長門有希の人間解析1 〜もしくは彼女のNew World
Order
―――
報告。調査個体、識別名『涼宮ハルヒ』の性質を解析するには極めてランダムに近い彼女の行動指針を
唯一集約させる可能性を持つ存在(第1E9F次報告における『鍵』呼称参照)、識別名『キョン』を解析/協力を
得る事が必要
――― 通知。『鍵』と称される個体についてのみ識別名に瑕疵がある理由を報告せよ
―――
――― 通知。報告せよ
―――
報告。彼は親しい(親しいの概念については第6B07次報告を参照)個体には『キョン』と呼ばれる事が観測
されている。彼を解析するには標準の対ヒューマノイド対応手順を離れ専用の手順を作成することが必要。
その一環として呼称を特有のものへ改めている
――― 把握。報告を続行せよ
―――
報告。調査個体『涼宮ハルヒ』の能力は統合思念体に影響を与える可能性があり、適切なフェイルセイフ
無しでの能動的な調査は危険。以上より、当端末は『鍵』の入手をその手順と判断。一時的に主目的を
識別名『キョン』の解析に移行する事を申請する
―――了承。行動指針を報告せよ
―――報告。識別名『キョン』の動作は多くが識別名『涼宮ハルヒ』の動作が起点になっている。一次実験として
『涼宮ハルヒ』の動作をトレースし、対応を観察する
―――了承。別端末が収集した同調査区域における有機生命体の過反応動作に関する報告に共有可能な
情報が有る。参照せよ
―――受信。報告終了。通常モードに移行する
「・・・・・・」
「どうした長門。ぼーっとして」
部室に入ってきたキョンの声に長門は正面に固定されていた視線をそちらに向けた。
「・・・なんでもない」
「そっか」
「そう」
まだみくるも古泉も来ていないのでやることが無いのだろう。キョンは団長デスクに陣取りインターネットを流し見し始めた。その姿をしばらく眺めてから長門は手元の本に視線を落とす。さっきまで白紙だったその本のタイトルは
『男 を 悦 ば す 1 0 8 の 方 法』
統合思念体を疑うという機能は彼女には無いが。
「・・・これは、駄目だと思う」
長門は呟いて本を閉じた。
っていうか、誰だよこんなの報告にあげたの。