小説作法の本 一覧

題名/著者名/出版社名/初版発行年月日の順に記載しています。

言語表現法講義/加藤典洋/岩波書店/1996.10.8

 著者が明治学院大学国際学部で行ってきた「言語表現法」という講義の紙上模擬授業。文学部ではなく国際学部というのがミソ。文章を書くとは言葉で表現するとはどういうことなのかをとことんつきつめて考える内容。
 評論やエッセイを書く人にはまさにうってつけだが、小説書きにも充分得るものはある。
 講義の口調そのままなので、とっつきやすいが内容は高度。文章の書き方を手っ取り早く教えてもらえるHOW TO本のつもりで読むと足元をすくわれる。ある程度の量を読んだり書いたりしてきた人でないと理解できないかも。そういう意味では上級者向き。 


何がなんでも作家になりたい!/鈴木輝一郎/河出書房新社/2002.9.20

 すごいタイトル(^^;)。「この一冊で作家稼業のすべてが分かる!」と帯にあるように、小説作法の本ではなく、職業としての小説家に光を当てている。
 小説家になりたいと漠然とした夢を追っている人に、その夢を実現させるための心構えと具体的なアドバイスが書かれている。


新人賞の獲り方おしえます/久美沙織/徳間文庫/99.11.15

 平成3年秋〜4年春にかけて東京で作家の久美沙織が開いた「本の学校『作文術』」という講座の内容を本にしたもの。もの書きとしての心構えや、いかに面白いものを書くかということを具体的にポイントを押さえて講義している。
 15分で原稿用紙1枚に書く課題とその添削例あり。実践的な本。


岩波高校生セミナー8 小説と科学−文理を超えて創造する−
/瀬名秀明/岩波書店/99.4.23

 講演の語り口で読みやすい。マスコミが本の売れ行きと社会現象を強引に結び付けたがることや、書評のうねりの中で同じ本の評価が変化していくことに対しての批判が興味深い。

 小説を書く上で参考になるのは、句読点の打ち方や印字の仕方について説明する「原稿の書き方」と、「想像力と創造力」の中の小説作法の本の紹介。
 どの本にも書いてあることは確実に押さえ、作者独自の意見の中で本質を衝いた部分を探し出すこと――それが肝心だと説いている。
<瀬名秀明が紹介している本>
『文章入門』上・下
 野間 宏
『現代小説作法』
大岡昇平
『小説家』
高橋克彦

『井上ひさしと141人の
仲間たちの作文教室』
井上ひさし
『小説家になる!』
中条省平
『ベストセラー小説の書き方』
ディーン・クーンツ

『耽美小説の書き方』
丸茂ジュン

「久美沙織の新人賞の獲り方おしえます」久美沙織→これについては上で紹介


女は小説の達人  女性だけの小説教室/山本容朗/主婦と生活社/90.10.10

 手垢のついた言葉を使うな、漢字の羅列を避ける、など、具体的な指導例が載っている。
 直木賞を最後まで競った林真理子と落合恵子の当落の差は、独創的な表現ができたか、手垢のついた表現が目についたかの差だった、という話は印象的。


あなたも書けるシナリオ術/三宅直子/筑摩書房/98.3.20

 「いなかっぺ大将」、「ケンちゃん」シリーズ、「新造人間キャシャーン」、「ちびまる子ちゃん」などを手がけたライターによる指導書。
Q&A方式でシナリオライターとしての心構えや技術的なアドバイスが書かれています。

小説とはジャンルが違うが、「物語を創作する」という点で参考になる。シナリオライターの世界がわかっておもしろい。


女性のためのシナリオライター教室/片山明子/文化出版局/昭和61.5.25

 家事を知らない撮影現場の男性スタッフが、じゃがいもを湯からゆでるシーンを撮ったりして手を焼かされた話など、放送作家のウラ話がおもしろい。


まだ見ぬ書き手へ 朝日文芸文庫/丸山健二/朝日新聞社/97.5.1

 これは紹介したもんかどうかな……と迷ったくらい、かなり異質な本。小説作法というより、既存の小説に対する批判と、真の小説家になるための覚悟を決めよ、と小説家志望の若者たちに対して迫る内容です。
 山にこもってすべての娯楽を遠ざけ、仙人のような暮らしの中に自分を追い込んで書けというようなことまで言っています。それじゃどうやって食べて行けばいいんだ? とツッコミたくなるほど非現実的な主張ですが、要はそのくらいの覚悟を持てと言いたいのでしょう。
 プロの純文学作家を目指すならともかく、楽しんで小説を書きたい人にはまったく畑違いなので、この本を読む時間があればもっと実用的な小説作法の本を読んだ方がいいでしょうね。……正直なところそう思います(^^;)


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