2003年10月16日更新

研究編

渡英から1年を経過したこともあり,刷新しました。

【研究環境編】
【研究内容:国際プロジェクト編】
【研究内容:独自プロジェクト編】
【成果発表編】

Back to the Home

【研究環境編】
1.総論 Top
 滞在中のSeale-Hayneキャンパスは正式名称をFaculty of Land, Food, and Leisure(直訳で土地・食料・観光学部)といい,農学というより環境,食料,観光というキーワードが前面に出ています。御他聞にもれず脱農学色が強いと言えるでしょう。僕はDepartment of Land Use and Rural Managementという部署(学科・専攻に相当)におり,さらにRural and Tourism Research Group(研究室・ゼミに相当)に属しています。
 ハード面での研究環境を総括すれば,「東大の方がずっとマシ」ですが,そういうことを求めてここに来ているわけではないので,特に不満はなし。
 (2003年8月1日追記)大学の組織再編に伴い,8月1日付けで学部が解散し,Departmentに所属していたスタッフのほとんどはFaculty of Social Science and Businessに移りました。ただし,この新しい学部はまだ実態がないので,とりあえずは何も変わりません。新しい学科の体制も未定。組織再編は2004年9月に完了の予定。
 (2003年10月16日追記)新しいDepartmentは,Department of Geographyになりました。うーん。
2.各論 Top
図書館:小さいです。他キャンパスの図書館などからの「取り寄せ所」といった方が近いかも。確かに予約をすれば通常2〜3日でキャンパスに届くのだが,大学全体を見ても所蔵が少ない。特に米国の文献は入っていないことが多く,わざわざ日本から取り寄せたりしている。もっとも,英国でももっとまともな大学だったらこんな不便はないでしょう。なお,近隣のExeter大学の方が充実していて,そちらの方が使い勝手がよい。
PC:キャンパス内のネットワークにつながっているPCはNT4。持参PCがネットワークにつなげないので,メールの読み書きは研究室内の共有PCを使うか,学生用のPC室を利用。不便といえば不便。
 (2003年10月16日追記)9月から,学生PC室のPCがすべてXPになりました。モニターも液晶。研究室にあるPCは古いままなので,ネットを見るときはPC室に出向いてます。
コピー:まともなコピー機は図書館に2台と学部に1台。一応コピーセンターのようなところがあり専属の担当者がいますが,そんな人いらないからまともなコピー機を増やせと言いたい(笑)。日本のコピー機に慣れているとそのスピードの遅さに驚くこと間違いなし。
プリントアウト:ネットワークにつながっている関係もあり,プリンターは学部に2台(笑)。プリントアウトを実行したら,プリンター室に出向き,プリペイドカードを差し込んで取り出すという仕組み。もちろん,そんな面倒なことをしていられない人はローカルでプリンタを持っています。
電話:専用の電話番号がもらえ,Pay-as-you-useベースで使えます(もっとも,まだ一度も請求が来ていない)。ただし,平日5時以降と土日はローカル地域とトールフリー以外はかけられません。国際電話は不可。
3.時間の流れ Top
 日本と違い,夜遅くまで作業する人は皆無。5時〜5時半には蜘蛛の子を散らしたようにみんな帰宅します。遅くまで作業をしていると「電気の消し忘れ」と勘違いした警備員が部屋に来ることしばしば。
 朝は9時にはほぼ全員揃っています。わがResearch Groupは10時半くらいに30分ほど朝のコーヒーブレーク。12時半から昼食+コーヒーで1時間休憩。3時頃にティブレークを30分ほど。実働6.5時間程でしょうか? 週30時間台が基本。キャンパス内にスタッフ用のCommon Roomがあって,コーヒー・ティのセット一式が揃っています(1杯20pence)。コーヒーショップもあって,そこではコーヒー1杯60pence。ただし,休み期間中は閉店することしばしば。
 自分の場合,郷に入れば郷に従えということで,朝9時までに出勤し夕方5〜6時に帰宅するのが通常。ただし,コーヒーブレークも他の人の10分の1ほどしかとらない(一緒にコーヒーショップに行っても,コーヒーだけもらって戻ってくる)し,帰宅後もちゃんと仕事してます。
4.自分の立場 Top
 Visiting Postdoctoral Research Fellowという肩書き。日本語でいうと「客員ポスドク研究員」。ただし,大学からは研究スペースの提供を受けるだけで,給料がもらえるわけではありません(逆に大学にVisiting Feeを払っている)。ただし名刺はタダでゲット(笑)。とりあえずSTAFFとしての扱いを受けていて,駐車もSTAFF専用スペースでOK。コーヒーを飲みたいときも上記STAFF用Common Roomに入室可能。学科の定例スタッフミーティングには出ないといけない。ということで,かなりの程度スタッフとして扱ってもらっています。
 指揮系統は,Research Groupのボスの指揮下に入っていますが,別に彼の指示通り働かなければならないというわけではなく,彼の研究に協力をしながら,アドバイスを仰ぎつつ独自に研究を進めるという感じでしょうか。その具体的内容は下記に。

【研究内容:国際プロジェクト編】
1.総論 Top
 国を問わず農業経営の大多数はFamily Businessであり,それに付随して経営継承問題が避けられない(後継者確保が難しい)という先進国農業共通の課題が存在します。こちらのボスが取り組んでいるのは,農業経営継承の実態を各国毎に調査し,データベースを蓄積していこうというプロジェクト(“FARMTRANSFERS”)。現在までに,イングランド・フランス・カナダ(オンタリオ/ケベック)・米国(アイオワ/バージニア)・日本の調査が終了していて,さらにドイツ・オーストラリア・スイス・ポーランドでも調査が進行中。
 個人的には,国をいたずらに増やしても研究上の付加価値はあまりないと思うのだが,参加する国が多いということは,それだけ同じ問題を共有できる国が多いということなので,
そういう点では意味があると考えている。
2.データベース構築 Top
 こちらに来てまず取り組んだのがデータベース構築。特に日本のデータはサンプルサイズが大きい上に,他の国とは相容れない項目が多く,統合作業は難航。結局完成したのは2003年1月。
 ちなみに渡英後初めてSPSSをまともに触ったのだが,なかなかよい代物であった。
3.データ分析 Top
 各国の研究代表者が自国の調査データを持ち寄ってデータベースを構築しているので,その扱いは難しい(誰もが比較分析をやらせてもらえるわけではない)。ラッキーなことに自分は国際比較分析をさせてもらえている。これは,こちらのボスの所に滞在しているので彼との共同研究の形をとれること,それから日本のデータを統合したご褒美という要素もある(笑)。


【研究内容:独自プロジェクト編】
1.総論 Top
 大きな話で言えば,「英国農業の現状と展望を自分なりに見極め,日本農業の変革に生かしたい」というのが大目標。英国農業に関する研究はさかんだが,農業革命をはじめとした歴史的な考察が多く,現状を扱った研究は少ない(もちろんないわけではないが)。
 ただし,これは言うは易し,行うは難し。「現状を把握する」ことくらいつかみどころのないものはない。「把握」したつもりが,単に自分の思い込みに過ぎないということはよくある。現場重視型の研究者が必ずぶつかる壁と言ってもいいかもしれない。
 それを踏まえた上で,自分が取り組んでいるのは「英国農業経営者論」とでも言おうか。
日本が「経営」をキーワードに農業の再生を図ろうとしている中で,農業発展の「母国」ともいえる英国の農業経営者の「今」と「これから」はどうなのか,を考えています。
2.各論
 2003年7月現在,以下のようなテーマを掲げて調査分析を行っています(頻繁に変更あり)。
・英国における農業経営者の育成確保
・英国の農業構造と経営者像−物的資本の賦存状況−
・農業経営継承の特質(国際比較プロジェクトと同一)
・後継者による経営者能力獲得プロセス
・農業教育と農業雇用
・新規参入者のキャリアパス
・農業経営者のステークホルダー:英国農業を「担う」人びと
(分析テーマのパクリお断り(笑))
(3)研究内容の「やさしい」解説(本当にやさしいかは不明)
英国の農業継承(2003/8/1) 英国の新規参入(2003/9/13) 英国農業の人材確保(2003/10/12)


【成果公表編】
5.日本農業経営学会分科会報告(2003年10月5日:筑波大学)
 報告課題:国際比較分析からみた農業経営の世代間継承の特質
4.日本農業経営学会個別報告(2003年10月5日:筑波大学)
 報告課題:英国における農業への新規参入の制度と課題−イングランド南西部Devon州を事例として−
3.Agricultural Economics Society Annual Conference(2003年4月11〜13日:Univ. of Plymouth, Seale-Hayne)
 Yanagimura,S/Uchiyama,T/Errington,A/Lobley,M: Characteristics of Farm Transfer in Japan: An International Comparison
 上述の国際プロジェクトFARMTRANSFERSの日本調査結果を他国の調査結果と大雑把に比較。主に日本の特性に注目。
2.東京大学大学院農業経営学ゼミ報告(2002年10月22日)
 農業経営学会報告をベースに,3ヶ月間の研究成果と今後の計画について報告[PDF]。
1.日本農業経営学会個別報告(2002年10月13日:岡山大学)
 報告課題:我が国における農業経営継承の特質−日英仏加米の国際比較研究から−[PDF]
 こちらのボスが春に英国農業経済学会で報告した英仏加米の比較分析に新たに日本を加えたシンプルな報告。先進各国の中で日本がどう位置づくか,まずはラフに見てみましょうというもの。
0."Carry On Farming?" Conference報告(2002年9月11日:Univ. of Plymouth, Seale-Hayne)
 Title: Recent Agricultural Policy in Japan -De-regulation of Farmland Ownership-
 報告予定だった日本の先生の参加が急遽キャンセルになったため,ピンチヒッターでプレゼン。ペーパーだけではどうにもならないので,パワポで日本農業の基礎データや日本の農村の写真,はたまた農地法に関する議論の整理など,突貫工事で仕上げて発表。初めての英語のプレゼンで緊張したものの,いい経験になりました。


Back to the Home