえ、こんくらい?」
と、腰の辺りを指す。
「タクは?俺の半分くらいだったっけ?」
「そうそう。長かったな−。」
どうやら髪の長さの話をしているらしい
「ねえ、ヒサシくん見ないの?」
1人でパソコンをしているHISASHIにJIROが話しかけた。
「いーよ、みたくないし」
そっけなく答えるHISASHI。
「ヒサシは昔の写真とか嫌いだもんな。家にもほとんど置いてないし」
TAKUROが写真を見ながら言う。その口調はいつもと少し違う。
でもそれは誰も気づかない。
「え、そうなの?ねえ、との?」
「嫌いなんだよ、昔の自分。」
「カワイイのに−ねえ、タクロウ?」
「えっ…」
TAKUROの答えが一瞬詰ったのを、見逃さなかったのはJIRO
「どしたの?タクローくん」
「え、ああ、いやなんでもないよ。可愛かったね。」
TAKUROは少し動揺しているらしく、言葉が変である。
「今でもカワイイじゃん、ヒサシくん」
「お前らカワイイ、カワイイって連呼するな!」
「カワイイよ、とのは。だってホントのことだし」
TERUがいつもの笑顔で言うと、
「てっこのバーカ」と、HISASHIにあっさり言い返される。
「バカじゃないもん!何でジロには言わないの?」
「ジロは俺より可愛いから。」
「ちょっと!カワイイってなにさ〜。最近カッコよくなろうとしてるのに〜」
聞き捨てならん!とばかりに今度はJIROが怒り出す。
「それは無理」
またもや一言で返されてしまう。
「ヒサシくん、ひどい…」
「ちょっと!ジロのこといじめないでよ!」
「いじめてないけど。愛だよ、愛。」
「とのの愛は要らないの!俺の愛があればいーの!!」
「はいはい」
と、そこへ。
「タクローくーん!ちょっと来てくれる〜?」
と、スタッフが呼ぶ声がする。
「はーい!じゃ俺ちょっと行ってくる。あ、ヒサシもう帰ってもイイよ。」
そう言って部屋を出て行く。
「は?」
「あ、そうだよ!新婚なんだからさ〜」
「てっこに言われたくねえ」
「今日はもうたいした事しないんだよ。明日でも済む事だし。
帰ってイイよ、ホントに。」
「お前らは?」
「ああ、僕とテルはこれから仕事があるんだ。このあと仕事が無いのはタクローくんと
ヒサシくんだけ。」
「あっそう。じゃあ帰るわ。」

家に写真が無いのは、嫌いだからじゃない。
ジロウが写真を撮ってる事が多かったから。
それだけじゃない
元々まめな性格のお前が、全部保管してるから。
未だにお前の家には有るはず。
だって、お前は物を捨てられない人だから。

仕事部屋の隅に隠すように置かれている小さな箱
HISASHIはほこりだらけのそのふたを開ける。
これを開けるのは5年ぶりぐらいだろう
中に入っていたのは…写真。数少ない写真。
ジロウが撮った俺とタクロウの写真。
それに
タクロウが撮った俺の写真…。
捨てられなかった。
嫌いになれなかった。
今でも…

今の俺の愛は…彼女のものだ。俺はそう決めたから。
でも…これは捨てられない。

HISASHIは彼女に気づかれないよう、仕事をしている振りをして
写真を抱きしめ泣いた。
「タクロウ…愛してる。今でも…」
その呟きを聞いていたのは、誰もいない。


「ヒサシくん、おはよ〜」
「はよ」
「何か元気無いね。どうしたの?」
「別に。寝不足なだけだよ」
「ふーん」
と、そのときドアが開く音がした。
「おっはよ〜ございま〜す」
入ってきたのはTERU。HISASHIの事なんて忘れたかのように、
JIROはTERUの方へ走って行った。
「あ、テル!おはよ〜!!」
TERUに飛びつくJIRO
「おはよ、ジロ。」
JIROを抱きしめながら言う。朝だというのにとびっきりの笑顔なTERU
「おい!お前ら朝からイチャイチャすんな。」
「あ、との。おはよ。」
「ねえねえ、タクローくんは?」
「今日はねえ、別の仕事で遅れてくるって。だからそれまで遊んでようよ。」
「テルさん、あなたは仕事ですよ。ほら、スタッフも待ってますから。あ、2人は
好きなことしててイイですよ。」
タッキ−に首をつかまれ、引きずられて行くTERU
「あ〜タッキ−、そんな殺生な〜。ジロー」
「がんばってねえ」
JIROはニコニコと笑顔で見送っていた

バタン

ドアの方を向いたまま、JIROが話しかける。その表情は真剣だ。
「ねえ、ヒサシくん」
「なに?」
「タクローくんのこと、まだ好きなんでしょ?」
「えっ…」
「ほら図星だ。俺が知らないとでも思ってんの?俺はテルほど鈍くないんだよ」
「な、なに言って…」
「俺がGLAYに入って、俺とテルが付き合うようになったのも、2人の協力が
あったからだよね。俺だって最初は気づかなかった。2人が付き合ってたなんて。」
「……」
「俺、聞いたんだ。」
「なにを…?」
「まだテルとタクロウくんの髪が長かった頃、タクロウくんの家で飲んでた時。
テルと俺が潰れちゃって、寝てたとき。あの時テルは本当に寝てたけど、俺、起きてたんだ。」
「……」
「聞いちゃったんだ。2人の別れ話」
「……」
「ヒサシくんが帰った後、タクロウくんが…」
「聞きたくない!知らないよ!あれはもう過去なんだ!俺は結婚したんだ!」
「…それって逃げてるだけなんじゃないの?」
「俺が愛してるのは、彼女だけだ…。」
HISASHIはそれだけ言うと、走って部屋を出て行ってしまった。
「ヒサシくん!!」

知らない。俺はタクロウなんか…
「あーれ?どしたの、ヒサシ?」
TAKUROがやってきたのだ。
HISASHIはTAKUROをちらりと見ただけで、行ってしまった。
「ヒサシ?」

「おはよ〜ってジロウしかいないのか?」
「おはよ。テルは仕事中。ヒサシくんは…」
「ああ、ヒサシなら会ったけど。どうしたの?あいつ」
普通に、ただ不思議そうに聞くTAKUROにJIROは苛立ちを感じた。

「…タクロウくん、ちょっとヒサシくんの事で、話あるんだけど。」

NEXT→